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連載 エディターズレター:MARKET VIEW 第36回

百貨店で働く人の「正月休み」はどうなる?

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百貨店で働く人の「正月休み」はどうなる?

夏の盛りにお正月の話です。百貨店の正月営業の見直しが相次いでいます。

長らく百貨店は1月1日(元日)だけ休業にし、2日から初売り営業するのが常識でした。それが今年、松屋が旗艦店の銀座本店で元日・2日の2日間を休業にし、初売りを3日に遅らせました。来年の正月は高島屋と大丸松坂屋百貨店がこれに続きます(一部店舗除く)。元日・2日の2日間を休業にするのは、松屋が24年ぶり、高島屋が23年ぶり、大丸松坂屋が25年ぶりです。

3社はいずれも労働環境の改善を理由に挙げています。小売業は慢性的な人手不足。一般的な会社員であれば年末年始に1週間前後の休みがあるのに、百貨店やショッピングセンターの従業員は大晦日まで働き、元日だけ休んで、2日から出勤する。たとえ他のタイミングで休みが取れたとしても、年末年始に休めない労働環境は雇用の足枷になるでしょう。

消費環境も変化しています。かつて百貨店にとって正月の初売りは年間で最も稼ぐ日でした。各売り場では趣向をこらした福袋を用意し、また冬物衣料のクリアランスセールの初日でもあるため、お得な商品を目掛けて長い行列ができました。財布の紐はゆるみ、両手にたくさんの買い物袋を下げて帰るお客さんが多く見られました。

今も初売りはかき入れ時ではありますが、かつてほどではありません。福袋は予約してEC(ネット通販)でも買えるようになったし、セールもブランドのECなどで先行して行われるようになり、消費が分散したと言われています。売上高日本一の伊勢丹新宿本店も以前は初売りが年間で最も稼ぐ日でしたが、今は外商顧客限定の催事「丹青会」の日の売り上げがそれを上回ります。

大都市の百貨店ならインバウンド(訪日客)の追い風もあります。年間を通じて考えれば、収益は十分穴埋めできるという読みもあるでしょう。それよりも従業員が離れてしまうことの方が長期的な痛手になる。

ただ2日間の休業もまだ短いと思います。そもそも百貨店は1990年代半ばまで三が日を休んでいました。ショッピングセンターや専門店など、さまざまな業態が元日営業に踏み切る中、少しでも売り上げを伸ばそうと初売りを早めた経緯があります。

約30年に及ぶデフレの波にのまれていた百貨店ですが、近年は高付加価値な商品とサービスという本来の立ち位置に回帰しつつあります。正月に従業員をしっかり休ませ、リフレッシュさせた上で、ホスピタリティの向上につなげるのは自然の流れでしょう。

百貨店業態ではありませんが、丸井は2023年から三が日を休業にしています(一部店舗除く)。青野真博社長の言葉が印象に残っています。「売り上げとワークライフバランスをトレードオフでは考えていない。スタッフの働きやすさのために減収に目をつむるなら、結局は長続きしないだろう。スタッフのウェルビーイングが向上しても、取引先や株主の利益を損なうことになる」――。

休業しても収益をしっかり確保できる知恵や工夫も必要になります。

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