ファッション

「シャネル」は若々しいツイードなのに春夏とは一変 「ミュウミュウ」がナンセンスな勝負仕掛ける【2023-24年秋冬パリコレ取材はどこまでもVol.8】

 パリコレは、本日が最終日。ところが今日は市内全域でストライキが発生し、地下鉄のほとんどが使えません。デモが予定されているエリアでは交通封鎖。簡単には終わらせてくれませんね。では最終日、楽しく参りましょう。

10:45 「シャネル」
同じツイードなのに
春夏とは全然違う!

 最終日の朝は、「シャネル(CHANEL)」でスタートです。

 このコラムでは度々、「らしさ」や「本質」「原点」「メゾンコード・ドレスコード」の話をしてきました。もちろん革命的な新しさを提供することもファッションの1つの価値ですが、ブランドがブランドとして存在し続けるには「らしさ」や「本質」「原点」「メゾンコード・ドレスコード」をどうするのか?の姿勢が問われます。

 そんな考え方を実績をもって提唱したのは、長きに渡り「シャネル」を盛り上げた大帝、故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)でした。彼は、正直勢いを失っていた「シャネル」のトップに就くと、ツイードやカメリア、Cを重ねたモチーフ、チェーンバッグ、そこに刻んだ“マトラッセ”と呼ばれる格子柄、パールをふんだんに使ったコスチュームジュエリーなど、ココ・シャネル(Coco Chanel)が生み出したアイデアを甦らせ、アイコンと呼ばれるまでに仕上げ、連打し続け、その集合体を「シャネル」の「らしさ」や「本質」「原点」「メゾンコード・ドレスコード」として発信し続けたのです。

 そしてカールの右腕でアーティスティック・ディレクターのバトンを受け継いだヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は、彼女らしくアイコンをアップデートし続け、結果「シャネル」の「らしさ」や「本質」「原点」「メゾンコード・ドレスコード」もアップデート。だからこそ、人々は「シャネル」というブランドに魅了され続けるのです。これぞ、ブランドビジネスの王道でしょう。

 その意味でヴィルジニーは今シーズン、カメリアに再度注目。この花が持つ美しさはもちろん、シャネルが愛し、カールが再度表舞台に引っ張り出したからこそ気高く、特別な存在であるという強さに焦点を当てました。舞台の中央には、カメリアの花です。

 コレクションは、ブラック&ホワイト、そこに真紅や紫、ボルドーという美しくも強いカラーパレットで構成されています。素材では、レザーやパテントレザーを用い、アシンメトリーのスカートも多用しました。いずれもモードな印象を掻き立て、いつもより孤高な感じ、気高い強さを表現します。同じく連打したのは、ニーハイブーツ。言うまでもなく、気高く、強いですよね?中盤に登場するベビーピンクなどの淡い色は、ブラック&ホワイトの強さを強調するために使われた印象です。モヘアのニット、白いタイツ、ニットに飾ったアンゴラ、ツイードにあしらったフェザーも、美しさこそ増強しますが、強さを毀損することはありません。

 考えてみると、同じツイードという素材を使い、同じく若々しいスタイルにたどり着いているのに、「ガーリー」という形容詞もしっくり来る23年春夏コレクションとは全然違います。これが、「シャネル」のツイードを筆頭とするアイコンの汎用性であり、ヴィルジニーの懐の深さなのでしょう。改めて、このブランドはスゴいアイコンをいっぱい持っています。

12:00 「ウジョー」
見たことない、
けれど美しいフォーマル

 「ウジョー(UJOH)」は、格段に美しくなりました。サスペンダーで吊るしたり肩に掛けたりするジャケットなどを交えた、見たことのないレイヤードのフォーマルなのに、美しいんです。ウールギャバジンのような素材をオリーブがかったグレーやブラウンなどで染め、秋冬らしさに徹したことも奏功したのでしょう。とっても「高見え」するスタイルが完成しました。お見事です!

