カポックジャパン(KAPOK JAPAN)は10月6日、カポックを100%使用した中綿素材「ネオダウンカポックビヨンド(NEO DOWN KAPOK BEYOND)」を開発したと発表した。また、同素材を用いたプロトタイプのジャケット5着を限定販売する。「ネオダウンカポックビヨンド」は、カポックのみで羽毛のようなふくらみを実現した中綿素材。ダウンの約97%に相当する保温性と、ダウンを上回る吸放湿性を備えるという。羽毛やポリエステルに代わる中綿の新たな選択肢として、2029年までに量産体制を整え、30年には年間300トンの生産を目指す。
カポックジャパンはこれまで、カポックをシート状に加工することで、薄さと軽さ、暖かさを兼ね備えた中綿素材を開発し、自社ブランドで採用するほか、30以上のアパレルブランドに素材を提供してきた。今回、あえて「ふわふわ」とした中綿の開発に乗り出した背景について、深井喜翔社長はこう語る。
「これまでカポックの可能性を追求し、さまざまな製品やブランドとの協業を実現してきたが、本当にカポックが身近な素材になったかといえば、そうではない。海外の素材見本市でも『一般的なダウンのような、ふわふわした中綿にはできないのか』という声を多くいただいた。そこで、カポック本来の軽さや暖かさを生かした中綿をつくろうと開発を始めた」。
「3カ月」の想定が数年に 100を超える仮説を検証
カポックは東南アジアに生息する植物。繊維内部に空洞を持つ中空構造で、重さはコットンの約8分の1と極めて軽い。一方、その軽さに加えて繊維長が十数ミリと短く、表面には油分があるため、繊維同士が絡みにくい。カポックだけでは中綿に必要なふくらみを維持することが難しく、他の繊維と混ぜて使用するのが一般的だった。
カポック100%の中綿を実現するため、同社は繊維の専門家である三昌の小田涼太研究所長らと開発を進め、100を超える仮説を検証したという。小田所長は「当初は3カ月ほどで方向性を見いだせると思っていたが、実際には数年を要した」と振り返る。「カポックは軽くて暖かい一方、軽すぎて舞いやすく、繊維も短い。さらに表面の油分が加工の妨げになる。コットンと似ている部分もあるが、コットンの加工技術をそのまま適用してもうまくいかなかった」。
開発では、羽毛を模した構造体を試作したほか、繊維表面への化学的な機能付与や物理加工など、さまざまな方法を検証した。その末にたどり着いたのが、羽毛の構造そのものを再現するのではなく、ふくらみや反発性といった「機能」を再現するアプローチだった。新技術では、絡み合ったカポックの繊維をほぐし、空気を含ませながら立体的に組み上げ、繊維の交点を固定する。これにより構造を崩れにくくし、原綿の約3倍のふくらみを実現した。同技術は現在、特許を出願している。
専用機械をゼロから開発 30年に年産300トンへ
次の課題は量産化だ。今回の加工技術は既存の繊維機械では対応できないため、専用機械そのものを新たに開発する必要がある。同社は、繊維機械を手掛けるカジグループの梶製作所と協業し、量産技術の確立を進める。26年中にコア技術を確立し、27〜29年に量産化を進める。アパレル企業への本格的な素材供給は28年秋冬シーズン以降を見込む。30年には年間300トンの生産を目指し、原料産地であるインドネシアでの量産工場設立も計画する。
量産拠点をインドネシアに置く背景には、原料調達だけでなく、縮小するカポック需要を再び生み出す狙いもある。インドネシアでは年間約7万トンのカポックが生産されているという。一方、従来カポックが使われてきたマットレスなどの需要減少により、活用先が縮小し、木そのものが伐採されるケースもある。深井社長は、新たな用途と需要を生み出すことでカポックを産業として持続させることも目指す。
同社は発表に合わせ、「ネオダウンカポックビヨンド」の研究・開発パートナーの募集も開始した。寝具やアウトドア、バイオ燃料など、アパレル以外も含めた用途開発を進め、パートナーには素材を優先的に供給する。量産技術の確立と並行して用途を広げ、30年の年産300トンにつなげる。
カポックジャパンは1947年創業のアパレル商社、双葉商事の4代目である深井喜翔が2020年に家業からスピンアウトする形で設立。