ファッション

年齢軸で切らない新ジャンル“新クオリティライフ誌” 芝崎信明/「アンド プレミアム」編集長

 マガジンハウスは、「クロワッサン プレミアム」から“プレミアム”の言葉を引き継ぎ、2013年11月に「アンド プレミアム」を新装刊した。“THE GUIDE TO A BETTER LIFE”をコンセプトに、内容もデザインもそしてターゲットも一新した同誌をリードするのは、芝崎信明・編集長だ。メンズ誌畑でのキャリアを生かした、既成概念にとらわれない女性のための新しい雑誌作りの視点を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):新装刊の経緯は?

芝崎信明・編集長(以下、芝崎):「クロワッサン プレミアム」の大幅なリニューアルをという社の意向を受け、新雑誌を立ち上げる覚悟で引き受けました。リニューアルの条件は“クロワッサン”の冠は外してもいいが“プレミアム”の名前は引き継ぐことだけ。女性誌の経験は入社後すぐの3年間だけで、20年以上「ブルータス」や「ポパイ」といった男性誌にどっぷり浸かってきたので、女性誌の経験が浅い分、既成概念にとらわれず変えることができたと思います。結果、限りなく創刊に近いリニューアルに(笑)。新しいマーケットを掘り起こすために一番良いのは新しいジャンルを作ることだと思います。“ライフスタイル”に“プレミアム”の意味を含めて、“新クオリティライフ誌”という新ジャンルを作りたい。

WWD:「クロワッサン プレミアム」と比べ読者の年齢層は大きく下がったのでは?

芝崎:結果的にはそうなっていますが、年齢でセグメントはしていません。年齢や結婚・未婚、子どもがいる・いない、有職・無職などによって女性のライフスタイルは変化するけれど、それでも“変わりたくない、自分には自分のスタイルがある”と思っている人は大勢いる。だから、「アンド プレミアム」は、“何歳だからこういうものを着ましょう”ではなく、“ こういうインテリアが好きな人はこういうファッションが好きで、こういう映画を観て、こんな音楽を聴いて、こんなレストランに行きますよね”という提案をしています。表紙に人気モデルや女優を起用せず、さらにモデルの顔もはっきりは見せずにキャラクターを出さないようにしているのも同じ理由から。憧れの対象を作るのではなく、読者が自分を投影できるような誌面作りを心掛けています。

WWD:だから、1号目のテーマは「週末を気持ちよくする、100のこと」。

芝崎:“これをしなさい”という上からの提案ではなく、“こういうのありますよね、この中でやりたいことがあればやってみては?”というスタンス。仮想ターゲットは実はファッション業界で働く女性たちです。感度が高く、自分のスタイルを持つ彼女たちに仕事を離れたプライベートの時間に読んでもらえる雑誌でありたい。

WWD:編集スタッフには男性が多いとか。

芝崎:3分の2が男性です。「ヒュージ」に創刊から10年関わったイーターの柴田隆寛さんにも立ち上げから参加してもらっています。既存の女性誌の作り方に染まっていない編集者たちと立ち上げないと、新しいジャンルは作れないと思ったからです。男同士の打ち合わせでの会話は妄想に近い(笑)。家の庭に飛んでくる鳥の名前がわかる女性ってすてきだな、とか、朝起きたらまず花瓶の水を変える人はファッションもすてきだろう、とか。そして、そんな女性はどんな生活をしているのか、おいしいパンやコーヒーも知っているだろうと、想像が広がってゆくわけです。機嫌がいい女性が増えたらいいな、という男性側の願望が誌面作りに出てしまってますね(笑)。でもそれが誌面の個性になるのも悪くないかなと思っています。

WWD:表紙のデザインは、上半分は月ごとに変わるマット加工を施した色地で、下半分はグロス加工の写真と斬新だが、デザインで大切にしていることは?

芝崎:雑誌という、モノ自体の魅力も大切にしています。なぜなら今の時代、雑誌は雑誌好きの人に買ってもらえないとダメだと思っているから。テレビや新聞といったマスメディアでさえ最近は“マス”のものでは
なく、テレビ好きや新聞好きの人によって支えられている。嗜好性が強い雑誌はなおさらです。だから写真やイラスト、書き文字の使い方から、紙の触り心地や重量感までモノとしての雑誌作りにこだわっています。

WWD:6号を発行して、手応えは?

芝崎:スタートはうまく切れました。販売部数は、「クロワッサン プレミアム」の180 ~200%で推移し、広告売り上げは3月発売号で前年同月比220%、4月発売号で同じく190%を達成しました。個人的に好きだと言ってくれるクライアントが増えるにつれて広告売り上げが伸びている実感です。特にファッション関連のクライアントから好評だった特集が、3月発売号の「つくりのいいもの」。トレンドとかスタンダードという軸ではなく、“つくりのよさ”という別の価値観でファッション特集を組みました。イメージではなく、本当に着たいもの、使いたいものを集めています。紹介したものが売れると聞いて僕らも嬉しい。雰囲気重視の雑誌に見えるかもしれないけど実はリアルなんです。

WWD:今後の特集の予定は?

芝崎:6月発売号が「スタイルを持つ」、7月発売号が「サマーライフ」、8月発売号が「ベターライフショップ」、9月発売号が「つくりのいいもの秋冬」を予定しています。

WWD:4月発売号の表紙と連動した表4の「オランジーナ」のタイアップの作りがユニークだ。

芝崎:タイアップも含めて、一冊の中のリズムやストーリー性を大切にしています。4月発売号は特集が「素敵な、フランスかぶれ。」だから、「オランジーナ」はぴったり。また、表紙の色使いはデザインでありながら、実はコーポレートカラーやブランドカラーと連動した提案ができるので、ビジネス面から見ても有効なんです。

WWD:今後チャレンジしたいことは?

芝崎:まずは、紙媒体ありき。当然、ウェブやイベントへ広げるべきだと思いますが、「アンド プレミアム」という雑誌のブランドを確立してからじゃないとうまくいかないと思う。一番やってみたいのは、ショップ・イン・ショップ。「アンド プレミアム」ショップを作って“いいもの”だけを販売し、誌面と連動させたいです。

我が編集部の自慢は?
挽きたて豆のドリップコーヒーでおもてなし

編集部で淹れるコーヒーにこだわっている。淹れる寸前に豆を挽き、ドリップで丁寧に淹れる。もちろん編集部員、編集アシスタント全員が基本的な淹れ方はマスター。コーヒー豆も、話題のロースターのものをできるだけ買いにいくようにして、いろいろ試している。北欧や北米の話題の豆があることも。

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