ファッション

国内最大規模クイーポに聞く苦戦する中価格帯バッグ市場 「コーチ」以上ラグジュアリー未満に注目

業績悪化に苦しむサマンサタバサジャパンリミテッドのように、長らく2万円台後半〜5万円台程度(中心価格帯は3万〜4万円)の中価格帯商材を、「平場」と呼ばれる百貨店のいわゆる“バッグ売り場”で販売してきた国内のバッグメーカーは、社会の二極化や百貨店の海外ラグジュアリーへの傾倒などで苦境に陥っている。

オリジナルブランド「ゲンテン(GENTEN)」のほか、「アナ スイ(ANNA SUI)」や「ランバン オン ブルー(LANVIN EN BLEU)」などのライセンスブランドも手掛ける国内最大規模のバッグメーカー、クイーポにとっても外部環境は厳しい。同社はここ数年で海外ブランドのインポートに乗り出したり、ライセンスブランドではマーケットインを徹底したりで苦境を乗り切ろうとしている。

果たして今、国内のバッグメーカーはどんな問題を抱えているのか?そして課題を解決して苦境を乗り切る術はあるのか?30代前半という若さも手伝い、既成概念にとらわれないチャレンジを続ける岡田孔明クイーポ常務取締役営業本部本部長に今のバッグ業界について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):ここ数年で百貨店の平場、いわゆるバッグ売り場が減少し、国内バッグメーカーが販路を失っている。
岡田孔明クイーポ常務取締役営業本部本部長(以下、岡田):百貨店の平場は、5年で15〜20%減少している。結果、弊社では平場が主戦場だった「クレイサス(CLATHAS)」の取扱店舗が、2016年の119から22年には44まで減少した。残された平場も、ムーンバット(洋傘やレイングッズ、スカーフ、バッグなどの企画、製造、販売を手掛ける。ライセンスブランドも多数)や川辺(ハンカチやスカーフ、マフラー、バッグ、フレグランス、香水、タオルなどの企画や製造、販売を手掛ける。同じくライセンスブランドも抱えている)が幹事会社の役割を担い、同業他社のメーカーに声をかけて商品を調達して売り場を作っているケースが多い。

WWD:そもそも委託販売が多い百貨店の平場では目利きバイヤーが育たなかった印象だが、今は売り場ごとメーカー。となると平場の改革は難しそうだ。平場がここまで衰退した理由は?
岡田:ライセンスブランドが古いのではなく、コスメとインポート・ラグジュアリーの売り場が広がったことが大きい。同じく低層階にあったバッグ売り場が追いやられてしまった。

ライセンスはマーケットインと
一粒万倍日、地方百貨店で生き残り

WWD:そんな中クイーポの場合、ライセンスブランドはどう生き残りを図っている?
岡田:徹底的なマーケットイン。データドリブンに、消費者が今欲しいものを形にしている。例えば「アナ スイ」の財布の場合、がま口とL字ファスナーで迷ったら、直前の実績が大きながま口を選ぶ。モチーフでも、売れている蝶々を選択。こうして、今求められているものを徹底的に作る体制に切り替えた。
もう一つは、一粒万倍日。2021年の春ごろ、「ゲンテン」のHPで一粒万倍日を特集したら盛り上がったのを皮切りに強く意識するようになった。今はさまざまな占い師が提案する色をあらゆるブランドで打ち出している。

WWD:ここ数年で、売れるバッグは変わってきた?
岡田:価格帯はそれほど変わっていない。商品は、コロナを経て、バックパックが一気に増えた。通勤はもちろん、デイリー使いにも便利。大きな変化は、特に地方では消費者が趣味や嗜好ではなく、実需に駆られてバッグを買うようになったこと。接客でも使用用途をお話になる買い物客が増えている。

WWD:海外ラグジュアリーでは、値上げが相次いでいる。
岡田:我々も昨春、上代を5%ほど上げた。とはいえ原材料費や人件費の上昇はカバーしきれてはいない。原価率は悪化している。加えてライセンスブランドでは、キャラクターとコラボレーションする機会が増えている。よく売れるがこの場合、私たちはライセンサーとキャラクターを管理している会社の双方にロイヤリティーを支払わなければならず、手元に残るお金はなかなか増えない。

WWD:厳しい話ばかりだが、ライセンスブランドは将来どうなる?
岡田:都心や主要都市では今以上に厳しくなると思うが、地方では絶対に残る。二極化が進んでおり、特に地方ではインポートバッグを買うことが難しくなっている人が増えている。インポートが高くなりすぎて中間層の離反が進んでいると聞くが、それでもラグジュアリーブランドが値下げするとは思えない。となると、新たな中価格帯バッグやライセンスブランドの出番。複数のブランドを取り扱う百貨店の平場には長らく、メーカーの社員が接客に立っていた。だから売り場全体での顧客管理が難しかった。こうした問題を解決できれば、地方ではまだまだライセンスブランドで戦える。

