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ユニクロが有明新オフィスを公開 クリエイティブな働き方と高速サプライチェーンを目指す

 ファーストリテイリングのユニクロが3月16日、かねてから進めてきた「有明プロジェクト」の記者説明会を開くとともに、新オフィス「ユニクロ シティ トウキョウ」を披露した。有明プロジェクトとは、物流センターとユニクロのマーチャンダイジング(MD)部、R&D部、企画部・生産部、マーケティング部、商品計画部、営業部、IT部などの商品・商売機能を集約させ、高速サプライチェーンの実現を目指すもの。「クリエイティブな働き方」や「作ったものを売る商売から、求められているものだけを作る、サステイナブルな商売」を実現するための重要な拠点となる。

 建物の1~4階と5階の半分は物流センターで、5階の残り半分は、陳列やオペレーションなどのテストや修正を行う仮想店舗を導入。6階ワンフロア・約5000坪(1万6500平方メートル)を約1000人が勤務する新オフィス「ユニクロ シティ トウキョウ(UNIQLO CITY TOKYO)」とした。これまで、東京ミッドタウンで7フロアに分かれて働いていたものを、ワンフロアにすることでスタッフ同士の交流を増やし、一体感を持って働けるような工夫をしている。同時に、部門ごとに分かれてリレー方式だった働き方を、MD、企画、生産、マーケティング、営業などを商品カテゴリーごとにチームを組み、連動して働けるような組織にしている。

 柳井正・会長兼社長は、「有明プロジェクトは全社の改革運動だ。アパレルの製造小売業から、情報製造小売業、英語でいう“デジタル・コンシューマー・リテール・カンパニー”に変わる。今日の仕事を今日やるのではなく、明日の仕事をどう今日するか。未来を創る仕事にしていく。社員全員がビジネスリーダーになり、一人一人が自分のリーダーになり、意義のある人生にする。そういう働き方に変える。ここがグローバルのイノベーションとクリエイションのセンターになる。お客さま、取引先、地域、社会とつながり、お客さまに最高のサービスを提供する。誰もが世界とつながる企業にし、世の中を良い方向に変え、世界中の消費者、お客さま、アーティスト、クリエイター、イノベーターらとつながって新しい日本の会社を創っていく。ハイテク・ハイタッチができる、全てが双方向でつながる、新しい産業を創る」と意気込む。

 有明プロジェクトを統括する田中大グループ執行役員は、「お客さまの声を全てのエンジンに事業活動を行う」として、服を作る人と着る人の境をなくしリアルタイムで商品開発をすることや、世界70億人の一人一人の顧客に寄り添い、どこからでも変えてどこにでも届けられるようにすること、そして、作ったものを売るのではなく、無駄を極限までなくしてサステイナブルな社会を作っていきたい」と理想を語る。

 特に商品作りでは、AIやアルゴリズムを活用した情報プラットフォームを開発。今春夏から商品にRFID(無線タグ)をつけ、グローバルサプライチェーンにつながる物流拠点、販売拠点など、その商品が今どこにあるのかが分かるように、全ての情報を“見える化”する。ここに顧客の声やSNSからの情報を入れ、アルゴリズムで情報を分析し、生産数量や生産工場、物流ルート、投入店舗などに反映していくという。

 企画についても、これまで作ってきた服の情報(デザイン、素材など)をデジタルライブラリー化し、これまでシーズン前に終わらせていた企画のリードタイムを短縮し、顧客とR&Dなど世界中と連動しながら企画・生産ができる仕組み作りに着手している。さらに、パートナー工場とも月次だった生産サイクルを週次の作り方にシフトし、期中生産比率を高める。空輸や倉庫の自動化で物流も早期化する。同時に「メード・フォー・オール(MADE FOR ALL)」をスローガンに掲げてきたが、「メード・フォー・ユー(MADE FOR YOU)」を実現し、マスブランドながらも一人一人にジャストフィットする「マスカスタマイゼーション」にも挑戦する。

 オフィスの内装デザインに起用したのは、アリッドワークスアーキテクチャーだ。ポートランドとニューヨークを拠点に、ワイデン&ケネディやピクサー本社、セオリーのニューヨークの店舗やシアトル美術館なども手掛けてきた有名建築ファームだ。ブラッド・クロエフィル創設者は、「2年前、柳井氏とジョンに会い、『社員にインスピレーションを与え、もっとクリエイティブにもっと幸せに働ける場所を作りたい』という依頼を受けた」という。

 実際のオフィスは、オーセンティックなゾーンとミニマルなゾーン、ナチュラルなゾーンなどをミックス。ワークスペースは開放的で、共用スペースにはデザイン家具やデコラティブな照明などを配しており、「ホテル並みの環境」との声も聞かれる。受付を入ると、ブランドのコンセプトや歴史を体感できるヒストリーホールが登場。さらに190メートルにわたる“ストリート”を挟んで左右に“ワークロフト”と呼ぶワークスペースやミーティングスポットなどを連ねる。

 注目は、リーディングルームと、ザ・アンサー・ラボだ。リーディングルームはいわゆるライブラリーで、最大2万5000冊が所蔵できるという。現在は柳井会長兼社長やジョン・C・ジェイ=グローバルクリエイティブ統括(GC)、アドバイザーの佐藤可士和サムライ代表らを中心に選んだ、ファッション、アート、カルチャー、ビジネスなど約2500冊をそなえている。ソファーやテーブルも配し、ミーティングスペースとしても活用できるのがポイントだ。また、ライブラリー奥にはジェイGCが“小さなジュエルボックス”と呼ぶ「有明カフェ」を併設する。約66平方メートルで、14席+スタンディングスペースというこじんまりとしたしつらえだが、だからこそインタラクティブな交流が図れると期待する。テイクアウトも可能で、運営はトランジットジェネラルオフィスが手掛ける。カップや意匠デザインなどについても両社で共同開発したという。