「アンダーカバー(UNDERCOVER)」は3月4日、パリ・ファッション・ウイークでブランド設立35周年を記念した2025-26年秋冬コレクションのショーを開催した。今季の出発点となったのは、高橋盾デザイナーが“私的ベスト・コレクション“と考える04-05年秋冬コレクション。それは、アン・ヴァレリー・デュポン(Anne-Valerie Dupond)が生み出す独創的なぬいぐるみとミュージシャンであるパティ・スミス(Patti Smith)のスタイルから着想を得たもので、スミスがぬいぐるみのような手作り感満載の服を着ていたら…という発想をもとに試行錯誤して作り上げたデザインだったという。そんな約20年前のコレクションを、今の時代感と大人のカジュアルスタイルで生まれ変わらせることを今季のテーマに据えた。
「アンダーカバー」らしさを日常着に
「服のユニークさと完成度、そしてショーのバランスという点で、一番自分らしいクリエイションができた」と当時のコレクションを振り返る高橋デザイナーは、「ノスタルジックではなく、昔と同じテーマを用いたけれど全く新しいもの。最近は常に自分のクリエイションや『アンダーカバー』らしいデザインをリアルクローズに落とし込みたいという思いがある」と明かす。その言葉通り、今季のコレクションは、日常着がベースとなった。
ショーは、きらびやかな金の装飾があしらわれた白いテーラードのセットアップに、デュポンに制作を依頼したスカルポシェットとシューズを合わせたルックからスタート。その後は、「チャンピオン(CHAMPION)」との協業によるスエットパンツやフーディーやスエットシャツをはじめ、カーディガンやセーター、テーラードジャケット、フリースのプルオーバー、パファージャケット、ウォッシュドジーンズ、ミリタリーやワークウエア由来のアウターなどをミックスして、リラックス感のあるカジュアルスタイルを提案する。ただ、縫い目がうねるようにカーブを描いていたり、そこからタグが飛び出していたり。ボタンのサイズやデザインはバラバラで、ジャケットやコートの背中の丈は左右で段違いになっている。そんな不完全さや歪さの中に美を見出すアプローチは、デュポンの作風と高橋デザイナーの美学に共通するものだ。
20年を経て、より洗練されたスタイルへ
そして中盤には、04-05年秋冬のアーカイブジャケットを用いた3つのルックが登場した。同じ世界観とタイムレスな美学がありながら、見比べてみると、当時のアイテムはビンテージ感のある生地の切り替えやコントラストの効いたステッチ、ふんだんな装飾など手作り感が強い。そこから20年以上が経った今、成熟した高橋デザイナーが生み出したスタイルは、大人の女性に向けてより洗練されたものになった印象を受ける。
ファンタジーを感じるラスト
終盤に披露したのは、日常からは少し離れ、デュポンがモチーフとして用いる動物と高橋デザイナーの描くファンタジーが融合したドラマチックな作品群だ。ボリュームたっぷりのパファードレスは、テディベアから着想を得たもの。フィット感のあるミニドレスは無数のボタンで飾られ、背中には小さな翼が生えている。そして最後は、袖や首まわりに羽根を模したパーツがあしらわれた白と黒のテーラードルックで、空を舞う鳥の自由なイメージを明るさとダークさという「アンダーカバー」らしい二面性を含めながら表現。デュポンが手掛けた独創性あふれるシューズがルックを完成させた。
「アンダーカバー」は今後、ウィメンズでのショー開催を続けていく予定。来シーズンのパリでは、アニバーサリーを祝うパーティーも開くことも検討しているという。