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2年経っても満員御礼、3800円から利用できる“泊まれる本屋”はなぜ人気?

 不動産会社のアールストアが10月5日、“泊まれる本屋”がコンセプトのホテル「ブックアンドベッドトウキョウ(BOOK AND BED TOKYO)」を浅草にオープンした。浅草駅から徒歩5分の好立地で、浅草寺を過ぎてすぐのビル6階にある。池袋や京都などの既存店舗とは異なり、新たに“泊まれるBAR”というコンセプトを採用しており、“本屋”と“BAR”という2つのコンセプトを掛け合わせた2面性のある内装も面白い。全46床で、利用料金は1人1室3800円から。カーテンで仕切った個室のベッド空間以外にはシャワールームや洗面所、バーテーブル、ソファといったシンプルな造りで、「ブックアンドベッドトウキョウ」を手掛ける力丸聡・広報部 新規事業部部長は「高級路線ではなく、あくまで“ストリート”が根底にある。一人でも、友だちとでも楽しめる空間」と主張する。どんな思いで新店を出したのか、仕掛人に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):池袋を皮切りに京都、福岡にも店舗を出しているが、好調か?

力丸聡・広報部 新規事業部部長(以下、力丸):おかげさまで週末は1カ月先くらいまで埋まってしまうほどの人気です。基本的にほぼ満室が続いています。

WWD:どんな客層の利用が多い?

力丸:海外からの旅行客と国内旅行客、加えて、同じくらい都内からわざわざ泊まりに来てくださる方もいます。一人でゆっくりしたい方もいれば、友だちとホームパーティーのようにくつろぎたい方など、さまざまな使い方をしていただいています。中には、食事とお風呂を済ませてから泊まりに来る方もいます。

WWD:そんな中、なぜ浅草に新店を出したのか?

力丸:浅草駅近くにこれだけの土地があったことがきっかけです。このあたりは観光地ということもあってホステルなども多いですが、競合だとは思っていません。

WWD:浅草ではどんな客層を狙うか。

力丸:浅草だからといって、特にインバウンドにこだわっているわけではありません。都内から泊まりに来てくれる方も多いので、例えば、ビジネスホテルには宿泊するが、満足できずに寝るだけになっているような方に、安価で友だちと気軽に来れる場所を提供したいと思っています。

WWD:女性が1人で来るのは不安だったりしない?

力丸:ホステルって男性が利用するイメージが強いですよね。でも当店では7〜8割が女性なんです。セキュリティーがしっかりしていることもありますが、ブランドイメージを気に入ってもらって、リピートで来てくれる方が多いようです。

WWD:“泊まれる本屋”と聞くと、ネットカフェのアップデート版のようにも感じるが?

力丸:たしかに“本屋”とうたっているのでそういった印象を与えるかもしれませんが、決してそうではありません。ネットカフェはパーソナルスペースを重視していますが、ここでは中央にソファを配置するなど、オープンな体験ができる空間作りをしています。

WWD:内装のこだわりは?

力丸:遊びに来て、まだ寝たくないけれど、寝てしまう。そんな場所にしたいと思います。だから、ベッド空間や水まわりなどは極力シンプルにしてあります。内装については、“泊まれる本屋”と“泊まれるバー”をくっつけたので、真ん中から左右で全く異なる見た目が印象的だと思います。ソファで一人読書にふけっても良いし、友だちとバーテーブルで語っても良い。いろんな人がそれぞれの楽しみ方をできるように意識しました。あとは、なんとなく“ストリート”というのが根底にあります。ラグジュアリーにしたいわけではないし、かといって赤文字系みたいに特定の人をターゲットにしていわけではありません。“ストリート”というのが一番いろんな人にしっくりくるテーマだと思いました。従業員もストリートっぽいでしょ(笑)?

WWD:今の時代“ゆっくり本を読みたい”客は多い?

力丸:出版業が伸び悩んでいる時代に、“斜陽”な切り口だと思われるかもしれません。でも、50年後にただ本を売るだけの本屋さんが残っているかと言われると、わからないですよね。だったら未来の本屋を提案したいと思いました。友だちとくつろぐためにここに遊びに来て、自然と本を好きになってくれるような場所。そんな未来の本屋さんを目指すべく、“泊まれる本屋”というコンセプトをあえて打ち出しています。

WWD:店内にある書籍はどのような視点で選んでいるのか?

力丸:渋谷にある感度の高いブックストア「シブヤ パブリッシング アンド ブックセラーズ(SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS以下、SPBS)」に約1700冊を選んでもらいました。SPBSは独自性の高い品ぞろえが魅力ですが、あえて「とにかく幅広いセレクトをしてほしい」と、抽象的な依頼をしました。著者を知らなくてもなんとなく手にとってみたくなる本から、読書好きな人にも気に入ってもらえる本までをそろえることで誰が来ても本が好きになるような空間になると考えたのです。

WWD:不動産事業がアールストアの主軸だが、「ブックアンドベッドトウキョウ」はどういった位置付けか。

力丸:全くの別事業ですが、共通するのは何かをセレクトしてくる人の声を大事にしていることです。不動産事業にしても、部屋を見つけてきた人の声を打ち出しています。同じようにここでも本物のバリスタがいたり、元カメラマンがいたり、インスタのフォロワーが多い子がいたりと、個性のある従業員がそろっています。

WWD:スタッフの個性を重要視してるということ?

力丸:そうです。スタッフの面接にはすごい時間を使いますよ(笑)。だから、ここに来て友だちと話すだけではなく、ぜひスタッフともコミュニケーションをとってほしいと思います。これもオープンな“泊まれる本屋”ならではの楽しみ方かなと。そうして彼らの個性が反映されて、お店の色も変わっていくんじゃないかと思うんです。決まったブランドイメージの中で彼らを動かすのではなく、彼らの個性をどのように生かしてお店を作り上げるか。これを徹底しています。

■BOOK AND BED TOKYO浅草店
住所:東京都台東区雷門2-16-9 パゴダ浅草6F

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