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ファッション企業の本社ビルを考える

 ヤマトインターナショナル東京本社ビルの竣工パーティを取材したが、平和島駅を降りて一本道を歩いていくと、突如として戦艦大和が眼前に現れて驚いたのを今も鮮明に覚えている。誰が見ても、ヤマトインターナショナル東京本社ビルの設計コンセプトは明らかに戦艦大和だと思うが、あまり言及されていない。言ってみれば、このビルは1980年代後半の日本のバブル経済を反映している。ヤマトインターナショナルは東京本社ビルが完成した87年には大阪証券取引所第1部に第2部から指定替えし、業績も順調に伸ばしていた。85年あたりからは、阪神タイガースの主力選手を起用した主力ブランド「クロコダイル」のTVCMを流したりしていた。いかにも大阪の企業らしいTVCMだった。また88年公開の映画『マルサの女2』(伊丹十三・監督)では東京国税局の外観として使用されるなど話題にもなっていた。さらには日本の建築史に大きな足跡を残した村野藤吾を記念して設けられた村野藤吾賞の栄えある第1回(87年度)をこのビルは受賞した。しかし90年以降この威容を誇るビルは徐々に記憶の彼方に追いやられていった。

 私も忘れかけていたが、今回の「エーグル」契約解消で久方ぶりによみがえったというわけだ。建築史的にも、80年代という時代を思い出すためにもこのビルは残る価値があると思う。

 最後にもう一つ本社ビルに関するエピソードを。昨年11月、マッシュホールディングス(MSHD)は本社を麹町に移転した。それ以前はTSIホールディングスが賃借していたビルだ。移転パーティーでMSHDの近藤広幸・社長に「またずいぶんとクラシックなビルを借りましたね?」と尋ねると、「村野藤吾の設計が気に入っているので」と答えた。100回以上訪れているこのビルが村野の設計なのを初めて知ったが、言われてみると凝った見事な設計である。この美意識がMSHDの躍進を支えているのだろうと確信した。

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