12:00 「ルイ・ヴィトン」
12:30 「カルティエ」

 この後は、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の展示会と、大半が撮影不可だった「カルティエ(CARTIER)」の展示会へ。「ルイ・ヴィトン」については、昨日公開した記事をご覧ください。

14:30 「ミュウミュウ」
ナンセンスで勝負する
ミウッチャの度胸

 さぁ、ゴールはいよいよ目の前。次は「ミュウミュウ(MIU MIU)」のコレクションです。

 今シーズンの「ミュウミュウ」は、上半身だけ見ると、淑女です。いずれのモデルもジャストサイズのカーディガンをニートに着こなし、コーデュロイやフェイクファーのコート、ネイビーで金ボタンのチェスターコートをガバッと羽織って、ハンドバッグを文字通り腕にかけてランウエイを歩きます。足元もキトゥンヒールのスリングバックで、ちゃんとしているんです。

 しかし、下半身はどうでしょう(笑)。あるモデルは、スカートが半分ずり落ちちゃったようなフェイクレイヤード。他のモデルは、サイズがおかしなリラックスパンツを腰履き。スパッツ一丁のモデルには昨今あんまり驚かなくなってきたけれど、流石にラストのパンツだけのモデル3連発にはびっくりしました。「あれ、みんなスカート忘れちゃったの?」もしくは「下半身も頑張れなかったのw?」みたいな感じです。そして、その不完全さは「ミュウミュウ」らしいのかな?と思います。特に間違いが許されない時代だったり、写真や短い動画の世界では虚構でも完璧を生み出すことができるかもしれない時代、「スカート、忘れちゃった」レベルのナンセンスは意味があるのかもしれません。それにしてもスゴいのは、ベーシックなアイテムのコーディネートで、これだけ違和感を拭い去ることが難しかったり、ナンセンスって思ってしまったりのスタイルを生み出す力です。そこには絶妙なパターンワークと、天才的なスタイリングが存在するのでしょう。

16:00 「Y プロジェクト」
実験的なムードを増しつつ
エレガンスも忘れない

 「ディーゼル(DIESEL)」も手掛けるグレン・マーティンス(Glenn Martens)による「Y プロジェクト(Y PROJECT)」は、実験的なムードを増しています。ファーストルックは、デニムと、デニム地で作ったサイハイブーツのコーディネート。ロールアップしてくれていなければ、もはやデニムとブーツの境界線は定かではありません。その後も、シフォンやチュールの代わりにデニムを使ってプリーツを幾重にも寄せて成形したプルオーバー(重そう!)、フロッキープリントを施して汚れや陰影を表現したデニム、スエットを重ねて上のスエットだけをカットアウトすることでロゴを描いたテントラインのドレス、ニードルパンチで女性の体を描いたトロンプルイユ(騙し絵)のジャンプスーツなど、が目白押しです。

 でも、これが奇妙に見えないのは、確実なパターンワークがあるから。時折挟むシンプルに美しいドレスなどが、グレンのエレガンスへの想い、新しいエレガンスを作ろうという意気込みを教えてくれるから、なおさら腑に落ちるのでしょう。どう着たら良いのかわからない、捻って、結んで、垂れ流してだけの人ではないのです。同じ世界観に包まれつつも、「ディーゼル」とも違うムードを醸し出します。引き出しは多くないのかもしれないけれど、その引き出しは結構大きいから、いろんなものが入っていそう。そんな印象です。

16:30 「アヴェラーノ」「ランバン」

 そして、最後にラテックスドレスの「アヴェラーノ(AVELLANO)」を拝見して、「ランバン(LANVIN)」の展示会に伺って、今シーズンのパリコレは終了です。皆様、全8回のコラムをご愛読いただきまして、ありがとうございました。向&木村のミラノ編、大塚&井上さんのメンズ編も併せて楽しんでいただけますと幸いです。それでは、この企画では、また次のシーズンにお会いしましょう!

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