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「ネットで買えない日本のビンテージを広めたい」 1人で世界に挑む23歳

 働き方や仕事っぷりに関して懐疑的な印象を持たれがちな“ゆとり世代”ですが、最近は組織に属さず個の力を生かしてビジネスを始める若者が増えてきたように感じます。(僕自身ゆとり世代ど真ん中なのですが)そういう若者と話をしていると、「アパレルの未来は明るいぞ!?」と思うこともしばしば。ブランドの古着アイテムを買い付けてネットで販売する西谷勇太君もその一人です。

 西谷君は1994年生まれ。2017年にブランドの古着を扱うセレクトストアEMPTY R__Mをスタートしました。現在はECサイトで、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」や「ナンバーナイン(NUMBER NINE)」といった90年代後半以降のブランドを中心に、「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」から「ニードルズ(NEEDLES)」まで、幅広い商品を販売しています。もちろん、買い付けからネットサイトの管理運営、ポップアップショップの運営、ビジュアル作成、PRまで、全ての仕事を一人でこなします。

 個人で古着屋を営む若者は珍しくありませんが、彼は日本で買い付けた商品を海外に対して売るという、珍しいビジネスをやっています。だからそもそもサイトもドル表記。「日本人でアーカイブのポップアップを海外で開いた人を僕は知らないので、自分がそのパイオニアになって、海外の多くの人に日本のブランドを手に取ってもらいたい」と西谷君。「リスクを取ってでも、日本のファッションを海外に広めたい」と、これまでロンドンやロサンゼルスでポップアップを実施しており、今月23〜26日にもまさにロサンゼルスでポップアップを開催しています。

新しい世代にとっての“アーカイブ”を
洋服の選択肢に

 「今のネットでなんでも買えるとは思いません。ネットでも“手に入れることが難しい”アイテムを見つける手伝いをしたいんです。良いものが常にあふれていて、欲しいアイテムがすぐに見つかる。そんなセレクトを見ていただきたい」と自らのショップを説明します。「古いものだから高いというわけではない。2010年以降のブランドでもアーカイブはアーカイブですから。5年前の洋服でも残っているってすごくないですか?だから、服を買う選択肢にそういった“アーカイブ”を加えてほしいんです」。

 昨年、中学生インフルエンサーのYOSHIを起用したビジュアルを作成したそうですが、このビジュアルについて触れた「WWDジャパン」の記事で、「(10年前に現役だったコレクションアイテムが)新しい時代のために“ニュービンテージ”と化し、14歳のファッショニスタが華麗に着こなしていました。色あせない強さのあるコレクションは、いつの時代も新しいスタイルとして受け継がれると思った瞬間です」とあります。この記事を引き合いに「まさにこういうことです」と。そうか、彼は新たな世代にとっての“ニュービンテージ”を提案しているのだ、と納得しました。

 彼がやっていることは、一言でいえば“自分の感覚だけを頼りに、モノの価値を再評価する仕事”です。「なぜアパレル業界に就職しなかったのか」と聞くと、「ファッションが大好きだから。日本では昔からリサイクルの文化があって古着に出合う機会は多かったですが、その中で、より価値のある良いモノだけを販売するお店がなかったので、自分で始めたんです」。彼は企業に属さず、個人の目標を自分だけで成し遂げていまう“個の強さ”を持っています。しかも、「ショップの世界観を崩したくないので、自分は露出しないことにしています」というこだわりよう。SNSやECなどのおかげで、個の力がますますビジネスに影響する時代だけに、彼のような明確な意思を持った若者がこれからのアパレル業界の1つの道筋を作っていくのだと感じました。