1. 家もオフィスも移動する!? “ミニマル”の先にある働き方の可能性

家もオフィスも移動する!? “ミニマル”の先にある働き方の可能性

宿泊施設 キャリア インタビュー

2018/2/17 (SAT) 11:00
ウエスギセイタYADOKARI共同代表:ウェブコンサルのデジパを経て2013年、以前同僚だったさわだいっせい共同代表とともにYADOKARIを創業。“豊かさの再編集”をテーマに住まいや暮らしに関わるさまざまな活動を行う

 京浜急行電鉄が今春、新しい暮らし方を提案するYADOKARIと組み、横浜市日ノ出町・黄金町エリアの沿線高架下に「高架下タイニーハウスホステル」をオープンする。“タイ二ーハウス”は自動車でけん引できる移動可能なミニマルな住居のことで、YADOKARIが提唱するこれからの暮らし方の1つだ。YADOKARI創業者のウエスギセイタ共同代表に、これからの暮らし方や空間活用について話を聞いた。

WWD:あらためて、会社を立ち上げるまでの経緯をお教えください。

ウエスギセイタYADOKARI共同代表(以下、ウエスギ):さわだ(いっせい共同代表)と会社を立ち上げたんですが、2人とも10年以上ウェブ業界にいました。起業のきっかけは東日本大震災だったんですが、津波で家が流される様子をテレビで見ていて、5000万円とか払って家や車を買うことに疑問を感じました。当時東京にいたんですが、余震が続く中で満員電車に乗って通勤するのって幸せじゃないなって思ったんです。東京で暮らしていて、ボトルネックになるのって住宅コストなんですよね。住宅を買うか賃貸でお金を払い続けるか。もし、住宅コストを300万円にできたら、自由に使えるお金が数千万円増える。そしたら、夫婦で育休を取ったり、地方で数年住んでみたり、クリエイティブな時間を増やせるなと。

WWD:暮らし方に着目したわけですね。

ウエスギ:はい。初めは法人化するつもりはなくて。まずは自分たちが気になる暮らし方を取材して、ウェブ記事にストックしていこうと思い「未来住まい方会議」というサイトを作りました。当時はウェブの仕事と並行しながら、365日ほぼ毎日交代で取材申請をしたり許諾調整をしたり(笑)。今では世界中の暮らし方について4000件くらいの記事が集まったんですが、最初の1000件くらいは2人で地道に集めたものです。でも、この経験が自分たちのアイデアをかき立てるきっかけにもなりました。そうして認知されるようになり、「この記事にあるスモールハウスは買えますか?」という依頼が来るようになりました。だったらやはり家を企画販売したいなと。

WWD:そうして、“タイニーハウス”を作ったんですね。

ウエスギ:震災後に建築家の坂茂さんが宮城県女川町で「無印良品」と共同でコンテナを使った仮設住宅を作りました。これが通常工期の3分の1で完成する、しかも低価格で住み心地の良いものだったらしいんです。これを見て、250万円で家が買えるモデルが作れると思いました。そこで、初めて“インスピレーション”という250万円の移動式ハウスを作りました。10棟限定だったんですが、おかげさまで、今まで4000件以上の問い合わせがありました。その後は案件ごとにほぼオーダーメイドの移動式ハウスを作っています。

WWD:以前サテライトオフィスを置いていた中銀カプセルタワービルも、ある意味“タイニーハウス”ですよね。

ウエスギ:あそこは3年くらい借りていたんですが、カプセルごとに取り外して部屋を付け替えられる仕組みになっていて、中銀カプセルタワービルはワンルームマンションの原型とも言われますが、(設計を担当した)黒川紀章さんはミニマリズムの先駆者ですよね。建て替えのために取り壊されるという話もありますが、そうなったら部屋を全部引き取って、“タイニーハウス”として活用したい。

WWD:上杉さん自身も暮らし方には工夫をしている?

ウエスギ:こんな提案をしていて高級地に土地を買ってたら嫌ですよね(笑)。いずれは僕も“タイニーハウス”に住もうと思っているんですが、今は家族3人で28平方メートルの小さい家に住んでいます。小さな家に家族で住むことで、電気代などどんな変化があるかを実験しています。すでに以前と比べて家賃は半分だし、電気代も60%カットできました。

WWD:たしかに、僕も家族でワンルームでも十分だと思います。

ウエスギ:ですよね。今の若い人は所有する気持ちが少なくて、時代の変化だなと思います。最近一番人気なのはシングルマザーのシェアハウス。子育てをみんなで協力してやろうという人たちも増えているようです。

WWD:でも、子どもがいる家族だと、“タイニーハウス”は狭いですよね?

