
「W(ダブリュー)」といえば元祖ライフスタイルホテルと言えるのではないだろうか。1998年にニューヨークで誕生した当時はブティックホテルとかファッションホテルと呼ばれ、今までの端正できらびやかなラグジュアリーホテルとは違う、クラブのようなライティングや、はっとする斬新さが受け、同じようにスタイリッシュなデザインのホテルが増えていた。「セックス アンド ザ シティ(SEX AND THE CITY)」が大ブレイクし、主人公のキャリー・ブラッドショーのようなファッショニスタが闊歩していた時代。「W」ニューヨークは、そんな‘ファービラスな‘人々のたまり場だった。その後、世界70以上のディスティネーションに展開。世界各地の「W」を訪ねていくコアなファンが多いのも納得だ。
江戸時代の風習をモチーフにした
外は黒、中はド派手なブラックボックス
御堂筋沿いのパワフルな浪速の中心地に日本で唯一のWホテルズが開業したのは2021年のこと。安藤忠雄がデザインを監修した建物はブラックボックスと呼ばれ、外観はスクエアな真っ黒なビル。だが一歩踏み入れると、「W」ならではのビビッドな世界が広がる。1階ロビーに続くトンネルは、春は桜吹雪、夏は新緑、秋は紅葉、冬は真っ白な雪、というようにシーズンごとに色が変わる絶好のフォトスポット。3階のフロントフロアに進むと、玉手箱をひっくり返したようなポップさで胸が高鳴る。え?ここはテーマパーク⁈
この外は真っ黒で控えめ、実は内側は絢爛豪華、というのは浪速商人の洒落心からヒントを得たそう。奢侈禁止令(=贅沢禁止令)が出されていた江戸時代、大阪商人たちは黒い羽織で地味に装いながらも、裏地はド派手にしてお洒落を楽しんだという粋なエピソードだ。
どのWホテルズのエントランスにもあるという大きなWのモニュメントは、大阪ではシルバーの丸い玉。これは大阪発祥のあるカルチャーからインスパイヤされた像だそう。このように「W大阪」にはさまざまな場所に、大阪の歴史や文化をモチーフにしたエッジな仕掛けが散りばめられている。
客室がバーになったような斬新さ
スイートエスケープという至福
おこもり滞在といえば、大自然の中、誰にも邪魔されず温泉でまったり…といったイメージがあるが、大阪本町はビジネスの中心地。御堂筋を見下ろしながらも、都会の喧騒を忘れ、リトリートするというのもなかなか贅沢な体験。私が訪れたのは、たまたま海外出張や大きなプロジェクトが終わるタイミングだったので、ひと山超えて、「お疲れ私~~~」と自分で自分をねぎらった。滞在中は1歩も外出せず!
せっかくのおこもり滞在。ちょっと贅沢なスイートタイプの部屋にも注目してみよう。モダンアートが各所に飾られたアーティスティックな空間からは大阪の街を一望できる。「アーバンスイート(Urban Suite)」「ダブリュースイート(W Suite)」「シュプリーム スイート(Supreme Suite)」「ペントハウス(Penthouse)」は大阪の中心地を見下ろす大開口が心地いい。客室内の「Mix Bar(ミックスバー)」には「W大阪」のために特別に醸造された、三重県・伊勢 志摩に誕生したワイナリー「伊勢美し国醸造所」による赤・白ワインをはじめ、こだわりのセレクションのボトルが並ぶ。シェーカーなどのバーツールも備えられ、バーテンダー気分を味わえるのだ。
夜になるとライトアップされ、空間はさらにきらびやかに! アーバンスイートの照明はさながらクラブ。ペントハウスのリビングもゆったりとしていて、親しい仲間と会話も弾むだろう。ソロ滞在だった私は、慌ただしかったこの春を振り返りながら、その余韻に浸っていた。まるで自分だけのホームバーを手に入れた気分だ。
337室の客室のうち、スイートは50室。館内には6つのバー&レストランがあるので、バーホッピングを全力で楽しむのなら、コンパクトな客室を選ぶのもいい。ポップなデザインや眺望は標準的なコージーの客室にも共通し、フォトジェニックなバーカウンターがあるなど、部屋飲みを楽しめる設計になっている。
浪速のバカンスならではの食の充実
館内をはしごして食い倒れもよし!
