ファッション

ライブコマースのCandeeに聞く、ファンを巻き込む“コミュニティー型”ブランドの作り方

 ライブコマース「ライブショップ!(Live Shop!)」を運営する動画制作大手のCandeeが7月末、23万フォロワーを超えるインスタグラマーのrinaをクリエイティブ・ディレクターに起用したプライベートブランド(PB)「チェリッシュミー(CHERISH ME)」の立ち上げを発表した。同ブランドはライブ配信を通じてファンの意見を集約する、いわゆる“ファンとともに作り上げるブランド”だ。rinaがブランドを正式発表するライブ配信直前のスタジオに潜入し、rina本人とブランドを手がけた今村陸人Candeeプロデューサー、事業責任者の鍛治良紀Candee執行役員に話を聞いた。

WWD:まず、インスタグラマーのrinaさんを起用したプライベートブランド(PB)を作った経緯を教えてください。

鍛治良紀・執行役員(以下、鍛治):もともと当社でいくつかブランドやっている流れもあるのですが、昨年11月から「ライブショップ!」で番組を持つrinaちゃんと、オリジナルアイテムを作ってライブコマースで売ってみようという自然な流れからここまで来た感じですね。

今村陸人Candeeプロデューサー(以下、今村):今年2月にイヤリングを作ったのが最初でした。その後、本格的にブランドにしようと話し始めたのは確か今年の5月くらいです。

WWD:自分のブランドをやるなら、どういうことをやりたいと思ったのですか。

rina:ここ数年の一番の夢が、ブランドを立ち上げることだったんですが、やっぱりブランド自体もファンと関われるといいなと思ったので、“みんなと一緒に作る”というコンセプトは初めから大事にしていました。これまでのオリジナルも全部そうですが、みんなの意見も取り入れながら商品を作りたいなって。

WWD:ブランド名の「チェリッシュミー」はどうやって決めたのですか?

rina:私自身、昔から“女の子を楽しむ”ということをずっと考えていて、“自分自身を大切にしてほしい”という意味で名付けました。

鍛治:大切に思っている相手に向かって、英語ではスラングで“cherish you”って言うらしいんです。この部屋で打ち合わせしながら、調べて知ったんですけど(笑)。

WWD:具体的にはどんなアイテムを作っていく予定ですか?

rina:基本的にはお洋服だけやるとか、アクセサリーだけ、みたいな決め事はなくていいと思っていて。誰だって好きなものはたくさんあるから、その日の自分にあわせて、ちょっとだけプラスできるようなアイテムを作りたいです。

鍛治:だから、僕らも“ライフスタイルブランド”という言い方をしています。洋服だけじゃなくて雑貨もあるし、彼女の夢を実現するためにあらゆるカテゴリーで僕らがお手伝いをするべきだと。通常のアパレルと違うのは、例えばソファーを作りたいならそれも全然アリなんです。そんな時にはインテリア企業とコラボすればいいんですよね。ただコラボする以上、相手のブランドにも何かメリットを還元しなきゃいけない。そのためにブランドの人格があって、「御社に対して顧客としてこんなファン層を還元できるはず」という提案をができるんじゃないかと。

WWD:ファンからは具体的にどんな声がありますか。

rina:テイストがファンによってバラバラで、ピンクが好きだったり、黒が好きだったり。でも、アイテムによってテイストが違ってもいいかなと。

WWD:ファンの意見を取り入れるとなると、ブランドの世界観の統一が難しいように思います。

rina:でも、ファンの子の意見を大事にできないなら、ブランドを持てないくてもいいと思っているので。

WWD:自分の意見とファンの意見はどのくらいの比率をイメージしていますか。

rina:自分がベースで作りたいものを作るのはもちろんですが、そこにファンがほしいという意見を聞いて取り入れていくイメージですね。中にはファンの子がほしいと言ってくれたことで、私自身が気になり始めたアイテムなんかもあります。

ブランドとインフルエンサーを支えるプロデューサーという新たな仕事

WWD:プロデューサーとしての今村さんの仕事とは?

鍛治:彼はまだ新卒2年目なんですが、すでにいばらの道を歩んでいます(笑)。彼の素直さとクレーバーさ、若いが故のフットワークの軽さなどもあって、これまでも番組の中で企画を作って担当をさせてきたので、かなりの場数は踏んでいます。そんな中で、rinaとは番組立ち上げから一緒に仕事をしているし、年齢的にも共感する部分が大きいということで、プロデューサーを任せてみました。僕の方からビジネスとしてブランドに関することを言う時にも今村というフィルターを通すことで、間を持ってくれているような部分がありますね。

今村:他にもディレクターなど、いろんな間を取り持つことは多いですね。そもそも、過去の事例としてライブコマースのプロデューサーという仕事がないので、先頭切って仕事のあり方を模索し続けるしかないと思っています。番組としていいものを作る、かつ、ライブコマースという以上売れることが至上命題なので、その辺のバランスを意識しています。何をすればファンが楽しめて、かつゴールであるコンバージョンに結びつけるか。そのバランスを保つのが僕の仕事だと思っています。

