ファッション

東コレ中にホームレスを起用したゲリラショー 謎のミームレーベル「e6849b」に直撃

 「アマゾン ファッション ウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO以下、AFWT)」の期間中に、メーン会場である渋谷ヒカリエ近辺で、ミーム(インターネットで模倣されて広がるコンセプトのこと)レーベル「e6849b」を名乗る謎の集団がホームレスをモデルに起用したゲリラショーを行った。ショー自体は事前予告がなく、渋谷ヒカリエの建物の周りや表参道を練り歩いたものの、AFWTのショー会場である建物の中のヒカリエホールにまでは上がって来なかったため、実際にはファッション関係者にはそれほどのインパクトを与えられなかった。

 モデルのホームレスはマスクにレーベル名の「e6849b」が記され、首からは64桁の数値が記された腰の下までとどく細長いタグが吊り下げられた。「e6849b」はネット上に公式の通販サイトを持ち、価格が4万円のホワイト-アーク(White – Ark)と9万円のブラック-アーク(Black Ark)という2つのアイテムを販売している。ホワイト-アークは64桁のタグ付きの、ロゴなどが塗りぶされたトレーナーやカットソー(型や色は選べずランダムに決められる)が配送されるもの。ブラック-アークは手持ちアイテムにリブランディングを施す往復配送サービスという触れ込みで、手持ちのアイテムを送ると、ロゴが塗りつぶされ、64桁のコードが記された長いタグが付けられて戻ってくるらしい。

 「e6849b」とは何者なのか。一体何が狙いなのか。この謎だらけの“ミームレーベル”にメールでインタビューを行った。

WWDジャパン(以下、WWD)アマゾンファッションウィークの会場付近でゲリラショーを行った理由は? 単なる話題作り? それとも何らかの意図があるのか?

e6849b:ゲリラショーは危うさをはらみますが、規制の少ない分よりリアルな表現を打ち出すことができ、またよりリアルな反応を得ることができます。

意図については、私たちは答えを明確にすることを望みません。想像の余白を残し、無限の解釈というかたちで鑑賞者に自己を投影させる行為も、このショーの一部です。しかしいくつかのヒントを提示すると、このショーが焦点を当てるものに、都市性に対する野生性、表面ではなく内面が挙げられます。

WWD:ホームレスをモデルに起用した理由は?フィーは?

e6849b:一般的なファッションブランドが一般的なモデルを起用する理由と変わりません。私たちは(友人である)彼らを美しくふさわしい存在だと思ったからオファーをしました。そしてできる限りそのままの姿で出てもらうことを望みました。リアルだからです。

スタイリストやメイクを雇わず、衣服は普段着のまま。歩き方の指示も出していません。そこに「ロゴを消すこと」「オリジナルのハッシュ値でタグを上書きすること」のみを加えました。加えたというより、自らのアルゴリズムで生きる象徴を浮かび上がらせました。

フィーについては言うまでもありません。それぞれに対して一般的なモデルの相場と同等のフィーを支払いました。

WWD:デザイナーやディレクターのプロフィールを隠しているが、それはなぜか?どのような意図があるのか?

e6849b:私たちはブランドではなくミームレーベルです。ミームとは身体の外側、メディアを通じて伝承されるもう一つの遺伝子です。そこに名前という情報は不必要であると考えています。

WWD:black Arkを購入すると配送されてくる64桁のタグにはどんな意味があるのか。何かに使えるのか?

e6849b:ハッシュ値は不可逆性の性質を持ちます。それは市民を既存のブランドというアルゴリズムから、またデジタルや資本主義のアルゴリズムから解放し、「あなたがブランドであること」、「あなたのアルゴリズムを生きること」を象徴します。機能については非公開です。

WWD:“White - Ark、Black - Arkは現在、それぞれどのくらい売れているのか?また、この価格はどのような意図があって設定しているのか?
 
e6849b :White については在庫が残りわずかです。価格の意図については非公開です。

WWD:サイトに掲載されている販売業者のLove Inc. とは何者か?どんな資本構成か?出資者は?

e6849b:日本での製造販売するにあたり設立した実在する法人です。スタジオはベルリンにあります。非上場の企業のため、資本構成などの情報については非公開です。

WWD:今後の活動で決まっていることは?

e6849b:コミュニケーションの性質に影響を与える製品やサービスを通じて、現在のリアリティを探求していきます。具体的な活動については非公開です。

最後に、WWDジャパン が私たちの活動に興味を示してくれたことに心から感謝します。

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