ビジネス

LVMH傘下の眼鏡メーカーが“007”も着用の仏ブランドを買収

LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)傘下のアイウエアメーカーであるティリオス(THELIOS)は、ロンドンの投資会社ネオ インベストメント パートナーズ(NEO INVESTMENT PARTNERS)からフランスのアイウエアブランド「ヴュアルネ(VUARNET)」を買収した。取引額は非公表。2018年にイタリアで設立されたティリオスは現在、多くのLVMH傘下のブランドとライセンス契約を結び、アイウエアの製造・流通を手掛けているが、ブランドの買収は今回が初めてになる。

アレッサンドロ・ザナルド(Alessandro Zanardo)最高経営責任者(CEO)は「『ヴュアルネ』を買収するチャンスは、私たちにとってふさわしいタイミングで訪れた。アイウエア業界での地位を築く6年間の重要なステップを経て、ブランドを傘下に収めて運営を始める準備が整ったと感じている」とコメント。そして、「私たちはとても堅実だ。デザイン、開発、品質における専門知識や技術を確立するとともにグローバルな商業ネットワークを構築し、世界各地で支社を設立し、市場で最高の小売業者との関係を強化してきた」と続ける。買収により、研究開発能力や専門知識、世界的なネットワークなど同社の幅広いリソースを生かし、ブランドの成長とグローバル展開を推進する。

「ヴュアルネ」は、1957年に眼鏡技師のロジェ・プイユ(Roger Pouilloux)とオリンピック金メダリストのスキー選手であるジャン・ヴュアルネ(Jean Vuarnet)が創業。ミネラルレンズ製造の先駆者としても知られ、パリ近郊のモーにある製造拠点はフランス政府から「無形文化財企業(Entreprise du Patrimoine Vivant)」の認定を受けている。2000年代初めから休眠状態にあったが、15年にネオ インベストメント・パートナーズが買収し復活させた。スポーツギアが起点のブランドではあるが、「テクニカルなブランドではなく、自然やサステナビリティとも結びついた、よりライフスタイル的なアウトドアブランドとして捉えている」とザナルドCEOは述べる。またスタイルという点では、象徴的なモデルを映画「太陽が知っている」(1969)のアラン・ドロン(Alain Delon)や「007 スペクター」(2015)のダニエル・クレイグ(Daniel Craig)ら有名俳優が作中で着用し、人気を集めてきた。

ティリオスは以前から「確かな特徴のある」ブランドを傘下に収めることに目を向けており、「ヴュアルネ」の歴史や、大切にし続けてきた確固たる価値観、オリンピック精神、そしてスタイルへのラグジュアリーなアプローチは求める条件に合致する。買収によって、同社は「ファッションではなくアイウエアからスタートした」ブランドでポートフォリオを拡大できる。しかし、保有するブランドの育成に重点を移すかという問いに対しては「他のブランドがこのような特徴を持ち、強力なノウハウとデザイン性を備えた比類なきブランドである場合に限る」と説明。ライセンスよりも傘下ブランドでポートフォリオを拡げることは意図していないとし、「ヴュアルネ」は同社のポートフォリオ戦略に調和して他のブランドを補完するものだという。今後は、同ブランドの純粋な魅力を保ち、流通を絞ることで、ポジショニングをさらに高めていく計画だ。

なお、ティリオスはLVMHとイタリアの大手アイウエアメーカーであるマルコリン(MARCOLIN)の合弁会社として設立されたが、21年12月にLVMHがマルコリンの所有する全株式を取得して完全子会社化。アイウエア業界におけるプレゼンスを強化しており、現在は「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」「セリーヌ(CELINE)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「ロエベ(LOEWE)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「ケンゾー(KENZO)」「ベルルッティ(BERLUTI)」などのアイウエアを製造している。

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