ニューヨーク発のカッティングエッジなセックスマガジン「リチャードソン(Richardson)」の第7号「A7」の発刊とカプセルコレクションのローンチを記念して、東京・代官山のボンジュールレコードでローンチパーティが行なわれた。店内では、"アラーキー"こと荒木経惟が撮影したセンセーショナルな表紙が目を引く最新号のほか、マーク・ゴンザレスやハーモニー・コリンらとのコラボレーションで制作したウエアやグッズのカプセルコレクションを展示・販売。多くの来場者でにぎわいを見せた。
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「セックス」というレンズを通して、写真やアート、社会現象、カウンターカルチャーを表現する「リチャードソン」は、1998年に創刊。これまで、テリー・リチャードソンやスティーブン・クラインなど著名な写真家から無名の新人まで数多くのクリエイターが参加している。過激な誌面で注目を集める同誌について、来日したアンドリュー・リチャードソン編集長に聞いた。
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WWDジャパン(WWD):「リチャードソン」創刊のきっかけは?
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アンドリュー・リチャードソン(AR):スティーブン・マイゼルのファッション・アシスタントとしてマドンナの写真集「SEX」の撮影に参加したときに、"挑発的な"ファッションやイメージづくりの面白さに出会った。その後、独立して、スタイリストとして活動しているときに、親交のあったチャーリー・ブラウンこと故・林文浩「DUNE」編集長に、自分のアイデアやインスピレーションを集めたスクラップブックを見せたら、その世界観を投影した雑誌を作ることを強く勧められて。彼の協力のもと、「リチャードソン」創刊号を作ることになった。
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WWD:「リチャードソン」のコンセプトは?
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AR:コンセプトは、"Provocative"(挑発的、刺激的の意)。それは、性的な意味だけでなく、すべてにおいて。今あるものを壊していく"反骨精神"の再解釈とも言える。また、セクシャルなイメージを取り扱っているが、ただの性的な刺激というよりも、奥の深い精神的な刺激を表現することを目指している。
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WWD:なぜ、今号のテーマに「DEATH (死)」を選んだ?
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AR:実は、2年ほど前から「死」をテーマに制作したいと思っていたが、そのときはタイミング的にも違うと感じていた。ただ、前回「LOVE(愛)」をテーマにしたことから、その後に「死」が来るのは自然な流れだった。どんな素敵な恋愛にも、いつか終わりが訪れるようにね。
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WWD:今回、荒木経惟を起用した理由は?
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AR:荒木とはずっと一緒に仕事をしたいと思っていた。2000年頃から写真集出版の提案をしたりとコンタクトは取っていたが、機会を逃していた。彼の写真には、どこか「死」の感覚を感じるので、今回がぴったりのタイミングだったと思う。
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WWD:今号の新たな取り組みは?
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AR:ファッションフォトグラファー以外の写真家が表紙を撮影するのは、今回が初めて。また、今号では、一部のクリエイターを除いて、1人2ページ(見開き)という制限を設け、凝縮されたアイデアで、作品を制作してもらった。「死」というのは、とても重いテーマで、人それぞれ考えが違うので、今回はいつもより多くのコントリビューターに参加してもらい、幅広い視点で「死」を表現している。
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WWD:日本での反響についてはどう感じている?
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AR:日本は、身体の露出に関して厳しい規制があるが、精神的な面では、キリスト教ならではの考え方やタブーがある西洋よりも寛大で、純粋に好きか嫌いかで評価してもらえているように感じる。
WWD:今後のヴィジョンは?
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AR:「リチャードソン」を単に"雑誌"としてではなく、1つの"ブランド"として育てていきたい。今回、Tシャツやキャップ、スウェットなどのカプセルコレクションを発売したが、今後は、少しずつアイテムのラインアップを拡充し、いずれはフルコレクションを作りたい。今年9月には、ニューヨークのブルーム・ストリート(325 Broome Street)に小さなショップのオープンを予定している。ショップでは、「リチャードソン」の雑誌やカプセルコレクションのほかに、AからZまで26タイトルのエロティックな書籍や、オランピア・ル・タンが制作するブック型クラッチの限定版を販売。そのほか、旅先で集めた面白いものも集めて、「リチャードソン」のキュレーションスペースのような店にしたい。また、写真やアート関連の書籍の出版にも注力していく。その第1弾としてテリー・リチャードソンのフォトブックを9月に発売する予定だ。「リチャードソン」の次号については、いくつかアイデアはあるが、まだ制作するかは決めていない。