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米国取材 その男“デニムハンター”につき

 “デニムハンター”という言葉を聞いたことがあるだろうか?鉱山跡地などに分け入り、時代とともに忘れ去られたビンテージデニムを探すのが彼らの仕事だ。カリフォルニア州南部のオレンジ郡に暮らすマイケル・アレン・ハリス(Michael Allen Harris)もその一人。謎多き生態に迫る。

WWD:あなたの仕事について聞きたい。

マイケル・アレン・ハリス(以下、ハリス):塗装業、養蜂業を営みながら“デニムハンター”を始めた。ほかにもデニムコレクター、時にデニムディーラーもしており、ビンテージデニムに関する「オールド・ジーンズ」「ワークウエア秘史」という2冊の本を上梓した。だから著述家でもある。2冊ともワールドフォトプレスから日本語訳が出版されている。

WWD:“デニムハンター”になったきっかけは?

ハリス:子どものころから宝探しが好きだった。近所のゴルフ場でロストボールを拾ってはゴルファーに売っていた(笑)。鉱山跡地で、欠損のないきれいな状態のジーンズを見つけたのは1996年のことだ。

WWD:主なハント場所は鉱山跡地である?

ハリス:そうだ。もともと鉱山には労働者が住む簡易宿舎があったが、暑さから彼らは鉱山内で暮らし始めた。暇つぶしにしていたトランプや生活ゴミに交じってデニムがある。

WWD:ハントの主な対象は?

ハリス:1870~90年のジーンズだ。まずは資料を当たり、鉱山をセレクトする。

WWD:サンフランシスコにあるリーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)本社で、アーカイブルームを見せてもらったことがある。そこには2万点ものビンテージが収蔵されていたが、彼らから「買いたい」というリクエストはある?

ハリス:かつてはあった。それにコラボレーションしたこともある。

WWD:それはどんな形のコラボレーション?

ハリス:2010年から11年にかけて、僕の持つアーカイブを資料として渡した。彼らはそれを参考に、“リーバイス ビンテージ クロージング(LEVI'S VINTAGE CLOTHING)”でデニムシャツとバンダナを復刻した。ただ僕が最も実現したかったのは、1873年製のジーンズの復刻だ。

WWD:それは実現しなかった?

ハリス:リーバイ・ストラウスが所蔵する最古の「リーバイス」のジーンズは1879年製だが、僕は73年製を持っていた。今はサンフランシスコの友人に売ってしまったが、右裾がちぎれていたものの、ほぼ完全だった。縫製などから「リーバイス」と一目で分かるものだが、リーバイ・ストラウスのヒストリアンはそれを認めなかった。社名がプリントされているなどの確証がなかったからだ。ヒストリアンは現場を見ていない。でも僕は日々、鉱山で岩に埋もれたデニムと向き合っている。以前ヒストリアンだったリン・ダウニー(Lynn Downey)は、ある本の中で「リーバイス」について記述していたが、そこにはたくさんの誤りがあった。それを指摘し、僕が参考にしているカリフォルニア大学ロサンゼルス校にある資料の存在も教えた。リンは再考し、自著「Levi Strauss & Co.」の中でそれを修正していた。でもその本の中にも、また別の間違いがあった……。

WWD:あなた自身が、正しいと信じるリーバイ・ストラウスの歴史について書いては?

ハリス:まさに執筆中だ。すでに足掛け7年で、2020~21年頃に出版できればと思っている。

WWD:最後にデニム、そして“デニムハンター”の魅力について聞きたい。

ハリス:デニムには人生が刻まれる。そんな誰かの人生が刻まれたデニムが、誰にも気づかれず鉱山跡地で眠っている。それに照準を当てて、見つけたときの快感は何物にも代えられない。今発掘中の鉱山で1~2週間以内に大きな収穫がある予感がある。ぜひまた見に来てほしい。