ファッション

「エルメス」はなぜタイムレスなのか?LAとスイスで考える

 最近はどこに行っても「景気が悪くて……」という話ばかりを聞きますが、だとしたら真っ先に売れなくなるハズの「エルメス(HERMES)」の勢いが止まりません。WWD JAPAN.comの記事によると、昨年は、売上高が前年比7.4%増、営業利益も同10.1%増。その数字は、ほかのラグジュアリーメゾンと比較しても抜きんでています。ちなみに、日本での売上高は、同20.6%増。スゴい数字です。

■エルメス決算 定番バッグが売り上げをけん引

 その理由は何か!?

 月並みな答えではありますが、それは「タイムレス」だからです。あらゆる人が言い続けていますが、「エルメス」って本当に「タイムレス」。ショーを見続けている僕には、それがハッキリわかります。特にメンズは、ヴェロニク・ニシャニアンが20年以上の長きにわたって時代のムードをちょっぴり加え、1歩、そうたった1歩だけ、前に進むようなクリエイション。だからこそ、過去の洋服はいつでも着ることができるし、新作はその中に自然と溶け込みます。もちろん、最高の素材を使っているからこそ、永遠に色あせることはありません。奇をてらわないから、(お金さえあれば)だれでも着られる。そんなクリエイションです。

 実は今月、ロサンゼルスでそんな思いを再度抱く機会がありました。「エルメス」による、2017年春夏ランウエイショーinロサンゼルスです。

 とはいえ、17年春夏の「エルメス」メンズを見るのは、これで3回目。最初は去年の6月にパリで、2回目は昨秋に東京で、そして今回はロサンゼルスです。3つのショーに登場するのは、基本的には同じ洋服。加えてLAにいたっては、3月に春夏です。1月にパリで17-18年秋冬を見ている僕にとっては、ちょっぴり遅いカンジもします。

 でも、場所を変え、モデルを変えると、アラ不思議。同じコレクションなのに、うっとりしながら15分弱のショーを堪能できるんです。パリではハタチになるかならないかくらいのイケメンモデルがスマートに着こなし、日本では中肉中背のオジ様まで登場して上質な日常感を表出。そしてLAではさまざまな人種がモデルを務め、「タイムレス」のダイバーシティ(多様性)を表現していました。

 ただ、「タイムレス」って、最高の素材で、スタイルをゆっくり変えながていけば良いワケではありません。それなら、ほかにもいろんなブランドが「タイムレス」と呼ばれ、「エルメス」同様に快進撃を続けているハズです。でも現実は、いくつかのブランドは「タイムレス」ではなく「変わらない」という烙印を押され、ビジネスもジリ貧……。この違いは何なのでしょうか?

 その答えを、今度はスイス・バーゼルで発表になった「エルメス」の新作時計で発見しました。答えは、“ウキウキ♪”です。「エルメス」って、いつでも“ウキウキ♪”させてくれるから、「タイムレス」なんです。「笑っていいとも!」は毎日「お昼やすみはウキウキウォッチング♪」という歌とともに始まり、32年に渡り、8000回以上の放映を続けました。ここからもわかる通り、「ウキウキ♪」は、「タイムレス」なんです。え!?ちょっと強引ですか!!??

 誰でも、毎日楽しく暮らしたいですよね?でも日常って、大差ないからこそ「日常」って言われるワケで、ドラマなんて毎日は起こりません。「エルメス」は、そんな日常にちょっとした“ウキウキ♪”を与えてくれるから、常に望まれ、「タイムレス」と語られ、「憧れ」の地位まで上り詰めることができたのではないか?1本の時計を見て、そんな風に思ったんです。

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