ビジネス

動物細胞から作る“リアルレザー”に期待? ケリング会長が考える “サステイナビリティー”とは

 フランソワ=アンリ・ピノー=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)が、ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインで行われたパネルディスカッションで登壇し、長期的計画でもある“サステイナブル・ファッション”の重要性と、プロジェクトについて語った。

 ケリングは3月、古着の繊維を再生する技術を開発しているイギリスのウォーンアゲイン社との提携を発表した。廃棄された衣料からポリエステルやコットンを抽出し、新たに糸や生地を作り出す研究の最終段階にあるというウォーンアゲインの新技術が完成すれば、テキスタイルの“循環調達モデル”が実現する。H&Mもこのパートナーシップに参加しており、3社ともにテキスタイル廃棄量の削減を目指す。まずケリング傘下の「プーマ(PUMA)」で導入し、成功すれば年末までに製品が誕生する予定だ。「世界のポリエステルとコットンの消費量は年間6500万トン。2020年には9000万トンにまで膨れ上がる見込みだ。その一定量が再利用されるようになれば環境保全に大きく貢献できる」とピノー会長。

 ケリングは現在、エネルギーや運輸などのさまざまなフィールドから集った専門家たちのサポートを得て、50人体制のチームでサステイナビリティーの推進に取り組んでいるという。同社はすでに、ドイツとスイスの大学の研究所との協業のもと、自社の生産過程の一部に汚染物質を排出しないタンニング(革のなめし加工)技術を採用している。通常のタンニングに比べてコストは上がるが「グッチ(GUCCI)」のレザーグッズの15%はこの手法でなめされているという。ピノー会長は、今後はラグジュアリー業界だけでなく、革製品を扱う全ての業態にこの新技術が浸透することを目指している。「このような革新的な技術を独占するなんて考えられない。導入したいと考えている全ての企業にノウハウを提供するつもりだ」と話す。他の取り組みとしては、環境に優しい素材の開発や、金やダイヤモンドの採掘現場が環境に配慮したものであると確認する体制作りなどがある。

 将来的な協業相手として、生きた動物の細胞を培養し、生体を傷つけることなくリアルレザーを作る技術を開発したアメリカ企業についても触れた。「臓器の再生を目指す生体医学の研究から生まれた技術だ。レザーの未来の姿かもしれない」と期待を示す。

 ケリングが社をあげてサステイナビリティーを推進するための原動力になった人物は、ステラ・マッカートニーだ。ステラは、ケリング傘下の「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」でのレザーやファーを使わないクリエイションや、ファッション業界において早くから環境への負荷軽減を訴えてきたことで知られる。革新的な技術や環境改善のための取り組みを実施している企業を見つけるヘッドハンターの役割を担っているのも彼女だという。ピノー会長は「彼女ほどの情熱をもってファッション業界のサステイナビリティー推進に力を注いでいる業界人、ブランドは他にないだろう」と話した。「サステイナビリティーに貢献すると一度決めたら、徹底的にやるべきだ」とピノー会長。ケリングが、サステイナブル・ファッションの実現に向けて業界全体が前進するための手本になりそうだ。

関連タグの最新記事

インタビューの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

色で着崩すクラシック 2026-27年秋冬ウィメンズリアルトレンド特集【WWDBEAUTY付録:2026年上半期ベストコスメ発表】

「WWDJAPAN」6月22日発売号は、「リアルトレンド」ウィメンズ編です。国内アパレルやセレクト各社の2026-27年秋冬の打ち出しを一挙に紹介。シーズンのトレンド傾向から「今っぽい」をかなえるスタイリング術までを読み解きます。今季のキーワードは、「クラシック」と「エレガンス」。多くのブランドが、端正なジャケットを主役にしたトラッドスタイルをベースに、独自の解釈を加えた提案に挑戦しています。また…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。