ファッション

「チカ キサダ」は“パンク・バレエの革命児”の精神を乗せて 日常要素の融合

幾左田千佳による「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」は9月6日、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で2025年春夏コレクションを発表した。コレクションタイトルは“陶酔”や“酩酊”を表す「intoxication」だ。

幾左田デザイナーが敬愛する、パンク・バレエの革命児マイケル・クラーク(Michael Clark)の精神が満ちているようだった。クラークは、バレエのメインストリームに対抗し、1980年代に斬新な衣装とダンスで一世を風靡した人物だ。幾左田デザイナーはこれまでにも増して、より日常的な要素を意識しているようだ。

カジュアルとスポーティーとパンクと
要素のマッシュアップで観客を陶酔

会場は、無駄を削ぎ落とした薄暗い空間。スポットライトを浴びたチェリストが一人座り、弦を指ではじいて拍動のようなテンポで低音を刻み始めると、グレーレースのレオタードをまとったモデルがゆっくり姿を現した。髪は乱れ、真っ赤な口紅をひき、鼻にはシルバーのピアスといった出立ちだ。ブランドアイコンであるチュールは、シャツやパンツ、ドレスに全面的に用いたほか、ジャケットをベールのように覆ったり、切り替え素材に使ったり、スポーティーなボディーバッグを装飾した。

舞台上の優美に振る舞うダンサーは、影で過酷なトレーニングを積んでいる。頻出するビスチエやブラ、クロシェニットからのぞかせたクリノリンは、その表象で、通常表に出ることはない存在だ。そしてシューズやバッグ、ドレスに落とし込んだ鮮やかな赤色は、バレエダンサーの踊り続けることへの執念を感じさせた。

カジュアルな素材使いも印象的だった。異彩を放ったのがナイロンコーチジャケットと、同素材のハイウエストショーツだ。スポーティーに振り切ったアイテムで、モデルが中に着た黒レースのフェティッシュなトップスと対比させた。さらに、バムフラップやダメージ加工を施したジャケット、レオタード、パンツなどにはデニムを用い、エレガンスとカジュアル、パンクの要素を絡み合わせた。

チェロの演奏が終わると、観客席から大きな拍手が上がった。コレクションの気迫に押されて“陶酔”していたゲストが、一気にわれに帰ったようだった。エレガンスに加え、日常のさまざまなムードを巧みに融合した。

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