原料・素材や輸送費の高騰、円安など、衣料品生産のコストは上がっていると言われているが、そもそも衣料品の製造原価はどうなっているのか。また、それぞれの上昇はどの程度、衣料品価格に影響するのか。今回、繊維商社や関係者らの協力を得て、中国生産のチノパンを例に取り、かなりリアルな製造原価を算出した。
店頭価格(予定)1万2000円の商品に対して、製造原価率は35%、ロット数は1000枚。いずれもセレクトショップなどで販売するアイテムの、非常にベーシックな設定だ。日本で流通する全アパレル製品の9割以上が海外生産だ。縫製コストを抑えられる一方で、海外生産ならではのコストや経費も多数発生する。実際にはどういったコストがかかっているのだろうか。デザインやパターンなどの共通コストのほか、海外生産の場合は関税、輸送費がかかる。
だが今回、コスト面で最も大きな影響を与えるのが為替だ。素材などを含めた生産コストは約3000円。為替が20%上昇すれば、それだけで600円のコスト要因になる。商社・OEM会社の手数料である420〜840円のすべて、あるいは大半が吹っ飛ぶ。
素材・生地

衣料製品を作る際に使用する主要素材のコットン、ポリエステル、ウールがいずれも上昇している。コロナ渦前の価格と比較すると、綿製品の原料となる綿花は約2.4倍、ポリエステル糸も基準となるアジアの取引価格がこの半年で20〜30%増となっている。
縫製

日本の衣服の大半を生産しているのが、中国とタイやフィリピンなどのASEAN諸国だ。いずれの地域も経済成長に伴い、一般的に縫製工場の従業員の給料も年率5〜7%上昇している。当然それらは縫製工賃にも跳ね返る。縫製工賃の上昇は、中国及びASEAN諸国では当たり前の現象で、それを避けるためには新たな生産地を開拓する必要がある。
物流

コロナ禍が落ち着きを見せ始めた昨年の下期以降、アパレルに限らず、あらゆる産業の関係者を悩ましているのが、コンテナ輸送費の上昇だ。コロナ前の20年1月には20フィート積みで1380ドル(約18万円)だったコンテナ輸送費は、ピーク時の昨年末には9810ドル(約127万円)に、直近の3月でも7770ドル(約101万円)と高止まりを続けている。
為替

衣服生産のコストの中で、最も大きな影響を与えているのが円安だ。昨年来110〜115円で推移していた為替は、年明け以降に急上昇し、わずか2カ月で20%近く上昇している。為替は、海外生産が大半を占める衣料品生産のすべてに関係してくるため、円安が全コストを引き上げることになっている。
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