「せっかく大阪にいるのだから、食い倒れよう!」と館内のバーやレストランをはしごするつもりだった。まずはホテル4階の「WET BAR」で開始されたジャパニーズハイボールスタンドへ。「響30年」「山崎25年」などの希少銘柄や「知多」や「白秋12年」など、多彩なジャパニーズウイスキーを、「女将」なるウイスキーコンシェルジュがナビゲートしてくれる。バーは目の前にプールが広がる、リゾート感あふれるテラスに面したロケーション。
そして私が夢中になったのが、ウイスキー×炭酸×コンディメントのそれぞれを自由にセレクトし、自分好みのハイボールをオーダーできるビスポーク(BESPOKE)だ。炭酸1つをとってもその強度やミネラルが違い、その組み合わせは無限大。迷ったら、女将が優しく、そして的確にアドバイスしてくれる。ウイスキーは山崎、山崎の天然水でつくったソーダを選んでみた。柚子、紫蘇、すだち、山椒などの和を感じるコンディメントがジャパニーズウィスキーに調和しそうだ。
「季節の野菜スティック 燻製マヨネーズとトリュフマヨネーズ」や「だし巻き卵」、「ビーフフィレカツサンド Wオリジナルソース」などウイスキーとも相性がよさそうな浪速グルメも充実。1軒目のこのバーだけで、腹パンになってしまいそうだ。
館内にはこのバーを含め、飲食店が6店。黒毛和牛などの鉄板焼きや大阪ならではの粉もんをラグジュアリーに仕立てた鉄板焼「MYDO」には、20時30分以降からのミニコースもある。そのほかも「鮨 うき世」、フレンチの和食のエッセンスをプラスした「Oh.lala…」など、しっかりしたコースを味わうことも可能。私はかなり満腹だったので、アラカルトも頼める「Oh.lala…」でワインを楽しみつつ、旬のお料理を楽しむことにした。ちなみにこのブラッスリーのランチコースはなんとパンとサラダ食べ放題!道場破りの覚悟で(!?)「頼もう~~~っ」と門をたたき、挑んでみるのもいい。
プール=WETやジム=FITで運動
こもる滞在だからこそのウエルネス体験
あまりにスタイリッシュなプールに、オープン当時は多くの映え系女子が撮影目的に集まり、Wのナイトプールが話題に。私が滞在したのは平日だったからだろうか、朝はインバウンドの旅行者たちがゆったりと泳ぎ、その子どもたちがプールサイドで遊ぶ、というのんびりとした風景だった。そのゆるさがちょうどいい。夜はきらきらとしたナイトプールも、柔らかな朝の光でヘルシーに。全く違う表情になるので、ぜひとも夜と昼の両方を体感してほしい。もちろん、どちらも絶好のフォトスポットだ。
「W大阪」ではプールはWET、ジムはFITと表示され、それもヒップでかっこいい。FITもまた思わずスナップを撮りたくなるほどフォトジェニックだった。早朝には宿泊者が自由に参加できるエクササイズのセッションもある。トレーナーが軽いストレッチや筋トレで目覚めのいい朝へと導いてくれる。そういうクラスがあるホテルのジムもあるが、毎日、さらに誰でも参加無料というのはなかなか珍しい。もちろん予約すればマンツーマンでのクラスも可能。大開口から自然光が差すジムは開放的で、夜は夜景が輝き、幻想的に。こちらは24時間オープンし、ウェイトマシンやトレッドミル、ローイングマシーンや有酸素マシーンまで、最新の器具が並んでいる。サウナやスチームもあるから、リフレッシュタイムに活用するのもいいかも。
早朝のジムにはカップル1組しかいなかったので、最新マシーンをあれこれ試してみた。なかでも面白かったのが「ミラーフィット」。これがまた、自宅に導入したい‼というくらいの優れものだった。姿見くらいの背の高いディスプレーを前に、ヨガやストレッチ、ヨガなど、さまざまなクラスを選択。インストラクターの動きをマネして運動するのだが、同時に自分の姿勢も鏡でチェックできるので、動きを追いやすく、フォームを修正しやすいのだ。苦手なダンスもこれならついていけるかも。運動の強度はいろいろあって、ボディメイクを目的とした各部位の筋トレ、シニア向け、キッズ向けなどいろいろある。そんな最新機器を体験できるのも、トレンドに敏感なホテルで過ごす醍醐味だ。
「美は一日にして築けず。日々これ励むべし!」とニューヨークのファッショニスタたちに背中を押されたような朝だった。あまりにも美味しくて、朝食ブッフェを欲張りすぎ、反省していた自分を晴れ晴れとした気分へとシフトしてくれた。おこもりウェルネス体験、いいかも。
多様性を受け入れ、支え、
みなが心地よくなる「場」を提供