WWD:全国の百貨店で、バッグの平場が堅調なのは?
岡田:例えば東武百貨店船橋店は、ラグジュアリーに依存せず、国内のバッグメーカーによる商品をしっかり集積して実績を出している。熊本の鶴屋百貨店も同じ。百貨店ではないがバッグ売り場としては、東京デリカの各店舗は、各店の店長が裁量と責任を持っている。自分達の目で商品を選んでおり底堅い。

韓国、フランス、イタリアの
インポートブランドを相次ぎ導入

WWD:今クイーポは、ライセンスブランドのビジネスを維持しながら、海外ブランドのインポートにも挑戦している。ゆくゆくはインポートブランドが、オリジナルの「ゲンテン」、ライセンスブランドに匹敵する第3の柱になる?
岡田:そのつもりだ。まず最初に挑戦したのは、韓国発のファッションブランド「ジョセフ アンド ステイシー(JOSEPH AND STACEY)」の日本展開。韓国はこの5年でアジアのショーケースに進化した。多くの日本人が韓国ファッションを追いかけている。ただ、特徴のある韓国ブランドは少ない。そんな中プリーツとカラー、そしてメード・イン・コリアにこだわっている「ジョセフ アンド ステイシー」に興味を持った。最終的な決め手は、「ジョセフ アンド ステイシー」もプリーツバッグは一過性のトレンドと捉え、新たな商材開発に意欲的だったこと。バッグメーカーとしてのクイーポとタッグを組めると思った。
顧客を作る「ゲンテン」やライセンスブランドのビジネスではなく、浮気症なお客さまを相手に瞬発力で勝負することに挑んだ。ルミネやニュウマン、ラゾーナ川崎などの商業施設でポップアップに挑戦して、インフルエンサーとタイアップ。会社として、これまでできていなかったことに取り組んでいる。昨年4月の発売以来、予算は順調にクリアしており、百貨店からの引き合いも多い。ただ、単価は低い。常設店はコストがかかるので、もう少し様子を見る。

WWD:レザーバッグブランド「RSVP」は?
岡田:フランス・パリのボンマルシェの関係者に「感度の良いバッグブランドは?」と聞いたら、「RSVP」の名前が上がり、声がけした。今、バッグ業界では「『コーチ(COACH)』以上、ラグジュアリー未満」のバッグを探している人が多い。「RSVP」のクロスボディバッグは、10万円くらい。8万〜15万円くらいの中価格帯で、まさに「『コーチ』以上、ラグジュアリー未満」だ。

「『コーチ』以上、
ラグジュアリー未満」の心は?

WWD:かつての中価格帯は、3万〜5万円くらいだった。
岡田:ラグジュアリーブランドの値段が上がりすぎて、中間層が頻繁に買うことは難しくなっている。百貨店各社は富裕層と訪日外国人客に支えられて好調だが、彼ら頼みになっていることに不安を抱いている関係者は少なくない。そこで、「『コーチ』以上、ラグジュアリー未満」をこぞって探すようになった。この価格なら、多くの皆さんに楽しんでいただける。

WWD:「『コーチ』以上」の心は?
岡田:ある程度の単価じゃないと、効率が悪い。

WWD:「RSVP」は、今春デビューだ。
岡田:伊勢丹新宿本店と阪急百貨店うめだ本店で4月から5月にかけてポップアップを開催する。「RSVP」は、期待してくださる百貨店で売っていきたい。

WWD:昨冬は、破たんした三崎商事から「ゲラルディーニ(GHERARDINI)」の事業を引き継いだ。
岡田:独自素材“ソフティ”を使ったバッグは、トートで6万円台〜。三崎商事は日本企画だけを販売していたが、クイーポは6月をメドにメード・イン・イタリーのラインを復活させる。トートで7万〜8万円台になるだろう。軽さと使い勝手で60〜80代に支持されている。確かに既存顧客は高齢だが、今後、この人口は増える。「ゲンテン」の“一本足打法”では不安があるので、しっかり育てたい。

WWD:今後も、新しいインポートブランドに挑戦する?
岡田:先が読めない時代なので、それぞれの素材のトッププレイヤーとのビジネスに取り組みたい。バッグは、素材が命。レザーではなく、例えば布帛など。ラフィアも考えているが、日本では春夏商戦に依存してしまう。どう取り組むべきか考えながら、新しいブランドを発掘したい。

WWD:最後に「ゲンテン」は?
岡田:今年で25周年を迎える。5万円程度のヤギ革のトートバッグを筆頭に定番で売上の8割を担っており、安定している。エコロジーブランドの先駆けとして、強くアピールはしないが、これからもモノの良さとファッション性を訴えたい。

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