ウエスギ:そうですね。だいたい3人だと本当は40平方メートルくらい欲しい。僕は無理に狭い暮らし方を進めているわけではありません。地方では空き地を活用すればいいし、都心で豊かに暮らすための選択肢だと考えています。

READ MORE 1 / 1 将来は“走る”オフィスや家が登場!?

WWD:現在の社員数は?

ウエスギ:アルバイトを含めて30人くらいです。

WWD:事業はどういったものが多いですか?

ウエスギ:メーンは(取材を行った小伝馬町のイベント&キッチンスペースの)「BETTARA STAND日本橋 」や5月にオープンする横浜の高架下ホステルといった施設運営です。ここでも年間300くらいのイベントをやっていますし、今後は都内でシェアハウスやコワーキングスペースを作ろうと思っています。あとはメディア事業で、エッジィなライフスタイル企画ができるということで広告をいただくことも増えました。

WWD:オフィスも「BETTARA STAND日本橋」を活用しているんですよね?

ウエスギ:これまた一等地に自社ビルとかあったら嫌ですね(笑)。リモートワーカーがほとんどなので出社義務はありません。もちろん、定期的に集まってミーティングを行ったりはします。今度はオフィス用のバスを買おうかと思っていて。海外だと結構おしゃれなスクールバスを改装して中にパソコンを置いて、という人がいるんですよ。

WWD:そしたらオフィス住所もなくなっちゃいますね(笑)。

ウエスギ:どこかに郵便受けだけは作らなければいけないですね(笑)。

WWD:でも、移動式オフィス、悪くないですね。

ウエスギ:この建物もそうですが、初期の“タイニーハウス”はまだタイヤ付きではなかったんですよね。これから自動運転が発達すれば、“自走する”家やオフィスも出てくるかもしれないなと。

WWD:走る家ですか!

ウエスギ:ライドシェアなんかとも相まって、移動式の店舗やオフィス、住宅が当たり前になるかもしれません。土地の所有という概念は崩れ去りますね。例えば自走する家なら、寝ている間に実家から自分の部屋だけがオフィスまで移動して、そのままオフィスにくっつくとか。そうすると、地方と都会の2拠点生活も可能になりますね。ライフスタイルが劇的に変わる。すでに海外だと“ヴァンライフ”という、自動車を自宅やオフィス代わりに旅を続ける若者が数多くいます。今やパソコンだけで仕事ができますしね。こういった考え方の日本での啓蒙も含めて、今度の高架下ホステルでは移動式のホステルを提案しました。

WWD:「高架下タイニーハウスホステル」に関連して、「中目黒駅高架下」や「下北沢ケージ」、ルミネの「サナギ 新宿」を皮切りに、最近では東急電鉄の「池上線五反田高架下」も話題ですが、“高架下”の可能性をどう考えますか。

ウエスギ:高架下って柱が動かせないために自由な建物のレイアウトができないとか、そもそもうるさいし暗いといったネガティブなイメージが多いですよね。でも、そこに動かせるホテルを置けば、簡単にレイアウトを変えられるし、ここで成功すればまた別の空いている高架下にホテルを動かすこともできますよね。

WWD:スノーピーク(SNOW PEAK)の“住箱”や300万円の“無印良品の小屋”など、“タイニーハウス”のような事業はアパレル関連企業でも注目を集めています。

ウエスギ:動かせるというのは最大のメリットですよね。都心は防火対策が厳しいので、例えば店舗として利用するにも、しっかりお店を作ってしまうと5年なんかではコストに対して十分な収益を上げられないと思います。

WWD:店舗という観点からも、アパレルとは相性がよさそうですね。

ウエスギ:移動販売車という扱いになれば、営業の幅は広がります。表参道にある「COMMUNE 2nd」も非常に近いイメージです。公園を一晩でビレッジにすることだってできます。特にアパレルなどの小売業はオンラインで買えちゃう時代なので、“出向いて行く店舗”は需要が増えるんじゃないかと思います。そうなると駅ビルのような不動産業自体が変わってくるかもしれないですね。

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