鍛治:ライブコマースとして番組のプロデューサー業ももちろんですが、ぼくらが一番大事にしなきゃいけないのは演者さんだと思います。世の中にはまだまだモノを売る自信のないインフルエンサーがたくさんいて、彼女らをサポートしてあげる、自信をつけてあげることも僕たちの仕事だと思っています。だから、二人三脚で物事を考えるマネジャー的なポジションでもあるかもしれません。

rina:言わなきゃいけないことはきちんと言ってくれるし、今回のブランド発表も私と同じくらい緊張してくれるので、心強くなります(笑)。

デザイナーが消費者の代弁者になる

WWD:Candeeはこれまでもアパレルと組んだりAKB48と作ったりと、毛色の違うPBを作ってきましたが、今回の「チェリッシュミー」はどんな位置付けですか。

鍛治:さきほどrinaが言った通り、彼女がゼロからファンとともに作って、育てていくブランドになると思います。彼女がクリエイティブ・ディレクターでありがらも、視聴者の代弁者として作っていくことが、これまでのブランドとは違うところ。われわれがライブコマースを扱う以上、すべてのブランドは“マーケットイン”型なんですが、本当の意味でのマーケットイン・ブランドになるはずです。

WWD:そもそも、プラットフォームを運営するCandeeが考えるブランドの定義とは?

鍛治:僕としては“ブランドとしての人格”を作ることをやりたくて、服を売るだけのブランドだと思っていません。まずrinaというブランドがありながら、彼女とは違う「チェリッシュミー」というブランド・人格がある。そこにrinaなりに考えることを乗せていくというイメージで、必ずしもrinaイコール「チェリッシュミー」だとは思っていません。だから全く異なるコミュニティーでも構わない。そもそも、彼女が「チェリッシュミー」だけを着続けるみたいなことは時代錯誤で、彼女が本当にいいと思ったものなら別ブランドだって着ればいいし、インスタグラムにあげてもいいんです。僕らが「チェリッシュミー」というブランドを彼女だけに背負わせるようなことはしたくなくって。

WWD:rinaさんが別のブランドを作ってもいいと。

鍛治:究極、全然ありですよね。

WWD:rinaさんがライブ配信で紹介する商品はエンゲージメントが非常に高いと聞きますが、なぜなのでしょうか。

鍛治:彼女はエンゲージメントが確かに高いんですが、まだまだ成長していて、伸び代がどこまであるかわからないのが楽しみなんです。大体の演者さんはライブ配信を続けると一定のファン数から伸び悩むことが多いんですが、彼女はそれが全く衰えなくて、他とは違う数字の出方をしています。

WWD:それは、なぜだと思いますか。

今村:彼女の場合、ライブ配信中もファンとのコミュニケーションを自然にとっていて、ファンとの距離感を全く感じないんですよね。だから、“ファンと一緒に作っていく”ブランドというのも必然かのようにファンに受け入れられるんじゃないかと思っています。

WWD:ライブコマースといえば、その場の空気感が売れ行きに影響する、いわゆる“エモーショナルなビジネス”なのではないかと思います。

鍛治:もちろん、ライブコマースとエモーションってすごくリンクしてくると思います。それはすでに証明されていて、例えばコメントが多くなるほどコンバージョンに結びつくようなことが起きています。でも、これってライブコマースだからではなくて、テレビの時代からそうで、熱中度がコンバージョンに出るんですよね。テレビを見ていても、ドラマのストーリーにはまって、その中で着用している商品が売れることがあると思うんですが、それがライブコマースだとその場ですぐに買えるというだけなんです。だから、“エモーショナルな瞬間”との親和性が最も近いサービスがライブコマースなんです。

今村:紹介するアイテムがどう動くか、もちろん先に仮説を立てるんですが、それが当たるとも限らなくて。ライブ配信の現場ではファンからのコメントを見ながら商品の出し方を変えたり、つねに試行錯誤をしています。

WWD:最後に、(取材時、ブランドをファンに発表する直前の)今の気持ちは?

rina:もう、ドキドキです(笑)。いつも配信10分前にならないと緊張しないのに、今日は新幹線で来る時からずっとソワソワしてます(笑)。

今村:僕は緊張というよりも、ここから頑張ろうという気持ちですね。まさにスタート。一番楽しいですね。

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アウトドア消費の現在地と未来 ブームは一過性か、それとも日常に定着するか

「WWDジャパン」11月30日号は「アウトドア」特集です。アウトドアウエアが日常的に着用され、商業施設の目玉テナントとして誘致されるなど、市場を席巻しています。キャンプやハイキングなどはコロナ禍に最適なレジャーとしても注目されていますが、このブームは一過性のものなのか、あるいは日常に定着するのか。特集では、自然の豊かさを多角的に発信するアウトドア企業のトップや、ファッション視点で市場を見てきた名物…

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