
アパレルは、彼らをなくして語れないー。そう言い切れるほど、企画・生産において重要な働きをするのがOEM(相手先ブランドの生産)とODM(相手先ブランドの企画・生産)の事業者たちである。商社が巨大プレーヤーとして君臨する領域だが、中小の専門企業も独自の存在価値を発揮し、生き残っている。本特集ではそんなOEM・ODMのスペシャリストたちに焦点を当て、彼らの仕事ぶりやビジネスパートナーから信頼を受ける理由、そして近年の進化について掘り下げる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月2日号からの抜粋です)
OEM・ODM会社は、アパレルメーカーと工場をつなぐ中間業社として、さまざまな役割を果たしている。ただその仕事の内容に関しては、特に学生たちにはイメージがつきにくいだろうし、実際にアパレル業界で働いていたとしても、完全に理解できている人は少ないだろう。
OEM・ODMを専業とするサントラージュの小林正幸社長は、「僕たちの仕事は、アパレルと工場の“翻訳者”」と表現する。服のアイデアを、工場技術者が理解できる仕様書に落とし込むための専門知識。技術力のある工場を探すネットワーク。商品を量産販売して、予算にはめ込む調整能力。デザイナーと工場の間のコミュニケーションには必要なスキルやノウハウがいくつもあるのだが、それらを有し、橋渡しできるのがOEM・ODM会社なのだ。そうしてでき上がった商品の小売価格の数%が、OEM・ODM会社のマージンになる。アパレルのサプライチェーンに不可欠な存在でありながら、非常に泥臭い商売だ。
OEM・ODMにおいて、繊維商社の存在は巨大である。彼らは2000年代にファストファッションブームの中、原料から製品へと本格的にビジネスの軸足を移し、今では年間数百億〜数千億円の売上高の大部分をアパレルのOEM・ODMで稼ぐ。連結売上高577億円(2024年2月期)の繊維商社タキヒヨーは、年間でアパレル製品を約4500万点納品している(同社発表資料による)。かたや、年商40億円と専門業社としては「有力」といえるケイズプランニング(東京、北畑秀樹社長)であっても、年間生産数は約500万枚(同社推計)と、かなり規模の差がある。あるODM・OEM専門会社の社長は、「この商売は競合だらけのレッドオーシャン。すんなりと好条件の契約にありつけることはない。契約金額をどれだけ抑えられるか、どれだけサンプルの提案数を提案できるか、というタフな勝負を続けるしかない」と漏らす。
競争激化の中、
OEM・ODMを超えた価値提供
競争に負けたOEM・ODM専門会社は消えていった一方で、したたかに生き残るプレーヤーもいる。彼らは独自の武器を磨いて、アパレルメーカーの欠かせないパートナーになっている。例えば、OEM・ODMを起点に、3DCGでのサンプルやルックブック制作で取引先のコスト削減を手助けし、メタバースを活用したサービスを構想するレオン・インターナショナル。アニメやスポーツなどアパレル「以外」の取引先を開拓して、アパレルメーカーとさまざまなIP(知的財産)を結びつける、新たな「橋渡し」をビジネスにするサントラージュなどが好例である。
彼らの取り組みは、単に「発注を受けて服を納品する」以上の付加価値提供につながり、アパレルメーカーから信頼される理由になっている。取材の冒頭では「日の目を見ない、地味な存在」と自嘲気味だった彼らも、深掘りを続けるうち、「アパレル業界の役に立ち、一緒に未来を作っていきたい」という強い思いがにじんだ。
この特集を特に読んでほしいのは、まずアパレル業界への就職を目指す学生たち。シビアな納期やコスト管理に追われるタフな仕事ではあるが、OEM・ODMがアパレルの醍醐味を味わえる仕事でもある。そしてアパレルの企画担当者たちだ。消費者ニーズがますます多様化し、見通しがきかなくなるアパレル業界を、二人三脚で走る頼もしいパートナーを見つけられたら幸いだ。