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コワモテの米国人“ビンテージ伝道師”が見立てるデニムの今

 ジップ・スティーブンソン(Zip Stevenson)はスタッズベルトブランド「HTC」で一世を風靡したが、「ビジネスのメインはデニム」であり、古着を買い付けリペアして販売したり、共同デザイナーの多賀谷強守とデニムをキーアイテムとする「スティーブンソンオーバーオール(STEVENSON OVERALL)」を手掛けている。武骨で男くさいビンテージの世界に身を置くが、3年ほど前に異変を感じたという。

WWD:あなたが感じた異変とは?

ジップ・スティーブンソン(以下、スティーブンソン):アスレジャーファッションが隆盛となり、デニムの動きがぴたりと止まった。“プレミアムジーンズ”ブームをけん引した「トゥルー レリジョン(TRUE RELIGION)」が破産法適用を申請し、アスレチックウエアブランド「ルルレモン(LULULEMON)」が急成長したタイミングと重なる。その後もストリートファッションやスニーカーの影で、デニムは鳴りを潜めている。

WWD:確かにデニムはダウントレンドだが、その中でも注目しているブランドはある?

スティーブンソン:ロサンゼルスのデニムリメークブランド「リダン(RE/DONE)」は、業界の新たなリーダーだと思う。古着を再構築し、ライトカラーなデニムをスターダムに押し上げた。ウィメンズジーンズが完売しても、38インチのメンズを28インチのウィメンズにリメークした。その痕跡をデザインとして見せ、売り出した。このアイデアには驚いた。

WWD:では注目する企業は?

スティーブンソン:アメリカンイーグル(AMERICAN EAGLE)は世界一のデニムカンパニーだ。アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)が落ち込み、アメリカンイーグルがその穴を埋めた。中国製で価格は50~60ドル(約5400~6480円)。ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)の元スタッフが同社に入り、価格に比べてクオリティーが高いアイテムを作っている。

WWD:“ビンテージの伝道師”とも言えるあなたの口からアメリカンイーグルの名前が出たのは意外だ。

スティーブンソン:僕はビンテージの世界に長く生きているが、新たな挑戦は常に大事だ。例えば、この「レッドクラウド(RED CLOUD)」という中国ブランドは、メード・イン・チャイナだがアメリカのビンテージミシンを使ったステッチワークや色落ちがとてもいい。中国製ジーンズは30ドル(約3240円)で売られているものもあるが、これは195ドル(約2万1060円)で、その価値がある。生地にはヘンプを50%混紡している。ヘンプは成長が速く、栽培に必要な水はコットンの4分の1ほど。生命力が強いため生産も安定的で、つまりはサステイナブルだ。これからのデニム作りはサステイナビリティーなくしては考えられない。

WWD:あなたへのインタビューで“サステイナブル”というキーワードが出るとは思わなかった。

スティーブンソン:子どもの影響が大きい(笑)。上の娘は20歳で、大学で環境問題を勉強している。地球環境の変化は連日ニュースや新聞が伝えるところだし、残念ながらデニムは地球に大きなストレスを与えている。子や孫の世代に健康な地球を残すため、われわれは賢い選択をしなくてはならない。

WWD:最後にデニムの魅力について教えてほしい。

スティーブンソン:ずばりエイジングだ。例えばスラックスは十数年はいても変わらない。穴が開くくらいだろう。それにスーツは古く見せたくないもの。でもデニムは違う。自分のライフスタイルに合わせて育っていく。人生いろいろ、デニムもいろいろ。「リーバイス(LEVI’S)」の“501”も多くの進化を遂げた。これからはサステイナブルな素材をサステイナブルな製法でサステイナブルな客のニーズに合わせて作っていくだろう。