ファッション

Vol.41 業界がマツケンサンバから学ぶこと【SNSトレンドに、業界は「どうする」?】【期間限定無料公開】

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「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、TwitterやFacebook、Instagram、そしてTikTokをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。今回は、SNSを中心にブームが再燃している「マツケンサンバ」の話からスタート。


ソーシャルエディター津田:今、SNSを中心に大きな話題なのが、6月26日まで渋谷パルコ6階に期間限定オープン中のマツケンサンバ初のコラボレーションカフェ「ビバ~マツケンサンバIIワールドカフェ~オレ!」です。テーマの「マツケンサンバII」は俳優の松平健が歌うCDセールス50万枚超えの大ヒット曲。2020年に公式ユーチューブチャンネル「マツケンTube」にミュージックビデオ(以下、MV)を投稿以降、SNSを中心にブームが再燃しています。同カフェでも、“マツケンサンバ!ーガー”や、“サンバ ピザ サンバ”など、「マツケンサンバII」の情熱的な世界観にインスパイアされたオリジナルメニューを用意していて、メニューの面白さやシュールなビジュアルが多くの世代にウケており、Twitter上でも「とにかくハッピーな空間だった」「ずっと笑い転げてた!」とバズを起こしています。

事前予約制のカフェのチケットは、残念なことに既に完売。併設のグッズショップのみ、誰でも入店可能です。グッズショップでは、米ロックバンドのキッス(KISS)をオマージュしたバンドTシャツや、必ず“推し(マツケン)”が出る上様のステッカー入りのウエハースなど、思わず笑みが溢れるユニークなアイテムが目白押し。特段マツケンサンバに思い入れがない僕も、取材の帰りにはTシャツを手にしていました(笑)。キッスとマツケンの白塗りメイク繋がりもあってか、バンドTシャツとしての再現度が高く、オマージュが上手です。なんと既にメルカリでも転売されていました。カフェからグッズまで何を発売しても大ヒットのマツケンサンバ。世代を超えて愛されるのには、何か理由があると思いますか?

記者村上:えー、今回はすごい角度からボールが飛んできましたね(笑)。マツケンサンバの魅力……、正直TVのワイドショーを見ている時以外に考えたことないけれど、やっぱり「単純に楽しい」なんでしょうか?そして今は、ド派手なMVの鑑賞でも、「踊ってみた」でも、グッズの購入でも、さまざまな楽しみ方がSNSで発信できる。それが強みなんじゃないでしょうか?


常々、「解釈の余白があるからこそ、それぞれが、それぞれらしく愛せるものは、とても強い」と思っています。代表例でよく挙げるのは、「イプサ(IPSA)」の化粧水“ザ・タイムR アクア”です。この商品は、肌にぐんぐん浸透するような「効果実感」で好きな人も多いでしょう。と同時に、デパコスの中では手に入れやすい「価格」で好きな人もいれば、シュッとしたボトルデザインで「部屋に馴染む」という理由で愛するファンもいるのではないでしょうか?そして今は、それぞれの愛し方でそれぞれにコミュニティができる時代。だからこの製品はコスメオタクから、ライフスタイルにこだわる男性まで、幅広い人たちに愛されているんだと思います。マツケンサンバも比較的同じような、さまざまな愛し方ができるんじゃないですかね?

先日サンフランシスコに出張して感じましたが、「リーバイス(LEVI‘S)」の“501”も同じではないでしょうか?ブランドを代表する人物さえ、「“501”は、真っ白なキャンバス。それぞれが好きな色で好きな絵を描くように、それぞれらしく楽しめる」と話していました。ビンテージを愛するもよし、思いっきりリメイクやカスタムするもよし、いろんなスタイルに合わせるもよしで、今年は売り上げも絶好調です。

津田:無茶振りすみません(笑)。確かにさまざまな愛し方ができる楽曲だと思います。聴く人を選ばないような明るい歌詞やシンプルな踊りが幅広い世代から称賛され、2年前に投稿されたMVにも関わらず、ユーチューブのコメント欄には現在でも毎日のようにコメントがついています。「病んでいるときに聴くと絶対に元気になる」「赤ちゃんが必ず泣き止むので助かっている」など不思議なパワーがあるようで、好意的なコメントばかり。流行や時代を超えて生活に浸透している「マツケンサンバII」は、ストレスを感じやすい現代人にとって最強の応援歌なのでしょう。バラエティ番組「水曜日のダウンタウン」(TBS系)で「マツケンサンバを踊りながら泣くことなどできない説」という企画検証が行われていたのも納得です。

「リーバイス」の“501”や、「ナイキ(NIKE)」の“エア フォース 1"など世代や時代を問わず、長い間愛されているファッションアイテムも同じような存在かもしれませんね。“501”は、村上さんもダメージを入れたりブリーチしたりと、オリジナリティ溢れるマイデニムを作ったと聞いています。やはり自分色にカスタムできるものは、他人と被らないし、手を加えている分、愛着も湧きますよね。僕も帰ってスニーカーの染色しようと思います。

村上:それぞれらしく愛することができる商品は、みんなにとっての「これがいい」になるんですよね。クオリティだけでは差別化できない時代、一番大事なのは、個々が愛せるポイントを作って「これがいい」と思わせることだと思います。一方、これまで日本のメーカーが得意だったのは「これでいい」。特に日本の大手アパレルメーカーは、ある意味「これでいい」の最上級を作るのが上手だった印象があります。でも、「これでいい」って、すぐに何かに取って代わられちゃうんですよね。突き抜ける個性がないと、「これがいい」にはならないのだと思います。

最近、日本のファッションやビューティ企業の社長は「突き抜けたい」と口を揃えておっしゃいます。それは「これがいい」になろうとしている現れなんじゃないかな?って思うんです。マツケンサンバを聞いたり、MVを見たり、グッズを調べてみたら、「これがいい」のヒントがわかるかもしれませんね。だってあの曲、絶対「これでいい」ではないでしょう(笑)。

次回はビューティの話題を取り上げます。

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