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旧奈良監獄を活用した星野リゾート初のミュージアム 新しい名所に

「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」が27日、奈良市内に開館した。重要文化財の旧奈良監獄を保存活用する、星野リゾート初のミュージアム事業だ。6月に敷地内に開業するホテル「星のや奈良監獄」と合わせて人気スポットになりそうだ。

1908年竣工の旧奈良監獄は、明治政府が司法の近代化に向けて建設した「明治五大監獄」の一つで、唯一ほぼ全貌が現存する。設計は数多くの裁判所や監獄の建築に関わった山下啓次郎氏。中央看守所から5棟の舎房が放射状に伸びる「ハヴィランド・システム」と、イギリス積みの赤レンガ外観が特徴で、17年に国の重要文化財に指定された。1946年から2017年まで「奈良少年刑務所」として使われた後、星野リゾートが法務省から運営権を引き継いだ。

ミュージアムのコンセプトは「美しき監獄からの問いかけ」。歴史的建築が放つ迫力と監獄という特異な空間の記憶、その両方に向き合いながら規律や自由、日常の意味を問い直す。来館者自身がその答えを見つけるための場として設計された。

アートディレクター佐藤卓が担当

展示監修は、ルーヴル美術館ランス別館やロンドンのロイヤル・アカデミーなどの展示デザインを手がけたアドリアン ガルデール氏。アートディレクターは「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などの企業CIで知られる佐藤卓氏が担当した。

佐藤氏は建物を初めて目にしたときのことを振り返り、「この状態で残っていることが奇跡的で驚いた。美しい建築でありながら、普段の生活からはまったく縁のない監獄という空間。その対比が衝撃的で何をしていいか最初はまったく分からなかった」と率直な感想を述べた。荘厳な建築を最大限に生かすため、佐藤氏は01年から続けてきた「デザインの解剖」という手法を採用。日常の当たり前をデザインの視点で外側から解剖していくことで、圧倒的な存在感のある建築や空間とも対峙できるほどの展示コンテンツを作り上げた。重要文化財のため、許可なしに建物に釘一本打つことはできない。新しい壁を設けて展示を固定するなど工夫することで歴史的建築物のなかに現代風のミュージアムを実現した。

見学コースは、赤いレンガの壁が続くミュージアム専用ゲートからスタート。監獄の外観を見渡せる屋外フォトスポットを経て保存棟に向かう。1、2階で全96室の独居房が連なる第三寮は、往時の姿を残すことで歴史の重みを肌で感じられるエリアだ。ヴォールト状の天井や高い窓から自然光が差し込む設計で、人権への配慮をうかがい知ることができる。

展示エリアはA、B、C棟の3棟で構成する。A棟「歴史と建築」では、奈良監獄の成り立ちと日本の行政制度を8つの展示室でたどる。見どころは明治五大監獄を420分の1で再現した模型である。ハヴィランドシステムの合理性が俯瞰で理解できる。耐火性と耐久性を重視したレンガは職人の指導のもと受刑者自らが製造し、積み上げたもの。1906年には延べ15万人以上がこの大事業に携わったとされている。

「自由とは何か」考えるキッカケに

B棟は、佐藤氏の解剖的手法によって「規律と暮らし」をテーマにした7つの展示室に生まれ変わった。起床から就寝までの1日のスケジュール、布団の畳み方や髪型、服装など厳格なルールが定められていることを紹介する。「食事」の展示では、全国の刑務所ごとに異なる献立や食器を、「衛生」の展示では、トイレや入浴が決められた時間や方法に限られていることなど壁一面を使って紹介する。刑務所での生活をたどるうちに、時間や固定観念に縛られる現代の生き方に気づき、最後の部屋で「自分は本当に自由なのか」を自問するという仕掛けになっている。

旧医務所を転用したC棟は、5組のアーティストによる現代アートのギャラリーに改装した。「罪と罰」「時間と命」をテーマに、監獄の現実と向き合って制作した作品に加え、受刑者による刑務所アートも並ぶ。

展示を見終えた後は、ミュージアムカフェがおすすめだ。赤レンガをモチーフにしたカレーパンや明治のレシピに着想を得たチーズケーキなど、施設の歴史と結びついたメニューを味わえる。ミュージアムショップには、佐藤氏がセレクトした全国の刑務所作業品も並び、購入も可能だ。

同館の魅力について佐藤氏は「当たり前の日常を考え直してみたり、自由とは何かを考えたりするきっかけになる」といい、八十田香枝館長は「人生の分岐点に訪れる場所にしたい」と語る。

初年度の目標来館者数は30万人、将来的には年間100万人超を視野に入れる。6月には敷地内にホテル「星のや奈良監獄」が開業する。民間企業が観光収益で重要文化財を維持するモデルを奈良から発信する。

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