ファッション

途上国支援の「マザーハウス」がアパレルライン立ち上げ ガンジーのインド綿でシャツ製作

 途上国でのモノ作りを通し、現地の持続可能な発展を支援するブランド「マザーハウス(MOTHERHOUSE)」が、今秋アパレルラインを本格的に立ち上げた。バングラデシュ生産のバッグ、スリランカとインドネシアで作るジュエリーに続く3つめの商品カテゴリーで、インドとネパールで生産。インド・コルカタには自社工場も持つ。ボランティアでなく、ビジネスとして途上国支援を行うために「売れることにはこだわっている」と山口絵理子・社長。その言葉通り、ブランド全体としての店舗数は現在37にまで増え、売上高は非公表ではあるが、もはや小規模メーカーとは決して呼べない規模の金額だ。「2~3年後には、日本からグローバルに発信するブランドの代表格といえるような存在になりたい」と、志は高い。

 アパレルラインの立ち上げは、2017年10月に山口社長がコルカタを訪問したことがきっかけ。「インド独立の父であるガンジーが、“ファブリック・オブ・フリーダム(自由を勝ち取った布)”と呼んだ手紡ぎの綿のシャツに出合い、惚れちゃった」のだという。工場を立ち上げて、まずシャツから生産を開始。従業員20人、月産600着にまで整ったタイミングでシャツ以外にもアイテムを広げ、アパレルの本格展開を決めた。

 主力のシャツ(1万6000円)や、ジャケット(3万円)とパンツ(2万5000円)のセットアップなどの他、ネパール生産のカシミヤニットやストールがそろう。顧客の中心は30~40代の働く女性のため、“ナチュラル系”ブランドに多いゆったりとしたシルエットではなく、オフィスにも対応できるデザインを追求した。

 アパレルラインの立ち上げに合わせて、東武百貨店池袋本店3階にアパレルとジュエリーで構成するショップ(約66平方メートル)を11月16日に出店した。同店に以前からあったバッグラインの店のそばで、向かいは「トリコ コム デ ギャルソン(TRICOT COMME DES GARCON)」だ。今後、東京・秋葉原の本店横にアパレルラインのショップも開く予定。百貨店などには、立地のニーズに合わせて、バッグ、ジュエリー、アパレルを組み合わせた形で出店していく。

 06年に会社を立ち上げて13年目。現在、生産に関わるスタッフは全世界で約650人、うち国内の従業員は約150人だ。途上国を支援するとともに、日本国内のビジネスも持続可能であるために、社員の給与や福利厚生面で高水準を目指している。「店長の年収は500万円を超えている。まだ未達だが、年間の有給休暇取得は連続で14日以上を目指している。商品をデザインするだけでなく、こんな風に組織をデザインしていくことが私の仕事」と山口社長。彼女のそうしたビジネス哲学やリーダーシップにひかれ、コンサルティング会社や銀行などの大企業から中途で入社してくる人材は多い。それゆえ、近年ファッション業界を悩ませる人材採用難も、「感じたことはない」という。

 今秋は9月19~25日に、松屋銀座本店1階で、バッグ、ジュエリー、アパレルを集めた催事を行った。バングラデシュとスリランカから職人を呼んで商品製作の実演などを行った結果、「売り上げは順調で、バイヤーからも好反応だった」と自信を見せる。店舗数37のうち、海外は香港が2、台湾が6。来年にはシンガポールへの出店も決まっている。「1つのブランドだけでこの規模まできた。今後は世界への発信をより強化していきたい」という。

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