花王は、「ビオレ(BIORE)」の日焼け止めカテゴリーが2025年度に過去最高売り上げを見込むなど好調を維持する中、26年は紫外線・暑熱ストレス対策を軸とした事業でBtoBビジネスに本格参入する。地球沸騰化によるUV需要の通年化を背景に、同社が蓄積してきたUVケア技術や市場知見を企業・団体の課題解決に生かす方針だ。
2025年は、1898年から開始した年平均気温の観測以来、最も暑い夏となり職場の熱中症対策の義務化やイベント開催時期の見直しなど、生活環境に大きな変化が生じた。こうした状況を受け、同社は単に製品を売るだけでなく、企業・自治体と連携し、紫外線や暑熱ストレスの低減につながる仕組みづくりへ踏み出す。小林達郎・花王ヘルスビューティケア事業部門スキンケア事業部ブランドマネジャーは「26年は、紫外線・暑熱ストレスから肌を守る社会課題解決アクションを、製品と結びつけながら企業・団体と協業し推進する」と述べた。
具体的には、「ビオレの冷サポート」事業に本腰を入れる。冷却シート“ビオレ 冷タオル”の特別梱(30本入り×8袋)を用意し、建設現場や運送業などを対象にカタログ販売を強める。特別梱は、今年から先行販売を開始し、清水建設やコカ・コーラ、イナズマロックフェス100社以上との取り組みを実施した。「27年までに“ビオレ 冷タオル”採用企業数を500社、BtoBの売り上げ規模を25年の20倍まで拡大。同製品全体の売り上げは25年の1.5倍を目指す」と意欲的だ。
UV市場の通年化でマーケティングが成功
「ビオレ」は日焼け止め市場で2021年以降、5年連続売り上げ1位(インテージ SRI + 日焼け止め市場20年8月〜25年7月累計販売金額&数量)を獲得する。市場環境も追い風となっており、花王調べによると、日焼け止め市場は2024年比8%増、19年比24%増と拡大。汗ふきシートも24年比1%増、19年比46%増に成長した。さらに、売れる期間は04年時点で8月がピークの「夏の三角形」から24年は4〜8月がピークの「通年型の台形」へと変化している。これら背景もあり、2月に発売した日焼け止め“水肌記憶UV”は発売3カ月で出荷本数が100万本を突破。汗ふきシート“ビオレ ゼロシート”の出荷金額が24年比で80%増、“ビオレ 冷タオル”が20年の発売以降累計出荷個数が1400万個を突破するなど、「ビオレ」の日焼け止め・汗ふきシートは過去最高の売り上げが現実味を帯びている。
売り上げ拡大の一因には、「ビオレ」が21年から導入した先行販売を経て全国展開を実施する2段階マーケティングスキームがある。初年度は一部店舗で先行販売し、売れ行き検証や製品課題の抽出、SNS・口コミで話題づくり、流通企業と陳列パターンなど売り場づくりを検証、といったPDCAを小規模かつ大胆に実行。その翌年に課題解決した状態で全国発売することで需給精度を高め、欠品を防ぎ、話題を最大化する仕組みを構築した。「テスト販売の期間を生かして精度の高い検証を行うことで、翌年の全国展開で成果を最大化できる。製品改良を素早く繰り返せるスピード感が『ビオレ』の強み」と手応えを語る。
新製品も2段階マーケティングスキームで展開
26年2月7日に発売する3品も、先行販売と全国販売を実行する。日焼け止め“呼吸感ベールUV”(70g、1430円※編集部調べ)は、今年3月に先行販売を実施。湿度に応じて膜の厚みが変化して水分を吸放湿する高抱水性ポリマーを配合したことで、湿度環境の変化にもベタつかず乾燥を防ぐ仕様が高評価を得た。現在までで60万本を突破し、出荷数は計画比1.5倍に。全国販売でさらなる売り上げ拡大を図る。
“ビオレゼロ 秒さらミスト”(60mL、970円 同)は外出先で汗のベタつきや服のはりつきによる不快感をすばやくケアするミストタイプの汗ふきアイテム。新しい汗ケア対応製品として、国内・アジアの一部チェーンストアで先行販売する。翌年のグローバル展開を見据え、汗ケア対応製品を日焼け止めに続く成長柱に育てる方針だ。また、24年3月に誕生した“ビオレゼロ 汗ベタ解放シート”(20枚入り、530円 同)は、汗の蒸散スピードを高めサラサラ感がより持続するようにリニューアル発売する。