ファッション

「ブックアンドベッド」が新天地・歌舞伎町で発信する“本物”の読書体験

 不動産会社のアールストアが運営する“泊まれる本屋”「ブックアンドベッドトウキョウ(BOOK AND BED TOKYO)」が22日、新宿・歌舞伎町に5店舗目をオープンする。スーペリアルーム(1泊1万2000円〜)を含めて全55室の都内最大級の店舗で、初となるカフェも併設。カフェだけの利用や1時間500円〜の日帰りプランも用意する。

 「ブックアンドベッド」が入るのは歌舞伎町の西の端、西武新宿駅すぐそばにできた商業ビルの8階だ。東急グループが再開発を手掛ける地区で、2015年には近隣に新宿東宝ビルができるなど、新宿らしい雑踏感を残しつつも、比較的整備された地域といえる。内装は他店舗と統一感を持たせつつも、ラインライトやミラーボールなど、アールストアが考える“新宿らしさ”を随所に取り入れた。BGMもトリップホップをメーンにヒップホップ、ダウンテンポなどを採用し、オレンジ色のラインライトとともに“新宿の怪しさ”をうまく表現したという。

 この場所を選んだ理由について、力丸聡・新規事業部部長は、「すでに池袋と浅草に出店をしているが、東京のど真ん中に出店したかった。歌舞伎町を選んだのは物件ありきではあるが、近隣に同様のコンセプトをうたう施設も出てきたので、あえてこの場所で“本物”を提案してみたかった」と意欲をみせる。

 本物の“泊まれる本屋”とは何なのか。力丸部長はそれを「宿泊体験と読書体験を拡張した場所」と定義する。「ホテルとして宿泊体験をつきつめた時に、“寝たくなくなるようなもの”が欲しいと思った。そのツールとして最適なものが本だった。とはいえ、単なる図書館のような空間では面白くない。だからこそ『ブックアンドベッド』では、本ではなく“読書”にフォーカスをしている。さまざまな読書体験を通じて、人と人がつながる空間を目指したい」。

 “読書体験”という視点で見れば、新宿店はどこの店舗よりも魅力にあふれているように感じる。例えば、中央にある階段状の本棚では、上に行くほど天井に近く、窮屈な空間となる。最上部にある本を見ようものなら、かなり屈まなければいけないのだが、実際に座ってみると思いのほか居心地がいい。「ジャングルジムのように、無理して不便なところへ行くのは意外と楽しかったりする。座って読むだけが本の楽しみ方ではない。空間に浸るとか、友だちに共有するとか、自由な解釈で読書を楽しんでもらいたい」。空間中央に吊られた漫画「AKIRA」の切り抜きも、ある種の新たな読書体験なのだという。

 窓際の明るい読書スペースと対比して、奥にはピンクのネオンで彩られた薄暗い、文字通り“怪しい”空間もある。もちろん個室へ本を持ち込んで寝落ちするまで静かに読書をしてもいいし、カフェで友だちと話しながら深夜に雑誌を見てもいい(宿泊者は深夜3時まで利用可能)。たしかに、これほど多様な読書体験を提供する本屋はない。

 そんな本気の読書体験をサポートしたのは、これまでも「ブックアンドベッド」の選書をしてきた渋谷の書店「シブヤ パブリッシング アンド ブックセラーズ(SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS以下、SPBS)」だ。「われわれのターゲットは本が好きな人全員。読書を好きになる入り口になりたいと思っている。選書において範囲を狭めることは本屋なら誰でもできるが、こうした自由な読書体験のための幅広い選書はSPBSにしかできないはずだ」。

 17年にオープンした浅草店も、金土日はほぼ満室に近い稼働率を維持しているという。「おかげさまでリピーターも増えた。面白いのが、就活生も多く利用してくれていること。彼らは調べ物をしながらもつながりを求めるようで、この空間がぴったりはまるようだ」。読書を起点にコミュニケーションまで生まれるのが“泊まれる本屋”の面白いところで、ホテルでも本屋でもない、この場所の多様性を感じとれる実例だと感じた。今後、歌舞伎町という街でどんな利用者がどのような使い方をするのか、新たな読書体験が生まれるこれからが非常に楽しみだ。

■BOOK AND BED TOKYO 新宿店
オープン日:5月22日
住所:東京都新宿区歌舞伎町1-27-5 歌舞伎町APMビル8階
チェックイン時間:16:00〜23:00

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