ファッション
連載 今週の学生に読んでほしい記事3選 第31回

ミケーレの新生「ヴァレンティノ」に期待大の理由 異例の新ブランドや「クラネ」躍進も読み解く

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この連載は週に一度、「WWDJAPAN Digital」に掲載した記事から学生に読んでほしいものを厳選し、記者のコメント付きで紹介するものだ。今回は、アレッサンドロ・ミケーレの「ヴァレンティノ」新クリエイティブ・ディレクター就任や、木村由佳デザイナーによる新ウィメンズブランド「ムッシャン」のデビュー、京都高島屋S.C.に出店した「クラネ」の3つの記事を掘り下げる。ニュースの読み方を知るとともに、面接やビジネス会話のヒントになれば幸いだ。

【記事1】
元「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレ
「ヴァレンティノ」新クリエイティブ・ディレクターに就任

ヴァレンティノ(VALENTINO)」は3月28日、2022年11月まで「グッチ(GUCCI)」を率いてきたアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)を新たなクリエイティブ・ディレクターに迎えることを発表した。先週退任が発表されたピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)の後任となる。社内発表によると、ミケーレは4月2日付で着任。9月のパリ・ファッション・ウイークで披露予定の25年春夏コレクションでデビューを飾る。(全文はこちら

【記者の解説】

ファッションブランドにおいて、クリエイションとビジネスは両輪であり、売り上げを伸ばすためには両者の価値観が一致することが重要だ。そういった意味で、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のビジネスサイドからすると、前任者であるピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)の方向性が、CEOらが求めるものと合致しなくなっていたのだろう。ピエールパオロは、オートクチュールをはじめ、美しいウエアのデザインで高い評価を得てきたが、ラグジュアリービジネスの鍵を握るレザーグッズは最近、話題性に欠いていた。そのため、2010年代後半に「グッチ(GUCCI)」を改革し、その売り上げをウエア、レザーグッズ共に急拡大させた実績を持つアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)に白羽の矢が立ったと考えられる。

「ヴァレンティノ」はパリコレでショーを発表しているが本拠地はイタリア・ローマであり、アレッサンドロもローマ出身。芸術を愛した父と映画業界で働いていた母を持ち、過去のインタビューではローマやフィレンツェの芸術や哲学への関心の高さなどが何度も語られている。ミケーレが手掛ける「ヴァレンティノ」のオートクチュールはきっと華やかでメッセージに富んだものであり、ファッションやレッドカーペットシーンのみならず、オペラなどのアートにも絶大な影響を与えるだろう。大げさでなく、ルネッサンス再び!な予感だ。(向千鶴/執行役員「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクター)

【記事2】
個性むき出し新ブランド「ムッシャン」
「M A S U」親会社がウィメンズ市場参入

「M A S U」を運営するソウキ(SOHKI)は、ウィメンズブランド「ムッシャン(MUKCYEN)」を2024-25年秋冬シーズンに立ち上げる。デザイナーはヨウジヤマモトの企画チームで約4年間経験を積んだ木村由佳で、ブランド名「ムッシャン」は“木村”の中国語読みを元にした造語だ。ブランド名には、日本生まれ、中国育ちのデザイナーの「意味のない抽象的な言葉に、今後は意味を与えていきたい」という決意を込めている。(全文はこちら

【記者の解説】

新人デザイナーが完全に自己資金でブランドを立ち上げる場合、コレクションの型数は約20前後でデビューすることが多い。機屋や縫製工場との関係性もほぼゼロから構築しないといけないため、最初はクオリティーコントロールも簡単ではない。その点、木村由佳デザイナーが手掛ける「ムッシャン(MUKCYEN)」は母体が縫製事業を行うソウキ(SOHKI)のため、デビューから44型というボリュームで、サンプルの仕上がりも安定していた。ソウキにとっては自社の技術をアピールできる事業であり、木村デザイナーにとっては純粋なアイデアをかたちにしやすい環境といっていいだろう。運営の主導権はあくまでソウキにあるため、今後市場に浸透させるためには、デザイナーとのさらなる信頼関係構築が必須だ。「オーラリー」も、もともとは生地問屋クリップクロップの強みを生かした自社ブランドとしてスタートしているため、「ムッシャン」も成功の可能性は十分ある。(大塚千践/副編集長)

【記事3】
「クラネ」が京都高島屋S.C.本館1階にオープン
「ブランドの新たなステージへの一歩」

松本恵奈が社長・ブランドディレクターを務めるクラネデザインの「クラネ(CLANE)」は20日、京都高島屋S.C.本館1階に新店舗をオープンした。売り場は約50平方メートルとコンパクトではあるものの、衣料品カテゴリーにおいては海外ハイブランドの独壇場である都心百貨店の1階に店を構えた意味は大きい。この日店頭に立った松本は、「ブランドが新たなステージへと一歩を踏み出せた」と手応えを話した。(全文はこちら

【記者の解説】

「クラネ(CLANE)」は、昨年11月にルミネ新宿2の館の単日売上高記録(3760万円)を樹立、2024年1月期の売上高はコロナ前の3倍となる40億円に到達するなど、ウィメンズのリアルトレンドを語る上では欠かせないブランドになった。運営会社クラネデザインの社長でもあるクリエイティブ・ディレクターの松本恵奈は、仲間とともに一枚岩のチームを作り、顧客さえ巻き込んで「クラネという輪」を広げている。カリスマ的な側面ばかり注目される松本だが、今後は“経営者“としての彼女にも注目したい。(編集部記者/本橋涼介)

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