ファッション
連載 Makuakeが寄り添った応援されるブランドへの挑戦

Makuakeが寄り添った応援されるブランドへの挑戦 「VOL.5 キヨモトの事例」

有料会員限定記事

 「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケは、ブランドが持つべきパーパスの可視化や、その伝え方、ユーザーとのコミュニケーション作りなどでメーカーに寄り添い、モノづくり企業がモノづくりに集中できる環境整備に一役買っている。ブランドの伴走者、キュレーターが過去の事例を踏まえながら、応援されるブランドの共通点を探る。

3人の有志社員が立ち上げた、新D2Cブランドの舞台裏

 今回お話を伺ったのは、創業60年以上の歴史を誇る老舗かばんメーカーのキヨモトです。名だたるブランドのOEM・ODMの他、自社ブランドも手掛けています。今回キヨモトはD2Cブランド「アンインセイン」を立ち上げ、「マクアケ」でその第1弾の商品、長年培った技術や知見を結集させた「バックパック」のプロジェクトを実施いただきました。プロジェクトをリードした清本昌峰営業担当にお話を伺い、たった3人の有志社員から始まった、新ブランドの立ち上げとバックパックの開発秘話に迫ります。

 かばんの企画から開発、製造まで、多くの技術力を有するキヨモトですが、コロナ禍で全国的に消費が冷え込み、OEM・ODMメーカーも影響を受ける中、清本さんは「既存のビジネスモデルだけで生き残れるか?」という危機感を抱いていたと語ります。

 またコロナ禍で働き方やライフスタイルも変わる中、AN(否定)とINSANE(非常識)という単語をつないだ自社ブランドには、「これまでの時代・業界で非常識とされてきたことや固定観念にとらわれない」で、自分たちを自由に信じるという想いをこめました。今、自分たちが真にカッコいいと思えるものを、一から作り込んでみようと思い立ち「アンインセイン」を立ち上げたのです。

 「良いモノを作れる」という自信を持ちながらも、「どう売るか?」に課題を抱えてキヨモトには、中小企業の熱意をくみ取り、その挑戦を応援するユーザーが多いプラットフォームとして「マクアケ」を活用いただきました。

 プロジェクトは、清本さん含む営業マン2人とデザイナー1人という少数精鋭が、極秘で始めました。「具体的な商品のイメージがないままでは、ブランド立ち上げを社内で提案しても、承認を得られないのでは?」という懸念があったそうです。そこで商品詳細が固まるまでは、「極秘」に進めることになったのです。

 まずは自分たちの想いを形にすべく、商品サンプル作りから始めました。しかし、ベトナムの自社工場にサンプル作成を依頼するも、既存のOEM・ODM業のサンプル依頼が混み合う中、本生産は未定の新ブランドのサンプルは積極的に取りかかってはもらえず、調整は難航しました。「取りかかるのは最後で良いから」と粘り強く説得し、何とかこぎつけたそうです。出来上がったサンプルに対しても、工場に何度もかけ合い、微細なシワを取り除いたり細かいシルエットを生かしたりするための縫製など、納得いくまで作り込みました。従来は量産時に商品の仕様を改良・決定することが多い中、今回は、新ブランドの立ち上げがサンプルの出来にかかっていることもあり、通常の倍以上のサンプルを作り時間をかけました。完成したサンプルについては晴れて社内承認も降り、正式にバックパック作りが進むことになりました。

一から自由に設計できる 自社ブランドならではの苦悩

 今回のバックパックは、デザイン・機能・素材の全てにこだわり抜いています。デザインは、商談やデートなど、あらゆる服装とシーンになじむよう、単なるボックス型ではなく絶妙に絞りを入れてシンプルながら洗練されたフォームに仕上げました。機能面では、ビジネスマンが持ち歩く物を調査し「何をどこにしまい、どう取り出すか」の導線まで考え抜いています。PCやガジェットの収納、頻繁に使うスマホなどの取り出しに便利な「クイックアクセスポケット」、取り外して携帯できるサコッシュなど、便利な機能が詰まっています。素材に関してもタフ・軽量・耐水性・高級感の全てをかなえられるようこだわり、昨今のSDGsやコロナの時流も考慮し、リサイクル素材や抗菌加工の機能生地を使用しました。

 従来の、コストや資材などに条件があるOEM・ODMとは異なり、一から自由に設計できる自社ブランドだからこそ、キヨモトの技術を余すことなく凝縮できたわけですが、一方で全てが自由だからこそ、こだわりや機能を詰めすぎて「『一番の訴求ポイントは何か?』が分からなくなってしまった」と清本さんは話します。そこで営業マンとデザイナーはそれぞれが多様な視点を持ち寄り議論を重ねました。キュレーターにとっても、訴求ポイントの絞り込みは、最も注力した部分です。「マクアケ」のプロジェクトページでは、OEM・ODMでの実績・技術力という訴求を大切にしながらも、細かな機能についてはあえて情報を詰め込まずシンプルにしました。

買った人を後悔させないコミュニケーション

 プロジェクトページに入りきらなかった数多くの機能について、キヨモトは、「マクアケ」の「活動レポート」をうまく活用しています。活動レポートは、応援購入したユーザーに対し、プロジェクトの最新状況などをアナウンスする場です。商品の製造開始や途中経過を知らせる投稿が多かった中、キヨモトは「応援購入いただいた方を後悔させない」という信念で、随所に込めた機能をイラスト付きで丁寧に解説しています。満員電車の中でもスマホやパスケースが取り出しやすいよう斜めに取り付けたポケットなど、各機能の意味がしっかり伝わるコミュニケーションをされています。こうしてファンが徐々に増え、応援コメントも集まっています。OEM・ODM中心でユーザーの声を直接聞くことが少なかった清本さんにとって、応援コメントは、想いがユーザーに通じたことや、かばんメーカーとしての存在意義を実感できる「精神安定剤」になっているそうです。

 今後は、SNS活用や商品ラインアップの拡充、海外展開なども視野に入れて、「より多くの人に自分たちのモノづくりを届けたい」と、清本さんは語ります。確固たる技術力とチームワーク、丁寧なコミュニケーションを武器に、さらに応援されるブランドになっていくのです。


【成功の三カ条】
1 少数精鋭かつ多種多様な視点のメンバーでモノづくりしよう
2 相手に動いてもらえるまで、熱意を伝え続けよう
3 買った人を後悔させないコミュニケーションにこだわろう


関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2026-27年秋冬パリも「愛着」のムード TASAKIの新トップインタビュー、阪急うめだ本店の改装も【WWDBEAUTY付録:「第9回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト 2026」結果発表】

3月23日発売の「WWDJAPAN」は、2026-27年秋冬パリ・ファッション・ウイークの特集です。メンズやミラノに続き、パリも「愛着」のムード。TASAKIの新トップインタビュー、阪急うめだ本店の改装など、ニュースも盛りだくさんです。「WWDBEAUTY」は「第9回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト 2026」の結果発表です。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。