ロンドンは厳しい経済状況も相まって内向き思考が強まる中、2025-26年秋冬シーズンは「英国スタイル」の原点に立ち返るクリエイションが目立った。かっちりとしたアイテムを柔らかなテクスチャーで表現し、シルエットの妙によって伝統をほぐした新しい英国スタイルが生まれている。(この記事は「WWDJAPAN」2025年3月10日号からの抜粋です)
今シーズンは、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」はじめ、日本でも知名度のある主力ブランドがショーを見送り、会期は従来よりも1日短縮された。盛り上がりに欠けるシーズンだったことは否めないが、それでも新しい表現方法で社会にメッセージを発信しようとする現地の熱気は健在だった。
「英国のファッション・シーンは、厳しい局面を迎えている」。英国ファッション評議会(BFC)のキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)最高経営責任者(CEO)は、開幕スピーチでそう語った。ラッシュCEOは取材でその理由について、「EU離脱の影響が看過できない」と話す。観光客向けの免税制度の廃止による小売りの低迷、EU域内の移動制限による労働力不足、輸出入のコスト増など、英国のファッション産業には多くのネガティブな影響が及んでいる。また、「かつてはインディペンデントなデザイナーの服を扱う際、小売店が前金を支払って製造を支援していたが、今はそうしたリスクを小売り企業は取りたがらない。これが特に若いデザイナーの成長の障壁になっている」とも述べた。
こうした状況下でBFCは、特に新人デザイナーを支援する「ニュージェン(NEW GEN)」や、中堅ブランドの資金援助を目的とした「ファッショントラスト(The BFC Fashion Trust)」といった施策を継続し、才能をサポートしてきた。今季、「ニュージェン」枠でショーを開催した「リューダー(LUEDER)」や「パオロ クラザナ(PAOLO CARZANA)」といった若手は、フレッシュなクリエイションの力を求める世界のファッション関係者の期待に応えた。
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