フォーカス

IoTでアパレル業界は変わる? 不動産テック企業に学ぶ“データ時代の新ビジネス”

 “不動産テック(REAL ESTATE Tech、RE Tech)”という言葉を知っているだろうか。今、アナログだった不動産業界がテクノロジーを活用したいわゆる“不動産テック”によって飛躍的な進歩を遂げているというのだ。その先駆的企業の1つがTATERUで、もともとアパート専門の不動産投資会社としてスタートしたが、アプリだけで不動産オーナーになれるサービスなどの新しい不動産ビジネスを開拓し続けているという。自社開発のAIを使って不動産とオーナー、入居者との最適なマッチングを実現し、約1万8000戸ある管理物件も入居率97%という驚異的な結果を出している。2017年12月期の売上高は前期比77%増の670億円、純利益も前期比70%増の39億9000万円という成長っぷりだ。

 そんなTATERUが自社開発したIoTデバイスを標準搭載したアパートの運営を開始し、年内に1万室への導入を目指すと発表した。室内にあるタブレットで電気や家電などの操作はもちろんのこと、アプリから施錠を確認したり、室内への侵入があった際に通報できるシステムといったセキュリティー機能が大きなメリットとなり、特に1人暮らしの女性に好評という。もう1つ、若者にとってうれしい機能がチャットだ。タブレットで管理会社と気軽にチャットができるため、これまで聞きづらかった居住にまつわる悩みや苦情を伝えやすくなったのだという。

 このように入居者にとって利便性の高いIoTアパートだが、TATERUにとっての最大のメリットは“データが溜まる”ことにある。例えば、電話対応ではなくチャット機能を使うことで、問い合わせ内容が全てテキストデータとして保持される。これをAIが学習すれば、ある程度の疑問に対して機械的な受け答えが可能になる。苦情データを今後の商品開発に生かすこともできるわけで、アパレルECサイトのチャット機能でも本質的には同じ考え方ができる。

 TATERUの松園勝喜・常務取締役兼最高技術責任者(CTO)は「こうしたデータ活用によって、不動産業界が大きな変革の途にある。大量生産や機械化によって消費者・生産者のあり方を変えた産業革命と同じ構造改革が起こる」と考える。持ち家を好まないなど、若者の不動産離れが叫ばれる昨今だが、「土地活用だけが不動産の仕事ではない」と強調する。「住宅ごとにIoTデバイスを導入すると、その地点での湿度や照度、騒音データなどを知ることができる。これらは大きなポテンシャルを秘めたビッグデータとなるだろう。例えば、天気予報だって、衛星を使わずにその土地ごとに精度の高い予報ができるようになる。こうした土地ごとのデータこそが新しい価値を持つ」。

 松園CTOは、こうした先に“データ・エクスチェンジ・マーケット”が生まれるのではないかと予測する。「あらゆる業界がデータを持つことで、いずれは信頼感のあるデータを持った企業が集まり、そのデータを交換し合う場所が必要になるだろう。それは“データの東京証券取引所”のようなものだ」。アパレル業界ではスタートトゥデイの“ZOZOSUIT”がその最先端にいるだろうし、飲料業界でもIoT自動販売機、鉄道系でもICカードといったデータビジネスは出来上がりつつある。もちろんユーザーが安心してデータを提供できるセキュリティーの用意は不可欠だが、各業界が近い未来に訪れる“データマーケティング”の時代に備えて独自のデータ集めを行っているのだ。

 こうした流れで考えると、アパレル業界にもデータを集めるポテンシャルはおおいにあることに気がつく。店舗を持つブランドであればアプリを使った購買履歴だけでなく、店頭での顧客動向なども今後は大きな意味を持つはずだ。店頭での顧客動線を解析できる画像サービスを提供するABEJAのような企業に注目が集まるのもうなずける。建て替え真っ只中の渋谷パルコもIoTを駆使した館を目指すことを明示しており、多くの人が集まる商業施設もそれだけのビッグデータを蓄積できる力を持つことがわかる。今の時代、モノを作って売るだけがアパレル企業の仕事でないことは明白だが、不動産業界同様に“データ”が今後アパレルビジネスの構造自体を変えうることをあらためて認識すべき時かもしれない。