ファッション
連載 齊藤孝浩の業界のミカタ

3年で売上高を1.5倍、利益を1.8倍に増やしたLVMHの無双ぶり【齊藤孝浩のファッション業界のミカタVol.47】

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 企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は絶好調のラグジュアリー・コングロマリット、LVMHの決算から地域別とカテゴリー別のデータをピックアップ。その特徴と強みを解説する。

 1年前に初めてLVMHの決算を取り上げましたが、今回は最新の2022年12月期決算にどんな変化があったかを見ていきます。

 前年の21年12月期は、ティファニー(TIFFANY)が加わったこと、好調なアメリカ市場によって伸びていましたが、22年12月期も売上高は前期比23.3%増の11兆円超、営業利益は同22.4%増の約3兆円。大きく伸びた前期から、さらに大幅増収増益しています。

 コロナ禍前、19年対比で見ても、3年間で売り上げは1.5倍、営業利益は1.8倍に。回復がやっとの小売業が多い中、この成長維持がまず「すごい」の一言です。

 当期躍進の最大の要因としては、ファッション&レザーグッズが相変わらず調子が良いということです。売り上げのほぼ半分を占めている同カテゴリーが同25.0%増。それから、「セフォラ(SEPHORA)」がだいぶ回復して、セレクティブ・リテーリングが伸びています。デューティーフリー(免税店)の方はいまいちでしたが、この後、中国からの旅行客数が復活すれば、大きく回復するのは間違いないでしょう。ファッション&レザーグッズに次いで2番目に売上高が大きいカテゴリーなので、ここの回復が全体に与えるインパクトは大きいです。

 地域別で見ると、まず全ての地域で売上高が前年をクリアしています。

 特に本国フランスの伸びが同47.7%増と顕著です。伸びが鈍かったのは同6.3%しか伸ばせなかった日本を除くアジアです。これはゼロコロナ政策およびその後の解除で感染者が激増した中国の影響ですね。アメリカは引き続き、同30%増と伸び続けて全体をけん引、フランス以外のヨーロッパは同29%増、日本は同24%増です。

 構成比については、アメリカが27%を占めています。フランスの構成比も一度は下がりましたが、8%に回復し、フランス以外のヨーロッパも16%に回復しました。日本は堅く7%をキープし、一方、日本を除くアジアパシフィックは35%から30%へと5ポイント下がりました。これを見ると、やはりシェアの大きいアメリカの成長が一番インパクトがありそうです。

 これをケリングとの比較で見てみましょう。22年12月期の売上高は同15%増です。地域別の前期比を見ると、最大マーケットである日本以外のアジアパシフィックは同8%減でした。ケリングの方が中国の影響を受けているようです。

 気になるのはアメリカで、通年で同5%しか伸ばせておらず、特に第4四半期でアメリカの伸長率がマイナスになっています。アメリカは前年の反動というのもあるのですが、物価高の影響も受けているのではないでしょうか。一方で、この間は為替の関係(ドル高ユーロ安)でヨーロッパに行きやすい環境でした。ですから、お金を持っているアメリカ人が、為替差益がエンジョイできるヨーロッパに行って、ラグジュアリー消費をしたのではないかと思われます。

 日本を除くアジアを落とさず、アメリカを引き続き伸ばし続けられたこと、そのあたりがLVMHとケリングの差と言えそうです。

 そんなLVMHの強みについて、カテゴリー別(セグメント別)に見てみましょう。

コロナ禍で伸びた営業利益率

 22年12月期をバブルチャートでカテゴリー別に表すと、ファッション&レザーグッズの売り上げ規模の大きさと利益率の高さ、回転の速さが圧倒的であることが分かります(下表)。

 営業利益率は驚異の40.6%。他のカテゴリーと合わせると、営業利益率は26.6%になります。ケリングはファッション&レザーグッズが事業のメインですが、営業利益率は27.4%。ケリングと比べてもLVMHのファッション&レザーグッズの営業利益率が、ものすごく高いと言えます。LVMHの同カテゴリーの営業利益率は3年間で7ポイント以上も上がっています。コロナ禍は、両社に差がつく時期になってしまった感じですよね。

 LVMHのファッション&レザーグッズ以外のカテゴリーの中には、効率が悪く手放した方が、さらに経営効率が良くなる事業もあるかもしれないです。でもVol.35でもお話ししたように、商品回転率は悪いが、営業利益率の高いワイン&スピリッツや、同様に効率は悪いが、単価が高いウオッチ&ジュエリー、商品回転率が高く日銭が稼げるパフューム&コスメティクスなど、「ラグジュアリー」をキーワード(横串)にして、貢献度が異なるさまざまなカテゴリーでポートフォリオを組んで、ビジネスの規模を拡大しているのが同社の特徴です。

 前回も紹介したように、貸借対照表(BS)の有形固定資産だけでなく、無形固定資産、つまり買収したブランドや商標、のれんといった資産を生かしながら、多額の広告宣伝費を投じて、付加価値を高めて、高い粗利率と成長を実現しているというビジネスモデルは非常によく機能しています。

 6つの地域、6つのカテゴリーを展開し、伸ばせる時に伸ばせる地域、カテゴリーで稼ぎ、そうでないところをしっかり補完する。まさにグローバル企業であることを生かしたポートフォリオ経営の完成形のひとつと言えそうです。

 今後、中国の経済が動き出し、関連事業が復活したら、さらに売上高が上がるでしょうから、もう怖いものなしですよね。

最近気になっているのは
NBAで活躍する日本選手

 八村塁選手のレイカーズ移籍には興奮しました。日本人選手がNBAレジェンドであるレブロン・ジェームズと一緒にプレーをするなんて、夢のようです。

 オリンピックでは日本女子チームが銀メダルをとり、NBAでスタメン活躍する選手が登場し、予備軍のNCAA(カレッジ)にも期待の富永啓生選手がいます。野球、サッカーに続き、バスケでも日本出身の選手がどれだけ世界に通用するか?に注目しています。

齊藤孝浩/ディマンドワークス代表

齊藤孝浩/ディマンドワークス代表 プロフィール

1988年、明治大学商学部卒業。大手総合商社アパレル部門に勤め10年目に退職。米国のベンチャー企業で1年勤務し、年商100億円規模のカジュアルチェーンへ。2004年にディマンドワークス設立。ワンブランドで年商100億円を目指すファッション専門店の店頭在庫最適化のための人材育成を支援。22年4月、明治大学商学部特別招聘教授就任。著書に「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)。「5月に発売した『図解 アパレルゲームチェンジャー』(日本経済新聞出版)の第4章ではワークマンのビジネスモデルの優位性をその他のチェーンストアと比較し解説しています。ワークマンは本文にもあるようにFC方式を採りますが、しくみは違えど、一般のチェーンストアでも学べる本部と店舗の関係性のあり方があります。どんな共通目標を成果報酬の対象にしたらよいのか、その答えは、FCでも、直営でも変わりません」

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