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ジョージア発の新進ブランド3選 「マルジェラ」出身者や容姿端麗なスター候補など

 「メルセデス・ファッション・ウイーク・トビリシ(以下、MBFWT)」が5月2~6日に東欧のジョージアで開催され、50ブランドがショーやプレゼンテーションで2019-20年秋冬コレクションを発表した。注目度が年々高まっている「MBFWT」だが、国自体に資源と資本が少ないこともあり、グローバルで戦えるブランドは極めてわずかだ。それぞれの個性を磨き続けてブランドのアイデンティティーを築き上げることは、デザイナーたちにとって今後の大きな課題だと感じた。

 そんな中でも、世界のバイヤーから支持を集めたポテンシャルの高いブランドが3つあった。ジョージアは「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「ヴェトモン(VETEMENTS)」を率いるデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の故郷というだけあり、“ジョージア・ファッション=デムナ直結のストリートスタイル”といったイメージを抱く人も多いだろう。そんな固定観念を払しょくし、奥深い文化と伝統の新たな表現に挑む新進ブランドを紹介する。

「マルジェラ」「ロエベ」出身の実力者が作るモカシン
LE MOCASSIN ZIPPE

 「ル モカシン ジップ(LE MOCASSIN ZIPPE)」を立ち上げたケテヴァネ・マイッサイア(Ketevane Maissaia)は、フランスのメゾンブランドで豊富な経験を持つジョージア出身のデザイナーだ。「チャラヤン(CHALAYAN)」「アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」でインターンを経験し、「エルメス(HERMES)」で革製品のデザインチームに加入。その後「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」のバッグデザイナーとして働き、現在は「ロエベ(LOEWE)」のバッグデザインチームの一員としてパリを拠点に活動する。「ロエベ」のシグネチャーであるハンモックバッグは、彼女がデザインした。

 「ル モカシン ジップ」というブランド名の通り、ジップの装飾が特徴のモカシンをメンズとウィメンズでそろえる。フランス製の一枚革を使ってジョージアでハンドメイドしており、すでにファーフェッチ(FARFETCH)やモーダ オペランディ(MODA OPERANDI)など高級ECサイトを中心に販路を開拓している。コンセプトストア「バイヤーズ(BUYERS)」で行われたプレゼンテーションでは、新作コレクションを履いた歌手がジョージア伝統の衣裳をまとって伝統の歌を披露し、横ではテクノミュージックを鳴らすDJとダンサーが並んでパフォーマンスするという、ジョージアの新旧音楽文化の融合を表現した。仏高級百貨店のギャラリー ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)やプランタン(PRINTEMPS)のバイヤーらも目を光らせており、「プレゼンテーションはパリで行っても注目されるぐらい高いレベルだった。小売価格700ユーロ(約8万6100円)は少々高いが、次シーズンに向けて買い付けを検討したい」という声もあった。

ハンドニットを自在に操る22歳のスター候補
ANANO D.BARKLADZE

 トビリシ出身で、トビリシ美術大学(Tbilisi State Academy of Arts)を卒業したばかりの22歳のアナノ・D・バークラッツェ(Anano D.Barkladze)は、独自に開発した素材とニッティングの手法を用いたニットウエアをデザインしている。今回の「MBFWT」ではショーを開催しなかったが、ショールームの一番奥のスペースで19-20年秋冬コレクションを展示した。周囲のブランドはラックに服を掛ける一般的な展示方法であるのに対し、バークラッツェはコレクションの着想源となった自然の風景をドライフラワーで再現したり、マネキンを持ち込んで洋服を着せたりするなど、イメージを明確に表現する試みが目を引いた。「セカンドコレクションとなった今季のテーマは“The Queen of the Night”。一夜だけ咲き誇り枯れていく花のような、はかなく美しく神秘的な女性像を表現した」と、コレクションについてバークラッツェは説明した。

 素材はウールやデニム、シルクを織って作り、ハンドニットで編み込んでいく独自の手法を用いている。コレクションはニットセーターやアウター、ドレスのほかに、シルクのテーラードやパンツなどで構成され、温かな手仕事と力強さが感じられる内容だった。ルックブックの完成度もかなり高い。現在の取引先はロシアのコンセプトストア1店舗のみだが、価格は400ユーロ(約4万9200円)からとハンドニットとしては比較的安価で、今後の拡販に期待したい。バークラッツェはモデルのように目鼻立ちのはっきりとした端正な顔立ちで、笑顔を絶やさないチャーミングな女性だ。今後のビジョンについて「多様な素材を使い、ユニークな手触りの布を用いて歴史や美学、アート性が背景に見える洋服を作っていきたい」と語った。

伝統編みをフェミニンにアレンジする美人デュオ
0711

 中東とロシアにすでに多くのファンを持つバッグブランドが「セブン イレブン(0711)」だ。ECサイトと実店舗を持つ「モア イズ ラブ(MORE IS LOVE)」の創業者ニノ・エリアヴァ(Nino Eliava)と、その友人で同店バイヤーであるアナ・モキア(Ana Mokia)が12年に立ち上げた。ともにロンドンの大学でビジネスマネジメントを学んだ後、ファッション企業での経験を経て帰国した。エリアヴァは03年にECサイト「モア イズ ラブ」をスタートすると瞬く間に人気となり、昨年トビリシに実店舗を開いた。

 「セブン イレブン」はジョージアの伝統的な手織りの技術を取り入れたカゴバッグから始まり、現在は本革やシルクを使用したバッグと小物をそろえる。構築的なシェイプと、ビーズやメタルをディテールに用いた遊び心のあるフェミニンなバッグで、価格は700ユーロ(約8万6100円)から。現在はファーフェッチやモーダ オペランディなどECサイトに加え、ロシアの百貨店ツム(TSUM)やアイゼル(AIZEL)などと取引している。「MBFWT」会期中はメイン会場の入り口付近に世界観を表現するスペースを設け、多くの人が足を止めていた。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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