ファッション

デザイナー大貫達正 全米最大級のフリーマーケットで“アメリカ”を買う

 「WWDジャパン」8月5&12日合併号は、デニム特集だ。今年はジーンズの生まれ故郷であり、作業着からファッションへ生まれ変わった地でもあるアメリカ西海岸を取材した。渡米スケジュール作成の過程で、強く意識したのは7月14日。理由は、全米最大級のビンテージフリーマーケット「ローズボウル(ROSE BOWL)」が開催されるからだ。

 ローズボウルは、毎月第2日曜日にロサンゼルス郊外の街パサデナで開催されるビンテージのフリーマーケットだ。会場はアメフト用のスタジアム、ローズボウルの外周や駐車場で、2500以上のブースが出店し、一点モノとの出合いを求めて毎回約2万人が来場する。今回はビンテージ通として知られる、日本のジーンズブランド「ウエストオーバーオールズ」の大貫達正デザイナーがプライベートで買い物をすると聞き、水先案内人をお願いした。

 ビンテージバイヤーは夜明け前に出店者が開店準備中のところを狙うが、取材班は“控えめ”に朝6時半着とした。入場料は時間によって変わって、この時間だと最高値の25ドル(約2700円)。ローズボウルはざっと見るのでも2、3時間、しっかり吟味しようと思ったら半日は必要だ。古着以外に家具や食器、楽器も売られていて、いずれも日本ではちょっとお目にかかれない品ばかりなので、文字通り見るだけでも価値がある。

 大貫デザイナーのいで立ちは1950年代製の「リーバイス(LEVI’S)」のジャケット“ファースト”と30年代製のパンツ“501XX”という気合十分なもの。ならば、ぜひビンテージジーンズを買ってほしい!というデニム特集担当である僕の思いに反して掘り出し物はなく……、とはいえ瞬く間にハワイアンシャツを3枚購入。「コットンアロハを集めているんだ」と話し、太陽光直撃の30度超えの中、スタッズワークがアクセントのハラコベストも試着のうえ購入。目の端で捉えたネイティブアメリカンな小物もまとめ買いしていた。

 ローズボウル会場には陽を遮るものがほとんどないので、特に夏場は帽子が必携。大貫デザイナーは、英国王室御用達の帽子ブランド「ジェームスロック(JAMES LOCK)」のストローハットを準備していた。それでも暑いので、出店のビールで小休憩。ホットドッグで小腹も満たしたら、後半戦のスタートだ。

 向かうのは、入場時から「ここだけは見たい」と言っていたインディアンジュエリー専門店の「ウォーン オーバー タイム(WORN-OVER-TIME)」だ。真っ白なひげを三つ編みにしたオーナーのマーク・フォグウェル(Mark Fogwell)は、なかなかのビジネスパーソン。炎天下の値段交渉は30分ほど続き、バングル、リング、タイバーや珍しいしおりなどを3500ドル(約38万1500円)で買った。さぞかし満足と思いきや、「あろうことかクレジットカードを忘れてしまって、もっと買いたかったんだけど……」とぽつり。よほど悔しかったのか、数分後に「帰国したらすぐに返すので、ちょっと貸して」と取材班に借金をして、さらに550ドル(約5万9900円)分を追加購入。こんなに買ってどうするんだろう?と率直な疑問をぶつけると、「分からない(笑)。でも全部自分で身に着けるつもりだ」と答えた。

 結局この日、大貫デザイナーは4830ドル(約52万6400円)を散財。そしてスタジアムを後にする瞬間まで、「クレジットカードさえあれば……」と悔やんでいたのだった。

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