パリを拠点とし、6月に日本へ上陸したアイウエアブランド「ジミー フェアリー(JIMMY FAIRLY)」の共同創設者サシャ・ボストニ(Sacha Bostoni)はこのほど、ビューティブランド「ファーン(FIRN)」を立ち上げた。スキンケアからスタートし、年内に他カテゴリーへの展開や直営店のオープンも予定している。
「“良いプロダクト”“良いブランド”“適正価格”という3つを満たせば、何だってできる」。そう語るボストニ「ファーン」最高経営責任者(CEO)は、「ジミー フェアリー」の創設から15年を経て、再びD2Cモデルでの挑戦に乗り出した。
氷河の微生物と高山植物から独自成分を開発
「ファーン」は、ボストニCEOが南フランスでの農場生活を通じて出合った化粧品原料から着想した。ブランド名は、「氷河で再結晶化した雪」を意味するスイス・ドイツ語に由来する。
開発にあたり、アルプスの幹細胞研究で知られるフレッド・ズュリ(Fred Zulli)博士とタッグを組み、「サーティ・デイズ・ステムセル・コンプレックス(Thirty Days Stem Cell Complex以下、STM30)」という成分を生み出した。アルペンローズとスイスの氷河に生息する微生物由来の幹細胞培養液を組み合わせ、シワやくま、乾燥などにアプローチする。肌細胞のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の生成を促す効果も期待されている。
高性能な製品を手に取りやすい価格で販売
第1弾は、“マルチコレクティブ クリーム”(50mL、55ユーロ=約9300円)と5種のセラム(15mL、25〜29ユーロ=約4200〜4900円)を発売。全製品にSTM30を配合している。ロレアル(L’OREAL)やパリ発スキンケアブランド「ティポロジー(TYPOLOGY)」で経験を積んだクレマンス・ドゥ・スタバンラート(Clemence de Stabenrath)がプロダクトディレクターを務め、自然由来成分を85〜99.9%配合する処方設計にこだわった。売り上げの1%は農業支援の非営利団体に寄付する。
ボストニCEOは、「本当に高性能でありながら、手ごろな価格の製品には可能性がある」と語る。「バッグでいえば『ポレーヌ(POLENE)』、ファッションなら『セザンヌ(SEZANE)』、アイウエアでは『ジミー フェアリー』が良い例だ。コスメでは、『ファーン』がその座を狙う」。「ファーン」は、仲介業者を挟まないことで価格を抑えた。ボストニCEOは、化粧品業界を“マーケティング”ではなく“プロダクト”の産業として捉えており、「『ファーン』はマーケティングに頼らない」と話す。
ブランディングを手掛けるのは、ランジェリーブランド「ガールズ イン パリ(GIRLS IN PARIS)」のラファエル・フール(Raphaele Four)創業者。クリームの容器は、1970年代のランプに着想を得たベークライト風のドーム型を採用した。
年内に直営2店舗をパリにオープン予定
「ファーン」はまず、クリーンビューティのコンセプトストア「オー マイ クリーム(OH MY CREAM)」のオンラインストアで独占販売を開始し、9月には自社ECサイトもローンチ。11月にはパリ市内に2つの直営店をオープンする予定だ。
「『ジミー フェアリー』で学んだ“唯一無二のリテール体験”を、ビューティの世界でも実現したい。今のビューティ市場には、それが圧倒的に欠けている」とボストニCEOは語る。スキンケアのほか、ヘアケアやボディーケアなど複数のカテゴリーへ展開予定で、ブランドとしての長期的成長を見据えている。
本文中の円換算レート:1ユーロ=170円