サステナビリティ

スパイバー、上場へ本格始動 カーライルなどから340億円を調達

 人工タンパク質素材のスタートアップのスパイバーは8日、投資ファンドのカーライルや官民ファンドであるクールジャパン機構などからの増資と事業価値の証券化で新たに340億円の資金調達を行ったと発表した。カーライルは第三者割当増資で100億円を出資し、クールジャパン機構とともに取締役も派遣する。スパイバーの資金調達はこれまでベンチャーキャピタルや取引先が主力だったが、有力なプライベートエクイティ(PE)ファンドであるカーライルの参加で、本格的にIPOに向けて動き出す。カーライルの渡辺雄介マネージングディレクターは「アパレル産業への強力なインパクトと共に、中長期的にも大きな市場をターゲットにしており、大きな可能性を感じた。経営基盤の強化に加え、海外進出への支援を行う」という。

 資金調達の内訳は投資ファンドのカーライルのほか、フィディリティインターナショナル(Fidelity International)やベイリーギフォード(BAILLIE GIFFORD)などの海外の機関投資家による出資のほか、官民ファンドのクールジャパン機構の追加増資で240億円。将来の事業価値を担保にした事業価値証券化で100億円になる。新たな増資は1株4500円で行い、最新の株式評価額は1330億円になる。

 今回の資本提携に対し、スパイバーの関山和秀取締役兼代表執行役とカーライルの渡辺雄介マネージングディレクターにオンライン取材を行った。一問一答は以下の通り。

WWDJAPAN(以下、WWD):資金調達の狙いは?

関山和秀スパイバー取締役兼代表執行役(以下、関山):タイの原料プラントが年内にも立ち上がり、米国の原料プラントの準備も順調に進んでおり、グローバルな垂直立ち上げのための資金だ。カーライルから出資だけでなく取締役の派遣も受けるのは、2〜3年内にIPOを検討しており、経営基盤の強化のためだ。

WWD:有価証券報告書によるとスパイバーは、この5年間、売上高はわずか2億円で、対して損益はずっと赤字。この5年累積赤字は160億円超に達する。PEファンドであるカーライルが出資を決めた理由は?

渡辺雄介カーライル マネージングディレクター(以下、渡辺):ブリュード・プロテイン(Brewed Protein)」の商業化の進捗から、所有する技術、それらに付随する特許、さらには将来の市場規模まで、スパイバーの企業価値については徹底的に分析した。現在の生産技術やタイの原料プラントの進捗、米国プラントの規模、水面下で進んでいる世界規模でのブランドやアパレル企業との共同開発の状況などから見て、数年内の収益化はかなり有望だと分析している。かつ、人工タンパク質素材という革新的な素材の持つTAM(Total Addressable Market=将来獲得可能な市場規模)に関しても、繊維にかかわらず、プラスチックなどへの応用範囲も広く、しかもそこでのシェアを取れる可能性も高く、かなり大きい。日本でははじめての非バイアウト型のマイノリティグロース(少数株式取得による成長支援)投資ということもあって、投資委員会でどう説明しようか迷ったものの、第一声は“素晴らしい!”と、かなりの高評価だった。

WWD:どう支援していく?

渡辺:まずはグローバルな事業展開に向けた支援だ。グローバルな投資ファンドであるカーライルはご存知の通り、シュプリーム(2020年にイグジット)やモンクレール(14年にイグジット)など、有力なグローバルブランド支援の実績があり、現在もゴールデングース(GOLDEN GOOSE)などの支援も行っている。出資先にとどまらず、幅広くさまざまなブランドとのコラボレーションなど、やれることは多いと感じている。IPOだけでなく、これまで培ってきた当社のグローバル展開とサステナビリティの知見を最大限に提供したい。

WWD:人工タンパク質素材に関しては、同業の米国のボルトスレッズ(BOLT THREADS)を筆頭に開発競争が激しくなっている。今後の展望は?

関山:スパイバーは人工合成タンパク質素材の分野では、タイと米国での原料プラントの着工や準備から、紡糸、ユーザーとの商品化に向けた共同開発といった商業生産から、研究開発から生産にまたがる圧倒的で多彩な特許網、さらには世界での標準化規格まで、あらゆる分野で世界でも他を圧倒している。タンパク質合成の分野では、先日SPAC(特別買収目的会社)上場を発表した、米ボストン発のギンコ・バイオワークス(GINKO BIOWORKS)のような強力なスタートアップが台頭しており、ユニコーン企業以上のレベルで競争は激化している。ただ、スパイバーの最大の強みは、タンパク質合成から、発酵による原料の生産、紡糸まで、合成生物学や遺伝子工学、高分子学など幅広い分野にまたがるコア技術を内製化し、超高速回転させて発展させられること。ラボレベルから量産に踏み出すときには大手素材メーカーとの協業や共同開発なども必要になってくるが、有力な技術や特許をどちらが持つかで事業の進捗が停滞したり、止まってしまうことも多い。その意味でも内製化している当社はかなりのアドバンテージがある。事業の垂直立ち上げのため、今後まだまだ大きな資金が必要になるが、カーライルとの提携で、2〜3年内の上場に向けての動きも整った。今後はさらに経営のスピードを上げていく。

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