ファッション

注目の若手「リー」が描く60年代レトロフューチャー 見慣れた日常着をツイストして生み出す不思議な“違和感”

中国出身のゼイン・リー(Zane Li)が手掛ける「リー(LII)」が、ニューヨーク・ファッション・ウイーク期間中に2027年春夏コレクションを発表した。

ファッション工科大学(FIT)を卒業したリーは弱冠25歳ながら、近年急速に評価を高めている。2026年4月には「ファッション・トラストU.S.アワード(Fashion Trust U.S. Awards)」でレディ・トゥ・ウエア部門を受賞。さらに9月には「LVMHプライズ」で「カール・ラガーフェルド賞」を獲得したことも記憶に新しい。現在は「CFDA/ヴォーグ・ファッション・ファンド」のファイナリストに選出されているほか、「CFDAアワード」の「アメリカン・エマージング・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」にもノミネートされるなど、今最も注目を集める若手デザイナーの一人だ。それだけに、ショー会場にはアメリカをはじめ各国の主要メディアのエディターやバイヤーが集まり、その顔ぶれが関心の高さを物語っていた。

無垢さと経験、その境界にある緊張感

コレクションの出発点となったのは、1960年代のティーン・アイドルたちの歌声だった。まだ若く、実際には十分に経験していないはずの失恋や憧れ、諦めといった感情を、まるで人生経験を重ねた大人のような深みをもって歌い上げる。リーはそのギャップに着目し、「ある感情を理解するためには、本当にその経験をする必要があるのか」という問いへと発展させた。

60年代のロマンスを現代的な素材で表現

60年代を象徴する若さやロマンスといったコードを、そのままノスタルジックに再現するのではなく、現代的な素材やスポーツウエアの要素を掛け合わせることでアップデートした。ミニドレスやビニールの光沢が当時のユースカルチャーやフューチャリスティックな空気を想起させる一方、リーが得意とするテクニカルな素材使いやスポーティーなディテールが、懐古趣味にとどまらないフレッシュでモダンな表情を与えている。

端正なミニドレスに、片脚だけのレギンス

今季は「ナイキ(NIKE)」がショーをサポートし、スポーツの要素がより明確に打ち出された。なかでも片脚だけにレギンスを重ねたスタイリングは象徴的で、端正なミニドレスや日常着にアスレチックな緊張感を差し込む。シュールな色使いや弾力のあるスポンジのような素材も相まって、60年代のファッションに見られた未来志向や無邪気な楽観性を、いまのストリートやスポーツの感覚でとらえ直した。

見慣れたものを、見慣れないものへ

コレクション全体を通して印象的だったのは、誰もが知る日常着を“ずらす”というツイストだ。Tシャツやタンクトップ、フーディー、レギンスといった見慣れたアイテムも、レイヤリングの位置やプロポーション、素材の組み合わせをわずかに変えるだけで、どこか奇妙な、それでいて新鮮な表情を帯びる。

スポーツウエアの構造を分解、再構築

アノラックはフード部分を切り離し、装飾的な襟のようにキャミソールやドレスへ取り付けることで、本来の機能とは異なる役割を与えた。ほかにも、アノラックをチューブトップへと変形させたり、フーディーを途中で切り取ったようなフォルムに仕立てたりと、スポーツウエアの構造そのものを分解し、再構築している。

レイヤリングとパネル使いに加えた、独特のひねり

レイヤリングにも独特のひねりを加えた。Tシャツは重ねたり切り替えたりすることで、身体を覆いながら同時に肌をのぞかせ、タンクトップはジャケットの上から重ねることで、本来とは逆転したようなバランスを生み出す。片脚だけのレギンスも、この“ずらし”の延長線上にある。

さらに、リーの持ち味であるパネル使いも今季は随所に登場した。四角いパネルを組み合わせたようなスカートは、身体のラインに沿うという服の常識からあえて距離を取り、平面的なパーツと身体との間に緊張感を生み出していた。

知っているはずの服が、見覚えのない服へ

こうして、日常の中で見慣れたアイテムの機能や着る位置、プロポーションを少しずつずらすことで、知っているはずの服がどこか見覚えのないものへと変わっていく不思議な感覚。その小さな違和感こそが、今季のコレクションに新鮮さを与えていた。

フィナーレに姿を見せたリーには、会場から大きな拍手が送られた。ショーを取り巻く熱気からも現在の勢いがうかがえ、ブランドのこれからに期待が高まる。

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