オンワード樫山は、婦人服「アンクレイヴ(UNCRAVE)」の2026年春夏物で作家・向田邦子(1929〜81年)とコラボレーションした商品を販売する。向田が服飾について触れたエッセイや生前のエピソード、写真などから着想して企画した。妹の向田和子さんらの協力を得た。担当ディレクターの今井嘉希氏は「向田さんは働く女性の先駆けで、ブランドが目指す知性ある女性像と重なる。現代の若い女性にも通ずる普遍性がある」と話す。
「阿修羅のごとく」「寺内貫太郎一家」「あ・うん」といった名作テレビドラマの脚本のほか、小説やエッセイの名手として知られる向田邦子は、没後45年経った今も新しいファンを増やしている。食事や器、ファッションなどライフスタイルへの独特の美学も多くの人を引きつける理由だ。
書斎で原稿用紙に向かうことが多かった向田は、夏はリラックスできる楊柳のブラウスを好んだ。着用姿が写真に残るブラウスは、身頃に大きなポケットが付いていて、ちょっとした外出時にも便利だった。この一枚から着想を得て、現代風にアレンジした「アンクレイヴ」のシャツワンピースは、ゆったりしたシルエットが特徴で一枚着としてはもちろん、ボタンを開けて羽織ることもできる。向田が気に入っていた大きなポケットもアクセントになる。
かごしま近代文学館に所蔵されている向田愛用のフランス製のスエットシャツをヒントに、襟首が広めのヘンリーネックのスエットシャツを新たに作った。ショート丈で現代風に着こなすことができる。
20代の向田は黒い服をよく着ていた。エッセイでは初任給の思い出を次のように綴っている。「『月給を貰ったら、まず祝儀不祝儀(冠婚葬祭)に着て行く服を整えるように』と父にいわれたのだが、当時私は若い癖に黒に凝り、色の黒さも手伝ったのだろう、『黒ちゃん』と呼ばれていた」(「父の詫び状」)
当時の写真とエッセイからヒントを得た黒いワンピース、黒地に白い水玉模様のスカーフは、シックな大人の女性に格上げしてくれるスタイルだ。特にスカーフは首に巻いたり、頭に被ったり、向田のお気に入りのコーディネートアイテムだった。
若い向田が3カ月の節約暮らしと引き換えにアメリカ製の水着を購入したエピソードは、黒い水着姿のポートレートとともにファンには広く知られている。スイムウエア「ダン(DAWN)」とのコラボレーションによって、水陸両用のワンピースやセパレートの水着を企画した。