ファッション

Vol.39 TikTokでバズって完売状態が続く「ユニクロ」バッグのスゴいところ【SNSトレンドに、業界は「どうする」?】

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 「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、TwitterやFacebook、Instagram、そしてTikTokをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。今回は、TikTokでバズって売れている「ユニクロ(UNIQLO)」のバッグの話。

「ユニクロ」“ラウンドミニショルダーバッグ”が大バズり 英国のTikTok投稿がきっかけ

ソーシャルエディター津田:今、「ユニクロ」の“ラウンドミニショルダーバッグ“が世界中で売れています。ファッションECの検索プラットフォーム、リスト(LYST)が発表する2023年第1四半期のファッショントレンドでも1位に選ばれており、ファッション関係者の間では「ミレニアル世代のバーキン」とも呼ばれています。このバッグがヒットしたきっかけは、イギリスのインフルエンサー、ケイトリン・フィリモア(Caitlin Phillimore)が、約1年前にTikTok に投稿したバッグの中身を紹介する動画でした。小さいバッグから、カメラ、お菓子、鍵、財布、コスメ、香水、ヘッドホンなどが次々と取り出されるこの動画。高い収納力に、1500円というお手頃な価格も相まって“バズ“を生み出します。以降もミレニアル世代を中心にジワジワと話題になり続け、さまざまなカラーリングで販売されては完売を繰り返しているそうです。ちなみに先月、ロンドンにオープンした新店舗の壁面には、彼女のバッグのその時の中身が展示されています(笑)。

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また、リストのランキングが発表されたタイミングで、ファッション・ビジネス・メディアの「BOF(Business of Fashion)」も同バッグに荷物を収納していくリール動画をインスタグラムに投稿し、約30万回再生されていました。海外での注目度の高さが伺えます。ゴールデンウイーク中に「ユニクロ」の店舗に商品を見に行きましたが、実際に多くの人がこのバッグを手に取っていました。日本のブランドである「ユニクロ」が海外でバズり、その様子が日本のニュースでも取り上げられてこちらでも人気商品となる。まさに逆輸入現象ですね。個人的には今後、一回り大きい同型のショルダーバッグが登場する気がしています。

記者村上:GW期間中は、アプリから品薄状態のお詫びをプッシュ通知していましたね(笑)。昨今「完売」なんてよくあるニュースかもしれませんが、精緻な需給バランスの分析をしているハズで、加えて生産数も圧倒的なハズの「ユニクロ」で完売とか品薄状態が続くというのは、そんじょそこらの「完売」とは違うものだと思います。しかも、それが逆輸入!真の意味でグローバル企業ですね。

私は、このバッグが売れた理由をカラーリングと分析しています。万人ウケしつつ、個性も表現できる、しかも誰もが明るい気分になれる色ですよね。だから、まずは秋冬に向けてブラウンとかマスタード、ワインあたりを出してくるのではないでしょうか?一方、売れたバッグの大きさや素材を変えてバリエーション増やしていく手法は、「ロエベ(LOEWE)」あたりの鉄板戦略になっているので、津田さんが言うような大きさ違いもアリだと思います。男性なら一回り大きくても良いし、子どもならワンサイズ小さくても良い。形状と色のかわいさが増幅しそうです。

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津田:グリーンにイエロー、ピンクなど、カラーバリエーションが豊富ですよね。流行のきっかけとなった動画はベージュカラーで、当時は今ほどカラーバリエーションが無かったように思いますが、そこから矢継ぎ早に新色をリリース。顧客のニーズを把握して発売するまでのスピード感はさすがです。サイズやカラーのバリエーションのほか、コラボレーションラインでの展開もあるかもしれません。既にキース・ヘリング(Keith Haring)のアートワークがモチーフとなっている型は既に発売していますが、お馴染み「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」や「マルニ(MARNI)」とのコラボレーションなんかでも展開されたら、どんな柄になるだろうと想像してしまいました。「楽しみです」と言うとプレッシャーをかけているようになってしまうので、ひとまず個人の妄想で自由に楽しみたいと思います。「マルニ」コラボ、いいな(笑)。

村上:「ユニクロ」にとっては、バッグで初めてのヒット商品でしょうか?布製のトートやショッピングバッグ、ネックポーチ以外は「なかなか難しいな」という印象でしたが、ついにちゃんとしたバッグでスマッシュヒットですね。最近までレザータッチ素材、つまりフェイクレザーのバッグを頑張って作っていたけれど、正直布帛や雑材、PVC的な素材でのバッグ作りを頑張った方が良いと思います。それは「ユニクロ」のみならず、お手頃なカジュアルブランド全般に言えるかもしれません。最近レザーバッグは、多くの人が「頑張って、長く使えるバッグを買おう」と心がけ、いわゆるラグジュアリー・ブランドを選ぶようになっています。結果、国内メーカーによるライセンスブランドはかなり厳しい。先日、そんなブランドを手がけている国内メーカーの首脳も「淘汰はますます進むでしょう」と話していました。ライセンス契約の締結ではなく、布帛ブランドのインポートに挑戦しているんです。ラグジュアリーブランドのITバッグを意識し、レザーでお手頃バッグを作って成功するビジネスモデルは難しくなっています。だからこそ、布帛や雑材、PVC的な素材なんです。「ユニクロ」の“ラウンドミニショルダーバッグ“は日本のバッグメーカーにとって、脅威でありつつ、参考になりそうです。

次回は、ビューティのトピックスをお送りします。

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