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大丸松坂屋とビームスがバーチャル空間で試みたことは? 2回目のイベント出展の成果を問う

 世界最大級のバーチャルイベント「バーチャルマーケット6」が8月14〜28日に開催された。クリエイターが自作の3Dアイテムを販売できるイベントだが、毎回さまざまな企業が出展し、さまざまな趣向を凝らして来場者を集めながら、バーチャル空間でできることを模索する。

 今回はJR東日本により、秋葉原駅構内を再現した「バーチャル秋葉原駅」が登場したほか、NTTドコモやヤマハ発動機など61社が出展した。前回初出展し、継続して参加した大丸松坂屋百貨店とビームスに「バーチャルマーケット6」での成果とビジネスの可能性を聞いた。

バーチャルカタログを模索する大丸松坂屋

 「前回初出展して仮想空間でも食品が売れるという実感が得られたし、周りからも興味を持たれた。バーチャルでも手に取ったり、細かな文字も読める。紙ではないカタログを試してみたいという気持ちが強まった」と大丸松坂屋百貨店ギフト企画担当の田中直毅さんは語る。

 前回同様、屋台に“明洞で食べた参鶏湯”(7020円)など10種のご馳走グルメを用意。加えて、今回はマスコットキャラクター「さくらパンダ」にバーチャルカタログを持たせた。「“飛び出す絵本”のようなカタログにしようと盛り上がった。載せるのは、華やかなスイーツがいいと考えた」。

 カタログをめくって商品の画像にタッチすると商品が飛び出て3Dアイテムとして手に取れるようになる。特に人気が高かったのはトップページに掲載した“フルーツカクテル杏仁”(5400円)と、“すいかパン”(4428円)。「“スイカパン”は検索からの流入もある人気商品で『ここで買える!』と喜んだ方もいたのでは。発送は国内に住む人のみへの対応だったが、購入に至らなくても楽しんでもらえたと思う」。

 前回は年末年始で受注が止めざるを得ない期間があったこともあり、今回は前回実績の4倍を売り上げることができたという。また、期間自体8日間短ったが、ブース入場者数は2万人以上増えたという結果が出た。「売上目標には若干至らなかったが、手応えは感じた」。

 試行錯誤は続きそうだ。「カタログを最後まで見てもらうための工夫が必要だと分かった。買ってもらえなくても楽しんでもらいたい。リアルの楽しさとバーチャルでできることを、頭を柔らかくして考えたら、もっと面白いことができそうだ」。次回の参加も検討中だ。

カルチャーとリアルタイム接客で存在感を放つビームス

 「バーチャルマーケット6」を主催するHIKKYとxR(空間拡張技術)領域で業務提携するビームスは今回、ビームス原宿を再現した空間の2階に銭湯を設けた。まさにバーチャルならではの試みだ。「今回はいかに店をユーザーが自由に使えるか、僕らが設定するのではなく、ユーザーたちが勝手に設定して、どんどん発信していくことができる場を作りたいと考えた」とビームスクリエイティブの木村淳プロデューサー。「海外に住む人の来場が多いのと、コロナ禍なので、バーチャルでできて、日本の魅力も発信できて、さらにコミュニケーションの場になるものって何だろうと考えた。日本にはお風呂で親子で会話したりする文化があるので、アバターでもそういう裸の付き合いをしてみたらどうかと、銭湯に決めた」。

 狙いは当たり、多くの人が空間を楽しみ、SNS投稿したという。「『ビームスの銭湯に集合!』というような呼びかけがあって、皆でお風呂に入って写真を撮ったり、実際の寿湯に行ってきたというような投稿があったり。想像もしていない反響があって、感激した」とビームス広報の木下香奈さん。無料配布したバスタオル姿のVケットちゃんも好評だったという。

 また、1階で「PUI PUI モルカー」のアバター(4500円)を販売したところ、非常に大きな手応えを得たという。「3Dアイテムの販売は2回目だが、モルカーのアバターで『バーチャルマーケット』を回りたいと思う人が多数いたようだ。来た方がどう楽しんで、それを着てワールド巡るのかということを踏まえることが大事だと学んだ」と木村プロデューサー。

 社内での輪も広げている。今回も時間を決めて、スタッフが店頭で接客した。アバターによるリアルタイム接客は「バーチャルマーケット」内でも珍しい光景だ。今回は英語を話せる店舗スタッフをメインに40人程度集めた。

 「海外からの参加者が多く、前回英語での接客がとても好評だったので、今回は英語対応できるスタッフを集めた。お客さまに喜んでもらえたのはもちろんだが、このコロナ禍で海外からの旅行がいなくて、スキルを生かす機会がなくなっていた彼らがここに来てみたら、皆キラキラし接客していた。デジタルでの新しい接客を体験してもらって、熱量が上がった。会社を巻き込んでやっていくことの意味をすごく実感した」と木村プロデューサー。木下さんも「銭湯や日本の文化を説明し慣れているビームスジャパンのショップスタッフも多めに稼働していたので、そこもよかったと思う」と語った。

国内の顧客に向けてスマホでの体験も

 今回はスマートフォンやPCのウェブブラウザ上で動くVRコンテンツ開発エンジン「Vケット クラウド」を利用して、より簡単にバーチャル体験ができるようにした。VRChat内の「バーチャルマーケット」は、アクセスまでが煩雑で、推奨されるPCもハイスペックと、参加のハードルが高い。一方、「Vケット クラウド」ではURLクリックでアクセスでき、マルチプレーが可能。音声コミュニケーションもできる。ここに「バーチャルマーケット」と同じ店舗空間を作った。スタッフ接客や打ち上げ花火のギミックなどはVR版のみだったが、商品の販売は行った。

 「社内でもやっとみんなが体験できたので、私たちがやっていることが伝わったし、URLを一つタップするだけなので、お客さまにも勧めやすく、実際に多くアクセスしてもらえた」と木下さん。

 「将来的にスマホ・ウェブブラウザ版でも接客ができるようにしたいし、そうなるとビームス顧客に向けた商品編集が必要になるだろう」と木村プロデューサー。スマホ・ウェブブラウザ版は既存の顧客に向けて、VR版は新規のファン作りを狙う。「VR版では体験込みで販売することを強化し、1階部分の商品の構成の正確さや、海外発送対応の商品などを増やしていきたい」。スマホ・ウェブブラウザ版はどこででもアクセスできるため、新しい働き方の可能性も模索する。

 「バーチャル領域は今後どんどん広がっていくと思うが、リアルの場所を持っていたり、リアルのスタッフを持っているところが他にはない、僕らの強みだ。リアルのためにきっかけをバーチャルで作っていくっていうところも、バーチャルのプロジェクトの一つだと思っている。やってる側に熱があることが一番重要だと思っているので、そこが少し大きくなったのは今回の良かった点だ。次回以降もどんどん巻き込んで輪を大きくしていきたい」と意気込む。12月4〜19日に行われる「バーチャルマーケット2021」で、どう進化するのか注目だ。

 動画:店舗脇から銭湯の煙突に登ると、大輪の花火を打ち上げることができる

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