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台湾文化を体感できるイベント”We TAIWAN” 大阪4会場の見どころ

台湾文化を体感できる複合型イベント”We TAIWAN 台湾文化 in 大阪・関西万博”が、8月2~20日まで大阪市内4会場で開催中だ。大阪・関西万博の開催に合わせて、台湾文化部と台北駐日経済文化代表処台湾文化センターが主催する。万博会場内では台湾企業が最先端技術を展示する「テックワールド」パビリオンを出展しているが、同イベントは台湾政府主導の取り組みとして、台湾の多様な文化や芸術の魅力を発信する。

本イベント開催について、台湾文化部の王時思(ワン・スエ)政務次長は「大阪万博が世界から注目されているタイミングであり、いのち輝く未来社会のデザインという万博のテーマと台湾が進めたい文化事業の理念が合致していることが開催の決め手になった」と話す。

コンセプトは”What a Miracle! 未来を応援する、奇跡の島”。アート、映画、文学、舞台、VRなど多様な分野のアーティスト38組以上が参加し、129件に及ぶ展示、パフォーマンス、体験型プログラムを展開する。2週連続で週末には大阪初となるマーケットイベント”タイワン プラス 2025 (TAIWAN PLUS 2025)”も開催し、台湾文化の多様性と創造性を多角的に紹介する。

「台湾人は台風や地震などの自然災害に日常的に直面しながらも楽天的で、困難に立ち向かう勇気を持っている。そして色彩豊かな島であり、宗教もにぎやかで活気がある。そうしたポジティブで楽天的な面を知ってほしい。テクノロジーのおかげで台湾という名前は世界に知られるようになったが、それ以上に台湾人の価値観や文化が私たちを幸せにしている」と、王氏は台湾人の精神性と文化の本質をアピールする。その上で「台湾の名前で国際的なイベントに参加できないことは遺憾だが、いつかその機会をつかみたい。政治的なプロパガンダや抗議ではなく、文化的なパフォーマンスやコンテンツを見せることで本当の台湾の姿を理解してもらえると考えている」と語った。

時代を超えた台湾の情感に触れる

会場は梅田のグラングリーン大阪内にある文化拠点「VS.」をはじめ、百年の歴史がある中之島の「大阪市中央公会堂」、2020年に開館した子どものための図書館「こども本の森 中之島」、公園を中心とした中之島エリアの4カ所。

メーン会場となるVS.では”台湾スペクトル”と題し、天井高15mの大空間を舞台に映像、音、インスタレーションが一体となった没入型アートが展示されている。ビジュアルシアター「台湾本色」では国立台湾美術館が収蔵する著名アーティストの作品を題材に、最新の映像技術を駆使して再構築。美術館や絵画の中を旅するような約15分間の没入体験を通じて、時代を超えた台湾の情感に触れることができる。

台湾の染織文化にフォーカスした展示”光織自然”では、染織工芸家の陳景林らが長年研究してきた植物染料の成果を披露する。天然染めの布と植物の写真を交互に並べ、ウォールのようにずらりと並べた。なかでも、台湾産天然藍で染めた陳氏の絞り染め作品”母なる台湾の河”は幅9m以上、制作期間3カ月半の大作で今回初公開。藍染が芸術創作の表現に使われることは珍しく、繊細で重層的な表現に、台湾の精神性を見ることができる。

3つめの空間「島嶼聲譜」は、宗教的要素を取り入れた現代アートで、台湾の日常の音風景を体感するインスタレーションを展開。市場や寺廟の喧騒、山林に響く鳥の鳴き声など、視覚表現と連動した音に耳を傾けることで、まるで台湾にいるかのような感覚を味わえる。また、台湾の民間信仰の現代化に取り組むアーティスト、李育昇はファッションデザイナーでもあり、台湾特有種の生物にインスピレーションを得た神獣のインスタレーションを披露している。

建築家の安藤忠雄氏が設計し、寄贈した「こども本の森 中之島」では、絵本展”台湾絵本、佮意啦(ガーイーラー)”を開催中だ。50冊の絵本を通じて、台湾の原住民や民間故事、生活、食文化、宗教、芸術工芸、自然を紹介する。また、台湾の名作絵本「トラババ(虎姑婆)」(8~10日)をダンスなどを交えたパントマイムで再解釈した舞台や、音楽と朗読を組み合わせた親子で楽しめるイベント(15~17日)も行われる。

”We TAIWAN”の言葉に込めた思い

大阪市中央公会堂では、台湾の文化とテクノロジーが融合した特別公演を多彩に展開する。VR機器を装着して参加する公演”フリーユアヘッド~脳を解放しよう”(15~20日)をはじめ、没入型短編映像「VR360作品上映プログラム『未来への遺産』」(11~20日)、厳選した10本の台湾映画やドキュメンタリーを上映する「台湾映画の輝く今と昔」(11~20日)、魔幻、霊異、神仙鬼怪の視点で台湾文学をひも解く「マジカル台湾―台湾文学展」(10~20日)など見逃せないコンテンツが目白押しだ。映画の上映前には、70年万博で台湾電影公司が制作した映画「万博追踪」の修復版映像も特別上映され、当時の万博の情景をスクリーンでよみがえらせる。屋外エリアでも台湾人形劇や神将パフォーマンス、ストーリー劇場「テリングテント」など興味深いイベントが用意されている。

本プロジェクトの締めくくりとして、26~28日の3日間、夢洲の万博会場でも台湾の寺廟文化を体現したプログラム「島の声―廟前の感謝の舞台」が上演される。

”We TAIWAN”という名称には、勝ち負けよりも共に楽しむという台湾人の価値観が込められているという。王氏は「台湾は小国であり、世界のリーダーになることもできない。だが、人を侵略したり、いじめたりすることも絶対にしない。誰一人世界から排除されるべきではないことをここで証明したい」と、イベントに込めた思いを語った。

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