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編集者が出版不況を乗り越えるために

 その解決策のヒントを得るため、近ごろスクープを連発して世間を賑わせている「週刊文春」(文藝春秋)に取材をした。新谷学・編集長は、紙媒体ならではの取材力で勝ち取った強力なスクープを武器に、デジタルを情報流通のツールとして利用することで、コンテンツの価値をよりいっそう高めることに成功した。新谷編集長は「媒体のクオリティーを維持するためには、取材費や人件費などのコストがかかる。いかにコンテンツをビジネスに結びつけるかが重要だ。コンテンツを読者に届ける流通経路が多様化するなかで、それに適応するためにデジタルは無視できない」と語る。現在、紙とデジタルを組み合わせた情報流通によって「週刊文春」が発信する情報の価値は上がり、“お金を払って情報を買う”という意識を世間に根付かせている。

 紙の雑誌が人を動かすものということはこれからも変わりはない。“動く”というのは、単純に読者が購買に動くということだけではない。優れた編集力には、広告6クライアントや世間そのものを動かす影響力がある。業界内でも評判の高い「ヴェリィ」(光文社)は、徹底した読者目線の編集力が部数以上にクライアントの興味を引きつけている。雑誌に商品を掲載すれば、編集者のセンスや企画力によってヒットアイテムになり、マーケットを動かすこともある。自分の好きな情報だけ取得しがちなウェブとは異なり、情報との偶発的な出会いがある雑誌は、ウェブでは出会えなかった店や場所へと人を動かすこともあるだろう。

 出版業界全体に課題はある。しかし、いずれの問題を解決するためにも、まずは雑誌と直に関わる編集者の熱意が必要不可欠だ。山崎貴之「シュプール」編集長は「編集部のスタッフがウェブやSNSに積極的に関わったことで、SNSを通じた読者との濃密な関係性を改めて意識することができ、雑誌を作る際にもその感覚がフィードバックされている」と語るように、ウェブと紙の良い循環も生まれ始めている。決して大変なことばかりではない。取材期間中、偶然にも別々の編集者から同じ言葉を聞いた。「おもしろきこともなき世をおもしろく」。幕末の志士・高杉晋作が残した辞世の句であるが、2人の編集者はこの言葉を“どんなに大変な状況でも面白がりながら、さらに面白いものを作っていく”と捉え、雑誌不況と言われ続けているこの時代を楽しんでいるようにも見えた。これからの大転換期を自らの媒体とともに生き抜くためには、編集者としての原点ともいえるこの心構えを前提とし、編集者ならではの情報収集力を生かした商品開発、動画編集、イベント企画など、紙だけにとどまらないマルチタスクな編集力が必要だ。

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