伊藤忠商事は今年3月、鹿児島県薩摩川内市のエコミットと業務提携を発表し、繊維製品の回収サービス「ウェア・トゥ・ファッション」をスタートした。小売店や自治体から回収した使用済み衣類や事業者からの繊維廃棄物などを回収・選別しリユース、リサイクルするもので、これまでにはるやま商事、ジュン、エストネーションなど約30社が参加している。
エコミットは、年間6000トンの廃棄衣料品を扱う2007年創業のリサイクル業者だ。回収後は70%をリユースし、30%はサーマルを含むリサイクルへ。強みは選別工程のノウハウや独自開発の回収管理システムで、回収時点で重量を測定し、運搬距離や処理方法によりCO2排出量を自動で算出する。回収・分別での効率を上げると同時に、焼却とリユースやリサイクルのCO2発生量の比較が可能になり、環境負荷低減を可視化することにつながるという。
回収後はダメージ具合やアイテムなどを基準に150種類に選別し、国内リユースショップや海外卸などへ販売している。分類するのは人の手。大きな負担だからこそ肝だと川野輝之エコミットCEOは言う。「分類せずに“ミックス”で卸した方が手っ取り早いが、それをしたら卸先で“ゴミ”になる可能性が高い。それを避けるために独自のガイドラインで分類し、ニーズに合った卸を行っている」。
回収衣料のうち約10%がポリエステル100%のアイテムで、これは伊藤忠商事のリサイクルポリエステル素材「レニュー」の原料となる。「レニュー」のケミカルリサイクル工場は中国にあり、これまでは中国での廃棄物を使ったリサイクルを行ってきた。今後は「ウェア・トゥ・ファッション」で得られた原料を加工し同工場へ投入するステージへ進む。とはいえ「レニュー」の資源採取だけが同事業を始めた理由ではない。「第一の目的は繊維の寿命を延ばすこと」と下田祥朗伊藤忠商事繊維カンパニーファッションアパレル第三部繊維原料課長。「『ウェア・トゥ・ファッション』というネーミングは廃棄され文化的要素が抜けて単なる“物”となった服を再びファッションへ戻すという意味を込めた」。繊維業界全体を視野に入れた循環ビジネスの地図を描くための一手がこの協業というわけだ。
回収・リサイクルのビジネスを拡大するために重視するのは小売店との関係作りだ。参加企業のエストネーションは、「新たな社会インフラを構築していくために、本気で取り組む川上企業の動きを待っていた。2026年までに全店で導入を目指す」と話す。「モノを買うと同時にリサイクルへ回す、そんなムーブメントを起こすためにもまずは生活に近い小売りでの回収拠点を増やしたい」と川野CEO。年内に1000店舗へ回収拠点を広げる計画だ。