毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年8月4日号からの抜粋です)
伊藤:東京コレクションを取材していると、「あのブランドは、あのアーティストのライブ衣装をデザインした」という話を聞きます。服飾専門学校でも衣装デザイナーになりたい学生が増えているという変化を耳にすることが少なくありません。衣装の世界はどんな人が活躍しているのか?と興味を持ち、特集を企画しました。衣装担当者のインスタグラムを見ると、アーティストがきっかけでデザイナーのファンになった人たちがコメントしている現象も珍しくありません。私ももともとアーティストの藤井 風さんの音楽を聴くうちに、スタイリストに注目するようになりました。「Hachikō」の衣装を手掛けた島田辰哉さんの仕事からはチームへのリスペクトを感じると共に、ステージというハレの場のためでありながら、ケの部分も絶妙に衣装に落とし込むバランス感覚にも驚き、取材を依頼しました。
スタイリストの裁量の大きさに驚き
佐藤:まさにチーム「藤井 風」が1つの流れを象徴していますが、今アーティストの衣装はスタイリストが作りたい世界観の服を集め、見つからなければ自分で作ったり、クリエイターに作ってもらったりして完成させています。スタイリストの裁量の大きさに驚きました。
伊藤:一方で、取材を通して「衣装業界には闇もある」という声も結構聞きました。エンターテインメントにおいて、衣装は真っ先に予算が削られる対象になりがち。納期が異様に短かったり、少額で学生に頼んだりすることもあるとか。そこで衣装用にレンタルも行っている「ドゥッカ ヴィヴィット」のデザイナー2人が相談しに行く形で弁護士にも話を聞きました。華やかな部分だけを扱うのではなく、そこを目指す若い人たちが悲しい思いをしないために必要な知識や心構えも網羅しました。
佐藤:僕は衣装デザイナーを目指す学生たちも取材しましたが、最初の動機には一様に、「衣装で〝推し〟の魅力を最大化したい」があるようでした。人のキャリアを作るぐらいの力があるんだと、改めて〝推し活〟の持つパワーを感じました。そういう意味でも今回の表紙は「まさに!」なものができましたね。