
旅の質が重視される今、気分や価値観に添い、心から満足できるホテルが求められている。今回は動くラグジュアリーホテルである豪華客船。1991年の初代飛鳥以来、34年ぶりの新造船就航でもあり、クルーズ業界でも注目の「飛鳥Ⅲ」が7月20日に横浜港から就航する。メディア初公開の見学会に参加し、そのラグジュアリーな空間を体感してきた。
まるで洋上のラグジュアリーホテル!
船内を歩くだけで心ときめく
横浜港大さん橋国際客船ターミナルのデッキから階段を上ると、あれ?もう船内なの?と驚くほどさりげなく乗船。ここが船の中とは思えない規模。なんてったってパブリックエリアは、DECK5からDECK13まで9フロアもあるのだ。そのまま中央へと進むといきなり視界が広がり、3層吹き抜けのアスカプラザ&レセプションが。このメーンアトリウムはシャンパンベージュを基調としたアースカラーの落ち着いた空間で、蒔絵の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝の室瀬和美氏による壮大な漆芸作品が飾られている。1層のラウンジはゆったりと、2層には画家、千住博氏の「ウォーターフォール・オン・カラーズ」を鑑賞しながら過ごせるギャラリーカフェ、3層には24時間営業のセルフドリンク型の「721ブックス&カフェ」で読書など、それぞれの目的や好みで過ごせる居場所となっている。
DECK5にはオールデイダイニングやバーのほか、ブティックやジュエリーショップが並び、ホテルのロビーらしい空間に。クルーズ船には珍しく生花を売るフラワーショップも。トラベラーズサロンではコンシェルジュのように寄港地での過ごし方を提案してくれる。DECK7にはクルーズ客船には珍しく生花を売るフラワーショップも。そう、クルーズ船は洋上のラグジュアリーホテルなのだ。
暮らすような船旅をかなえる客室は「最幸」のプライベート空間
移動と滞在がリンクしていることがクルーズ旅行の最大のメリット。無駄な時間はまったくなく、移動しながら食事し、楽しみ、睡眠をとる。そしてホテルそのものが動くので、荷物をその都度、運ばなくてもいいという気楽さもある。多くのクルーズ船では、移動費、宿泊費だけでなく、食事やアクティビティ参加費など、滞在中の主な費用はクルーズ代金に含まれているため、旅の予算も立てやすい。映画やショー、ヨガクラスなどの各種講座などイベントは盛りだくさんで実はコストパフォーマンスもよし。つまり急がば回れ!的に、かえってコスパもタイパもよく、満足できるのが船の旅なのだ。
なんといってもこの非日常感は得難い。「飛鳥Ⅲ」の全客室381室はすべて海側プライベートバルコニー付きで、大海原の絶景をそれぞれが満喫できる。客室には3つのクラスがあり、バトラーサービス付きの最上級客室ペントハウス、リビングとベッドルームが仕切られたスイート、機能性と快適性を重視したバルコニーに分かれている。中にはお1人様向けのソロバルコニーや 車いすでも快適に過ごせるユニバーサル仕様の客室も。
まずはファーストクラス感覚のペントハウス6室。客室というよりも、もう邸宅というスタイリッシュなインテリアで、寄港地観光ツアーやレストランの席料などが含まれる。最上級のロイヤルペントハウスには 、クリーニングや靴磨き、荷解きや荷造りなどを請け負うバトラーサービスもつく。バトラーによるウェルカムワゴンサービスや要望に応じてナイトカクテルもあり、クルーズ旅はさらに華やぐ!寄港地での個人手配なども請け負い、バトラーはコンシェルジュ、パーソナルアシスタントのような存在だ。2室のみの最上級のロイヤルペントハウスにはなんと専属のバトラーがつくという贅沢さ。
スイートのうち、ミッドシップスイートには各県の名産や伝統工芸を五感で楽しめる「ASKAⅢ meets 47都道府県」という客室も。ウェルカムドリンクにはその名産を使用したドリンクやお菓子が提供されるそう。なかには3人で滞在できる部屋もあり、家族旅、女子旅にも最適だ。
一番多い客室はバルコニークラスで、なかでもそのうちの271室を占めるアスカバルコニーは「CSI awards 2024」でベストステートルーム賞に選ばれた。明るい居住空間で、キッチンシンク付きのミニバー、L字型のウォークインクローゼットも完備。シンプルシックなインテリアも高級感がある。もちろんこのクラスにも個別のバスルームやトイレがある。そして「飛鳥Ⅲ」が斬新なのが、優雅に1人旅を満喫したいという需要に応え、ソロバルコニーというシングルの部屋が22室あることだ。デスクもソロ仕様のソファもあり、ここなら夢のワーケーションクルーズも実現できるだろう。
限られた空間だからこそ美食体験が最高の娯楽に
