当初は沈黙を保っていたLVMHだが、フランスの複数メディアが、ピエシュがLVMHの会長兼最高経営責任者(CEO)であるベルナール・アルノー(Bernard Arnault)、同氏の持株会社、ならびにグループを相手取り、数十億ドル規模の損害賠償を求める民事訴訟を提起していると報じたことを受けて、「複数の記事が、15年以上前のエルメス インターナショナル株式取得の経緯を再解釈しようとする根拠のない主張を伝えている」とコメント。「LVMHおよびその株主は、エルメス インターナショナルの株式をいかなる形でも不正に取得した事実は一切ないことを、あらためて強く表明する」と述べ、名誉を守るために法的措置を取る可能性に言及した。
ピエシュはエルメス創業家における単で独最大の家族株主だ。同氏以外の一族がLVMHによる潜在的な買収から会社を守る目的で全保有株を非上場の持株会社にロックアップしたのに対し、同氏がこれを拒否したことから、LVMHとエルメス間の攻防の中心人物となった。
ピエシュは仏週刊誌「レクスプレス(L’Express)」のインタビューの中で、今年7月に自殺した元資産管理人のエリック・フレイモンド(Eric Freymond)がピエシュの承諾なしにエルメス株の5.8%に相当する持分を売却していたことを後になって知ったと述べている。同氏の資産消失の疑いについては、フランスで別途進行中の刑事捜査の対象となっている。