ファッション

パリ発アイウエアブランド「ジミー フェアリー」が初上陸 23歳で立ち上げたブランド創設者が日本市場への挑戦を語る

多くのラグジュアリーブランドが低迷するなか、それらと比べて手の届きやすい価格帯で勝負するパリ発ブランドが世界的に好調を示している。その好例の一つが、パリを拠点とするアイウエアブランド「ジミー フェアリー(JIMMY FAIRLY)」だ。同ブランドは、日本市場参入をきっかけにアジアでのビジネスを拡張させたファッションブランドの「セザンヌ(SEZANE)」や、レザーバッグの「ポレーヌ(POLENE)」に続くように、今月日本に初上陸。7月8日まで、日本初となるポップアップを伊勢丹新宿店メンズ館1階で開催している。

「ジミー フェアリー」は、2010年にフランス人起業家アントナン・シャルティエ(Antoin Chartier)によって設立された。ウィメンズのメガネとサングラスからスタートし、25年春夏からメンズラインを開始。販路は自社ECと直営店舗のD2Cモデルで、現在、ヨーロッパで140店舗以上を構える。“手の届くハイクラス”というコンセプトのもと、高品質なアイウエアを約2万円台の価格帯で提供。各モデルの生産数を絞って約2カ月ごとに新作をリリースし、長く愛用できるクラシカルなアイテムから、トレンドを取り入れたものまで豊富なデザインを取り揃える。日本でのポップアップではロングセラーモデルや新作など、100型以上のアイウエアをラインアップした。

今やパリジェンヌの定番アイウエアとなっている「ジミー フェアリー」。当時23歳という若さでブランドを立ち上げた、創設者シャルティエに、ブランド誕生の背景から日本市場進出の狙い、今後の展望について話を聞いた。

ーー若き起業家として、創設当時なぜアイウエア業界に可能性を感じたのか?
「ジミー フェアリー」のアイデアは2010年、パリの学生寮の自室で生まれた。23歳で心理学を専攻していた私は、何か美しく、役に立ち、意味のあるものを創造したいという思いに駆られていた。父は営業職、母は環境省勤務という家庭で育ち、起業への意欲と社会に良い影響を与えたいという使命感が根付いていたのだ。 

ある日、メガネが必要になり近所の店舗に入った際、疑問がわいた。どうしてこんなにシンプルな製品がスマートフォンと同じくらい高価なのか。手頃な価格で美しいメガネをつくることはできないのか。アイウエアを買う体験をもっと刺激的でワクワクするものにできないか。そこからすべてが始まった。

私はビジネスモデルを根本から見直し、パリでデザインし、丁寧に製造し、自社店舗で直接販売する体制を構築した。店舗はブランドの世界観そのものであり、温かみがあり洗練され、親しみやすい規模感を追求した。コンセプトは明快だ。ファッション性と高品質、適正価格、そして確かな個性を備えたアイウエアをつくることに注力している。

ーーブランド名「ジミー フェアリー」の由来は?
誰にでも響く、国際的で覚えやすく、意味のある名前を追求した。“フェアリー”は公正な価格設定、完全な透明性、D2Cモデルへの揺るぎないコミットメントを示す。“ジミー”は時代を超えたアイコン、ジェームズ・ディーン(James Dean)へのオマージュであり、スタイルと自由の象徴だ。つまり、スタイリッシュで手に取りやすく、誠実で人間味のあるブランドを体現した名前といえる。

ーーアイウエア業界の激しい競争の中で成功した秘訣は?
「ジミー フェアリー」では、すべてが顧客体験から始まる。あらゆる段階で一貫して素晴らしい体験を提供することが目標だ。D2Cモデルはその中核にあり、企画から流通まで自社で管理することで、中間マージンを排除し、高品質を保ちながら適正価格を実現している。“手の届くハイクラス”というコンセプトを掲げ、最高級素材を用いながらも価格を抑えられるのは、D2Cモデルの採用にある。

この顧客との直接的な関係性が信頼を生み、機敏な対応力と成長の加速に繋がっている。さらに店舗の存在も欠かせない。店舗コンセプトは社内チームが緻密に設計し、大理石やオニキス、無垢材など最高級素材をふんだんに使っている。温かみがあり居心地よく、アクセスもしやすく、洗練された空間は、すべて顧客に“Wow!”と思わせるためのこだわりだ。

ーー事業が軌道に乗るまでの重要な転換点はあったか?
もともとはオンライン販売が中心だったが、2012年にパリのヴィエイユ・デュ・タンプル通りに初の実店舗を開設。そこでは1か月の売上がオンライン累計に匹敵し、顧客との直接的な接点の重要性を改めて認識した。

パンデミック時、多くの企業が苦境に立たされたが、アイウエア店は“生活必需品”として営業を継続できた。営業時間は短縮したものの、顧客の信頼と忠誠心に支えられた。結局のところ、私たちの強みは顧客との深い絆にある。

ーー日本市場への印象は?
日本進出は国際成長戦略の一環である。日本は独自の強い文化と美学があり、学ぶことが多い。 要求水準は高いが、それが私たちのブランドをさらに進化させてくれる。

ーー日本の需要はヨーロッパと異なるが、伊勢丹での初ポップアップで提供する商品と選定基準は?
日本市場は細部へのこだわりが強い。私自身も日本の美学やファッション感覚を敬愛している。東京とパリは、控えめで洗練されたエレガンスや美意識に共通点がある。伊勢丹の初ポップアップでは、ユニセックスで誰にでも似合うベストセラーを軸にしつつ、ファッション性の高い個性的なモデルも厳選した。無理に押し付けることなく、手頃さ、強い美学、地域の期待に応える配慮を大切にしている。

ーー日本・アジア市場での戦略は?
伊勢丹は日本を代表する百貨店であり、提携は大きなチャンスだ。選りすぐりの場に招かれたことは光栄である。プレミアムなブランド世界観を自然に日本へと持ち込みつつ、現地文化や商習慣を学びながら柔軟に対応し、テスト&ラーニングに取り組みたい。

ーー今後の展望は?
今後は「ジミー フェアリー」の国際展開を加速させることが最大の目標だ。ヨーロッパで築いた150店舗の基盤をもとに、今年秋にはニューヨークに旗艦店をオープンする予定である。これは大きな一歩となる。 高品質で洗練されたプロダクトとデザインを新市場に届け、野心的かつ着実に歩みを進めていきたい。公正な価格、明確な美学、顧客との近さ、そして常に顧客に“Wow!”と思わせるという信念を、今後も守り続けていく。

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