「飛鳥Ⅲ」には個性豊かな6つのレストランも。美食体験こそ、クルーズ旅の醍醐味! シグネチャーレストランの「ノブレス」は、素材を厳選したフランス料理「飛鳥キュイジーヌ」をディナーで提供。イタリア料理の「アルマーレ」、割烹料理の「海彦」など、グルマンもうなる至福の一皿をアーティスティックな空間で堪能するのもいい。5デッキに位置する「フォーシーズン・ダイニングルーム」は海を一望できるオールデイダイニング。デッキ11には世界各地の名物料理を楽しめるビュッフェ「エムズガーデン」、その一画にはディナーでだけオープンする「グリルレストラン パペンブルグ」が。オープンデッキで備長炭により焼き上げたグリル料理が絶品で、ライブ感のあるテラス席は盛り上がりそう。
ほかにも11デッキの中央にあるアルバトロスプールのバーや眺望を楽しむビスタラウンジ、12デッキの船尾のスカイテラスなど、さまざまな居場所があり、退屈とは無縁だ。むしろエンターテイメント性が高く、あわただしい旅になるかもしれないのでご注意を(笑)。
デジタル技術を駆使した映像とダンスパフォーマンスの融合によるパフォーミングアーツやカジノ、格調高いバーなど、ナイトシーンも充実。麻雀サロン「碧一色」など、ゲスト同士の交流もありそうなエンタメ施設も多く、寝る間が惜しくなりそうだ。(※カジノは有料。「飛鳥Ⅲ」は日本船籍につき、チップやコインを現金や記念品に交換することはできない)
「飛鳥Ⅲ」で特に注目なのがウェルネス&フィットネス設備
時代を反映し、強化されたのがウェルネス&フィットネスの設備だ。開放的なプールはもちろん、デッキには朝と夜はヨガやストレッチクラス、日中はバスケットやラケットボールなどに熱中できる屋外フイールドも。シミュレーションゴルフのスタジオもあり、最新のマシンをそろえた24時間自由に使えるジムやスタジオもある。エアリアルヨガなどのクラスや知的好奇心を刺激される講座なども開催され、にぎわいそうだ。プロムナードデッキはぐるりと周回でき、1周426m。まだ新しい木のデッキは木の香りがふわっと香り、自然の中でウォーキングしているような心地になれるのだそう。朝日を浴び、潮風を感じながらのジョギングは最高だろう。
汗をかいたら、DECK12にあるグランドスパへ。ここは船首に位置する展望大浴場・露天風呂で、針路を望み、バスタイムを過ごせるというスペシャルな空間。展望サウナもほかにはない贅沢さだ。
当初、このプランを出した時に、ドイツの造船会社、マイヤー ベルフト社は驚愕したそう。クルーズ船の中でも最も眺望がよいベストポジションにお風呂とは⁈ 日本人はクレイジーか!と。なるほど、納得。これは「飛鳥Ⅲ」が日本船籍のクルーズ船であるからこその選択。入浴をなによりもの娯楽と感じる日本人のニーズに合わせているのだ。この開放感、心地よさ、世界中の人に味わってほしい。日本各地の港で大型客船が停泊できる環境となり、インバウンド需要も高まっている今、展望風呂は豪華客船の新たなるスタンダードになるかもしれない。
航海するホテルは海上のギャラリー 各所でアート鑑賞できるのが画期的
「飛鳥Ⅲ」の特徴の1つは海上のアートギャラリーでもあるということだ。室瀬和美氏によるアスカプラザの高さ8.8m、幅3mの壮大な漆芸作品「耀光耀瑛(ようこうようえい)」など、階段や通路などのパブリックスペースの壁面全面に飾られたアートは圧巻だ。
各レストランやラウンジ、客室では平松礼二氏や土屋禮一氏、岩田壮平氏をはじめとする日本を代表する日本画、初代「飛鳥」と「飛鳥Ⅱ」の船内を彩ってきた田村能里子氏の色彩豊かな壁画も飾られている。船内を歩けばアートに出合えるのだ。
なかにはニューヨークを拠点とする画家、千住博氏の壁面アート「ウォーターフォール オン カラーズ」や「飛鳥Ⅲ」をモチーフとした、リト(りと)氏の葉っぱの切り絵も展示。メディアでおなじみのあの作品を間近で鑑賞でき心が躍る。
アートは眺めるだけではない。約80作品もの工芸作品が飾られたショーケースが船内には点在し、作品を購入することも可能。ブックカフェには画集や伝統工芸に関する書籍も多く、日本の工芸作品について学ぶのもいいだろう。
アスカプラザの漆芸作品は、イベントの際には艶やかに輝くゴールドの漆芸に光を当て、時には赤く輝く夕陽のように、時には夜空に浮かぶ満月のように表情を変える。「飛鳥Ⅲ」の船内では生きた芸術を体感できる。
寄港地は日本が誇る各名所 韓国やグアムへも航海予定
クルージングする航路は、北は函館・小樽から、南は長崎、鹿児島、沖縄と日本各地。日数も4日間の駿河クルーズ、鳥羽・蒲郡クルーズから、12日間の日本一周までさまざま。出発港も横浜以外に、博多発、神戸発、大阪発、名古屋発もあるので、選択肢は広い。また横浜発・大阪着などの移動型クルーズもあり、目的地の滞在時間や復路往路を電車や飛行機にするなど、旅のスタイルが広がるのも楽しい。これぞクルージング!
7月の「飛鳥Ⅲ」就航により、今後は「飛鳥Ⅱ」との二隻運航に。「飛鳥Ⅲ」がラグジュアリーを極め、自分好みで楽しめるパーソナライズされたクルーズライフだとしたら、「飛鳥Ⅱ」はゲストの好みに寄り添うような旅を提案。2日間のワンナイトクルーズからプランが展開し、グループサウンズや80年代ディスコ音楽、ディナーショーなどテーマ性の強いイベントを展開し、クルーズ旅のすそ野を広げる。