ファッション

「エイトン」がベルリンのコンセプトショップで藍染め披露

毎年9月開催のベルリン・アート・ウイークは、ベルリン最大級の現代アートのショーケースで、街のアートシーンが最も盛り上がる期間だ。国際的なアーティストを招聘した個展や新進気鋭の作家によるグループ展など、有数の美術館から個人経営の小さなギャラリーまで、多くの展覧会が開かれる。期間中、ベルリン随一のコンセプトショップ「アンドレアス・ムルクディス(ANDREAS MURKUDIS)」で藍染のインスタレーションを披露したのが、日本のアパレルブランド「エイトン(ATON)」だ。

「エイトン」は2016年、久﨑康晴ディレクターがスタート。ブランド名は、五十音の 「あ」 から 「ん」までをアルファベットの「A」と「N」で表現したもの。つまり、原材料から仕上がりに至るまでモノ作りへのこだわりを表している。原材料から生地作り、商品に至るまで、全ての工程にこだわる同ブランドは、高品質のオリジナルテキスタイルを使い、日本で生産をしている。デザインやシルエットにもこだわる。例えばシャツは、単なるビッグシルエットに仕上げるのではなく、着用した時にどう動くかを考え、余白を持たせて分量を取るなど、ひとつひとつに様々な思いを込める。

今回のインスタレーションでは、「エイトン」が研究・開発してきたブランドのシネグチャーとも呼べる藍染コレクション「エイトンカラー」を披露。徳島県の藍師が作った天然藍染料を用いて、京都の染師が染色した9色のテキスタイルを天井から吊るした。

藍師とは原料となる藍葉を育てて染料を作り出す職人。藍染は日本の伝統技術のひとつとして海外でも知られているが「エイトン」の「エイトンカラー」は通常の藍染とはどんな点が異なるのだろうか?

久﨑ディレクターは「30年近くモノ作りをしてきたが、日本の技術力は高い。特に染色は水がキレイで、技術的にも日本がトップだと思う。藍染は、約600年以上継承され続けている伝統的な天然染めだが、『エイトンカラー』は、徳島県阿波地方で育てられた国選定無形文化財の阿波藍を用いた天然藍染料を使用している。6代に渡り受け継がれる技法で葉を大きく育て、自然発酵の熱のみで腐らせている。電気を使って発酵するところよりも2カ月出荷が遅くなるが、発酵の具合は全く違う。洗っても光に当たっても色褪せない、鮮やかな色が出る」という。

「アンドレアス・ムルクディス」は、創業者で全てのバイイングも担うアンドレアス・ムルクディスのカリスマ性と高い見識で信頼を得ている。日本のファッション関係者からの支持も得ており、取り扱いを望むブランドも多い。「エイトン」のインスタレーションとブランドの取り引きが始まった経緯はなんだったのだろうか?

久﨑ディレクターは、「5、6年前、『イソップ(AESOP)」の創始者であるデニス・パフィティス(Dennis Paphitis)に紹介してもらった。僕はリネンを使ったホームアクセサリーのブランド『エシャペ(ÉCHAPPER)』も手掛けているが、『絶対好きだと思う』と紹介してくれた。そこでアンドレアスが気に入ってくれて、同時に『エイトン』を知ってもらった。時間はかかったが、海外で取り扱うなら絶対『アンドレス・ムルクディス』が良いと思っていたし、ベルリン・アート・ウイークで発表したかった。ドイツは、バウハウスの影響もあると思うが、職人に対するリスペクトがとても強い国。日本にしか絶対にないものをインスタレーションでやりたかった」と話す。

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