ピーター・コッピング(Peter Copping)新アーティスティック・ディレクターによる新生「ランバン(LANVIN)」が2025-26年秋冬コレクションを発表した。来年60歳のピーターは、2010年代には「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のトップを務め、直近は「バレンシアガ(BALENCIAGA)」でオートクチュールのチームをリード。彼は自身のキャリアを存分に活かし、コンテンポラリーな要素を加えながら、1920年代という「ランバン」にとっての黄金期を再解釈してメゾンの再興を試みた。世間にとっての「ランバン」は、アルベール・エルバス(Alber Elbaz)やルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)による2010年前後のイメージが強く、ココ・シャネル(Coco Chanel)やポール・ポアレ(Paul Poiret)と共に活躍した創業デザイナー、ジャンヌ・ランバン(Jeanne Lanvin)のイメージは薄い。加えてエルバスとルカの退任後はビジネスでもクリエイションでも迷走し、再起においてはアイデンティティーの再定義が欠かせない。そんな中でのジャンヌが活躍した20年代を思わせる流動的なシルエットと、クラシカルで気品漂うベルベットやベロア、シルクサテンの生地を根幹に据えたコレクションは、野心的ながらベテランの経験に裏打ちされ、再興への確かな一歩を感じさせた。
ウィメンズ、メンズともに
直線的一辺倒から脱却
頻繁に登場するドレスは、生地をバイアスに裁断したり、タックを入れてドレープを効かせたり、生地を贅沢に使ったり、時には少し捻ったり手繰り寄せたりで流動的なシルエットを描く。ダイヤモンドや、唐草のようなボタニカルなどの柄は控えめ。主役はあくまで生地の動きだ。ウオッシュドシルクをバイアスに使ったり、細長く切り裂いてカスケード状に繋げ直したりのドレスは、エルバスのクリエイションを思わせる。前任のブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)時代と比べると、パターンは格段に豊富。柔らかさを手に入れ、直線的なシルエット一辺倒だったムードから脱却した。
メンズも、正統派のクラシカルなムードだ。端正なチェスターコートやタートルネックのニット、ソルト&ペッパーなヘリンボーンなどでクラシカルなムードを発信しながら、カーブを描くニットやパンツ、オーバーサイズのコートなどを加えてコンテンポラリーに仕上げた。
実質3カ月の準備期間を考えると、ファースト・コレクションは上出来。じっくり半年クリエイションに向き合える次回は、バッグにプレタポルテ同様の柔らかさが加わることを期待したい。