この施設のすごいところは本気で多様性と向き合っていることだ。2024年には、LGBTQ+などのセクシュアル・マイノリティーへの取組みの評価指標「PRIDE指標」のゴールド認証に認定された。性的マイノリティーが安心して集え、働ける場を築いている。スカートかパンツか選べるユニセックスな制服を導入、「W」ホテルズ全体でLGBTQ+を含むあらゆる文化やバックグランドを受け入れ、多様性を認め合う「Show Heart」をポリシーとする。
それを受けてウエディングも多様性に満ちている。さまざまなスタイルに対応し、愛犬と同席してのセレモニー、甘すぎずシックなスタイリングでのパーティーなど、個性的なスタイルを築いてきた。同性婚などのウェディングパーティーも実際多いそう。定評があるのは料理のクオリティーだ。その料理に適した温度でサーブすることを心掛けている。美味しいものが人生を豊かにするのは、どんなコミュニティーでも共通だ。
無機質にはなりがちな企業の研修などもエッジィに。ほかにはない「場」をカラフルに演出している。
推し活にも最適なカラフルケーキや
華やぐアフタヌーンティでも話題に
洗練されて、時代の先端である「W」は推し活に夢中な層にも支持されている。1階の「MIXup(ミックスアップ)」は推しの生誕祭やライブの成功を祈るオフ活などで囲みたい、カラフルなケーキを販売。ここで推しのカラーのケーキをオーダーし、推し仲間と記念撮影し味わうのが恒例となっている人も多いのだとか。なるほど。スタジアムやシアターも多く、さまざまな試合やライブ、舞台などのある大阪。推し活を目的とした旅もプランできる。全国に散らばる推し活仲間と集合、合宿、と様々な楽しみ方がありそうだ。
またさまざまなアーティストやキャラクター、ブランドとコラボしたアフタヌーンティは要チェック! 私が滞在した時はイタリア発のファッションブランド「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」とコラボし、こんなかっこいいアフタヌーンティースタンドを見たのは初めて!と興奮した。3階のリビングルームで7月31日までの期間限定というこのコラボでは、サンリオの人気キャラクター「クロミ」とのコラボTシャツなども販売している。
さて「ヌメロ ヴェントゥーノ」のシャープな感覚や仕立てのよさ、そんな世界観を表現したようなアフタヌーンティーは、ランウエイのように一皿一皿が個性を放つ。とにかくなんと言おうか、スイーツなのに、セイヴォリーなのに、やたらかっこいいのだ。色はほぼモノトーン。黒をベースにしたクールなデザインだ。
「W大阪」のビル、別名ブラックボックスを模したケースを開けると、くるくる回転するアフタヌーンティースタンドが。チョコレートムース パッションバナナやティラミス アマレットクリーム、ブラックベリータルト 洋梨とカシスなど、甘味だけでなく、酸味や洋酒の味わいをプラスしたスイーツが並ぶ。セイヴォリーもフォアグラ ムース キャラメル シートやシュリンプ テリーヌ ブラックペッパーなど、大人の味の味わい。スパイスや塩味がそれぞれ重なり合って、1つのルックのようにコーディネートされている。
ウェルカムモクテルと、珈琲や紅茶の90分のフリーフローが付くアフタヌーンティのみは7000円。グラスシャンパンが1杯つくと1万1000円で、全て税・サービス料15%が含まれた価格だ。
1階の「Mix up」でも、8月31日まで期間限定でTWICEとのコラボを展開。眼でも舌でも楽しめるPポップでキュートな仕上がりだ。ちなみにTWICEの世界観を表現したコンセプトルームにも 8月31日まで宿泊できる。ロゴ入りスリッパやアイマスクなどのウェルカムキットや、このアフタヌーンティーもつき、オプションでバルーンデコレーションを予約することもできる。TWICEと過ごすお泊り会のような夢の世界だ。
真のラグジュアリーは自由
それを体現した空間こそが「W」
「W」ホテルズでは、自分らしく生きる自由そのものをラグジュアリーであるととらえている。誰にも縛られず、心のままに。
「W大阪」もまた、自由を感じられる空間だ。20年前、ニューヨークの活気あふれるシーンから誕生した「W」ホテルズの遺伝子を受け継ぎ、浪速ならではのエネルギーやクリエイティビティーを感じられる「場」となっている。都市がもたらす心躍る刺激的な空間に身を委ねる。そんなの浪速のおこもりリトリートを楽しむのもまた、一流のラグジュアリーステイなのだ。